杉浦佳子
(野口佳子 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/01 21:15 UTC 版)
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「パリ2024オリンピック・パラリンピック TEAM JAPAN応援感謝イベント」での杉浦佳子(2024年11月30日撮影)
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基本情報 | ||||||||||||||||||
生年月日 | 1970年12月26日(54歳) | |||||||||||||||||
国籍 | ![]() |
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選手情報 | ||||||||||||||||||
所属 | 楽天ソシオビジネス・VC福岡 | |||||||||||||||||
分野 | ロードレース パラサイクリング |
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役割 | 選手 | |||||||||||||||||
プロ経歴 | ||||||||||||||||||
2018 | VC福岡[1] | |||||||||||||||||
主要レース勝利 | ||||||||||||||||||
世界選手権・ITT 2017-2018 世界選手権・個人ロード 2017-2018 |
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最終更新日 2024年9月7日 |
杉浦 佳子(すぎうら けいこ、1970年12月26日 - )は、静岡県出身の女子自転車ロードレースおよびパラサイクリング C2→C3(高次脳機能障害など)・トライアスロン選手である。総合メディカル株式会社に所属。野口 佳子(のぐち けいこ)の名前で活動していた時期もあるが、2019年頃から現在の名前で活動している[2]。
2021年開催の東京パラリンピック 自転車競技 金メダリスト。
息子はプロロードレーサーの野口悠真[3]。
来歴
生い立ち
1970年12月26日生まれ[4]、静岡県小笠郡城東村出身[† 1]。合併により城東村が大東町となって以降も、そのまま大東町にて育つ[† 2]。町内の大東町立中小学校を経て[4][5][6][† 3]、大東町立城東中学校を卒業した[4][6][7][† 4]。静岡県立掛川西高等学校を経て[4][7][8]、東北薬科大学に進学した[8][† 5]。しかし、在学中に妊娠し[8]、出産することになったため[8]、東北薬科大学を中途退学した[8]。以降は夫とともに東京都で暮らすことになる[8]。夫は高校時代の同級生だったが[8]、当時はまだ大学生であったため[8]、乳児を抱え生活は貧窮した[8]。子供を育てながら再び受験勉強に励み[8]、北里大学薬学部へ進学した[7][8]。
薬剤師として
大学卒業後は、薬剤師・スポーツファーマシスト[9]として働きながら、趣味でトライアスロンやロードレースに参加[10]。
2016年4月、静岡県で行われたロードレース大会のレース中に落車し、脳挫傷、外傷性くも膜下出血、頭蓋骨・鎖骨・肋骨・肩甲骨を粉砕骨折、三半規管損傷を負う。医師からは治らないと言われた容態は乗り切ったものの、高次脳機能障害が残る[11][10]。リハビリ中に知人からパラサイクリングを勧められ、2017年3月に実業団レース 宇都宮クリテリウム&ロードレースにて復帰[12]。
パラサイクリング選手として
その後パラサイクリング選手として登録。初年度の2017UCIパラサイクリング・ロード世界選手権のタイムトライアルで優勝し、注目を浴びる[13][10]。2018年8月のUCIパラサイクリング・ロード世界選手権2018のロードレース女子C2クラスでも優勝した[14]。
2018年UCIパラサイクリングロード世界選手権のロードレース優勝をはじめとする、今シーズンの活躍によりUCI(国際自転車競技連合)による年間表彰「パラサイクリング賞」の受賞者の1人に選ばれた[15]。なお当該の賞は日本人として初の受賞である[16]。
2018年内に離婚を経験し[17]、2019年頃からは野口姓から杉浦姓を使用している。
2021年開催の東京パラリンピックの日本代表に選出され、パラリンピック初出場。8月25日、伊豆ベロドロームで行われた女子個人パシュートC1-3では日本記録を更新する4分2秒834のタイムを記録するも予選敗退[18]。同月27日の女子500mタイムトライアルC1-3でも日本記録を更新し、39秒869のタイムで4位入賞を果たした[19]。同月31日、富士スピードウェイで行われた女子個人ロードタイムトライアルC1-3では、ロードを得意とする杉浦の実力を存分に発揮。2位のアンナ・ベク(スウェーデン)に22秒27の大差をつける25分55秒76のタイムでゴールし、今大会の日本女子選手第1号となる金メダルを獲得した。50歳でのパラリンピック金メダル獲得は、日本人選手過去最高齢である[20]。また、9月3日の女子個人ロードレースでも1時間12分55秒のタイムで金メダルを獲得し、日本自転車史上初となる同一大会2冠を達成した[21][22]。
2024年開催のパリパラリンピックの日本代表にも選出された。日程前半は持病の喘息の発作もあり、目だった成績をあげられなかったが、自転車競技最終日の9月7日に開催された女子個人ロードレース(56.8km)で、1時間38分48秒で優勝。パラリンピック2連覇を達成した[23]。また、53歳でのパラリンピック金メダルは、自身の持つ最年長記録を更新した[24]。
人物

- 右半身の麻痺のうち、右手はかなり回復しており、動作がやや遅いものの箸󠄀や筆記具を扱うことができるようになっている。ただ、握力の関係で自転車のブレーキのかかりが悪いため、競技用の自転車では左右のブレーキを入れ替えている。パラサイクリング選手としてのクラスも、当初はC2だったところから、2021年時点ではより軽いC3になっている[25]。
- ロードレースでの事故の記憶は全くない。病院に入院していた時も自覚がなく、体に繋がっていた管を全部抜いて、トライアスロン大会に行こうとICUから抜け出してから倒れてしまったことがあったという[25]。
- 東京パラリンピックで金メダルを獲得したロードレースの競技後のインタビューで、具体的な年齢について触れられた際、「あっ、また50歳って言いましたね。でも、最年少記録は二度と作れないけど、最年長記録はまた作れますよね……やばい、また調子に乗ってすごいことを言っちゃった」と発言し、話題を呼んだ[20]。
- 東京パラリンピック 自転車競技 女子個人ロード タイムトライアル・ロードレースC1-3において金メダルを獲得した功績をたたえ、2022年2月10日、静岡県掛川市の中村郵便局前に記念のゴールドポスト(第69号)が設置された(ゴールドポストプロジェクト[26])。
主な戦歴
2017年
- 2017UCIパラサイクリング・ロード・ワールドカップ大会第2戦
- 2017UCIパラサイクリング・ロード世界選手権(南アフリカ・ピータープリッツバーグ)
2018年
- 第7回パラサイクリング・アジア・トラック選手権大会
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- 2月17日 WC3 500m Time Trial 1位、WC3 個人パシュート 1位[29]
- 2018パラサイクリング・トラック世界選手権大会
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- 3月23日 WC2 500m Time Trial 4位[30]
- 2018UCIパラサイクリング・ロード・ワールドカップ(オステンド)
- 2018UCIパラサイクリング・ロード・ワールドカップ(エメン)
- UCIパラサイクリング・ロード世界選手権
- 2018UCIパラサイクリング・ロード・ワールドカップ(べ・コモ)
- Indonesia 2018 Asian Para Games (INAPG 2018)
2019年
- UCIパラサイクリング・トラック世界選手権大会
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- 3月14日 WC3 3km IP 9位、
- 3月15日 WC3 500m Time Trial 2位
- 3月17日 M/WC1-5 750m team SP 15位
- 2019UCIパラサイクリング・ロード・ワールドカップ(オステンド)
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- 5月17日 WC3 500m Time Trial 5位
- 5月19日 WC3 Road Race DNF
- 2019UCIパラサイクリング・ロード・ワールドカップ(べ・コモ)
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- 8月9日 WC3 Time Trial 1位
- 8月11日 WC3 Road Race 2位
- UCIパラサイクリング・ロード世界選手権
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- 9月12日 WC3 Time Trial 2位、distance 20.8km
- 9月14日 WC3 Road Race 2位、distance 51.8km
- 全日本自転車競技選手権大会-パラサイクリング・トラック/オムニアム(JKA250)
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- 9月28日 500mタイムトライアル(WC3) 1位、41秒650(日本新)
- 9月28日 3km個人パーシュート(WC3) 1位、4分08秒696(日本新)
栄典
脚注
註釈
出典
- ^ “杉浦 佳子”. VC FUKUOKA. 2021年10月25日閲覧。
- ^ “対談:パラ自転車で感じる風 自民党前総裁 谷垣禎一さん×パラ自転車・ロード世界選手権覇者 杉浦佳子さん”. 毎日新聞. (2019年3月12日) 2019年5月12日閲覧。
- ^ “第3回パフォーマンスがあがるハイブリッドソーラーハウス体験&パフォーマンス向上講演会”. 高田工務店 (2017年2月9日). 2021年9月1日閲覧。
- ^ a b c d “杉浦佳子選手(パラ自転車競技) - 掛川市”. 掛川市役所 (2022年10月23日). 2025年2月26日閲覧。
- ^ 中野吉洋 (2021年7月25日). “掛川出身のパラ選手へ 母校の児童が応援カード” (日本語). 中日新聞しずおかWeb (中日新聞社) 2025年3月2日閲覧。
- ^ a b 中野吉洋 (2021年12月18日). “パラ自転車2冠の杉浦選手に掛川市民栄誉賞 母校の中学で後輩激励” (日本語). 中日新聞しずおかWeb (中日新聞社) 2025年3月2日閲覧。
- ^ a b c “パラサイクリング野口佳子 20年東京で目指すは金 - パラスポーツ”. 日刊スポーツ (日刊スポーツ新聞社). (2018年9月5日) 2018年9月9日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k 『女性自身』編集部 (2024年10月27日). “パラリンピック日本人最年長金メダリスト杉浦佳子さん 自転車事故による認知障害で記憶失っても「残っていた感情」” (日本語). 女性自身 (光文社) 2025年3月2日閲覧。
- ^ “バイシクルニュース:アスリートのための栄養セミナー開催!講師はアルカンシェル野口佳子」”. BiCYCLE CLUB (2018年6月11日). 2018年9月9日閲覧。
- ^ a b c “パラ自転車野口佳子さん 世界選手権で「金」 事故で脳障害 奇跡の復帰|多摩”. タウンニュース (タウンニュース社). (2017年10月19日) 2018年9月9日閲覧。
- ^ “自転車にアラフィフの星 転倒で大けが、パラに転向|オリパラ”. NIKKEI STYLE (日経新聞). (2018年1月13日) 2018年9月9日閲覧。
- ^ “二つの熱戦とともにロードレースシーズンが開幕!「宇都宮クリテリウム」・「宇都宮ロードレース」レポート サイクルスポーツの特集記事(トピックス)”. サイクルスポーツ.jp (2017年3月22日). 2018年9月9日閲覧。
- ^ “2017パラサイクリング世界選ロードTTで野口佳子が優勝! サイクルスポーツのニュース”. サイクルスポーツ.jp (2017年9月5日). 2018年9月9日閲覧。
- ^ “野口佳子が2年連続の世界選手権優勝/UCIパラサイクリング・ロード世界選手権2018”. トラック競技/ロードレース/競輪ニュース-More CADENCE. (2018年8月7日) 2018年9月9日閲覧。
- ^ “パラサイクリング野口佳子選手 2018 UCI年間表彰選出”. 日本自転車競技連盟 WEB SITE (2018年10月16日). 2018年11月3日閲覧。
- ^ “パラ自転車年間表彰、日本人初 野口佳子選手(掛川出身)”. 静岡新聞アットエス (静岡新聞). (2018年11月26日) 2019年5月12日閲覧。
- ^ 常広文太 (2019年8月29日). “48歳杉浦、初舞台へギア パラ自転車世界王”. 日本経済新聞 2021年9月1日閲覧。
- ^ “パラリンピック自転車 杉浦佳子は日本新も予選敗退 パシュート”. NHKニュース. (2021年8月25日) 2021年9月1日閲覧。
- ^ “杉浦佳子 日本記録更新で4位 | 女子500mタイムトライアルC1-3(運動機能)決勝 | 東京パラリンピック”. NHK (2021年8月27日). 2021年9月1日閲覧。
- ^ a b “大怪我から5年…パラアスリートして蘇り50歳の最年長金メダリストとなった女性サイクリスト杉浦佳子を勇気づけた言葉とは?”. THE PAGE. (2021年9月1日) 2021年9月1日閲覧。
- ^ “50歳・杉浦佳子が2冠、日本最年長金メダリスト パラ自転車女子”. 朝日新聞DIGITAL (2021年9月3日). 2021年9月3日閲覧。
- ^ “パラ自転車2冠 杉浦佳子「昨日より今日の自分」50歳で偉業達成”. 毎日新聞 (2021年9月3日). 2021年9月3日閲覧。
- ^ “パリ2024パラリンピック競技大会ロード種目リザルト”. 一般社団法人日本パラサイクリング連盟 (2024年9月5日). 2024年9月5日閲覧。
- ^ “自転車ロード53歳杉浦佳子が2連覇、自身の最年長「金」記録更新 パリ・パラリンピック”. 産経新聞 (2024年9月7日). 2024年9月7日閲覧。
- ^ a b 杉浦佳子(インタビュアー:香取慎吾)「新しい地図・香取慎吾×パラサイクリング 遅咲き50歳エースの“前向きすぎる”生き方に香取もビックリ「寿退社で去るのカッコいいかなって」」『パラサポWEB』、2021年6月28日 。2021年9月1日閲覧。
- ^ “ゴールドポストプロジェクト”. 首相官邸 オリンピック・パラリンピックレガシー推進室. 2022年6月6日閲覧。
- ^ a b “2017UCIパラサイクリング・ロード・ワールドカップ大会第2戦”. JPCF|日本パラサイクリング連盟 (2017年5月26日). 2018年9月9日閲覧。
- ^ a b “ロード世界選手権、野口佳子選手がタイムトライアルで金メダル、ロードレースで銅メダル獲得しました!”. JPCF|日本パラサイクリング連盟 (2017年9月5日). 2018年9月9日閲覧。
- ^ “7TH PARA ASIAN TRACK CHAMPIONSHIPS(第7回パラサイクリング・アジア・トラック選手権大会)”. JPCF|日本パラサイクリング連盟 (2018年3月7日). 2018年9月9日閲覧。
- ^ “2018 PARA-CYCLING TRACK WORLD CHAMPIONSHIPS(2018パラサイクリング・トラック世界選手権大会)”. JPCF|日本パラサイクリング連盟 (2018年3月31日). 2018年9月9日閲覧。
- ^ a b “2018UCIパラサイクリング・ロード・ワールドカップ(オステンド)”. JPCF|日本パラサイクリング連盟 (2018年5月10日). 2018年9月9日閲覧。
- ^ a b “2018UCIパラサイクリング・ロード・ワールドカップ(エメン)”. JPCF|日本パラサイクリング連盟 (2018年7月18日). 2018年9月9日閲覧。
- ^ a b “UCIパラサイクリング・ロード世界選手権”. JPCF|日本パラサイクリング連盟 (2018年8月13日). 2018年9月9日閲覧。
- ^ a b “2018UCIパラサイクリング・ロード・ワールドカップ(べ・コモ)”. JPCF|日本パラサイクリング連盟 (2018年8月24日). 2018年9月9日閲覧。
- ^ a b “インドネシア2018アジアパラ競技大会(インドネシア・ジャカルタ)”. JPCF|日本パラサイクリング連盟 (2018年10月16日). 2018年11月2日閲覧。
- ^ 『官報』第250号、令和3年11月4日
- ^ “令和3年秋の褒章受章者(東京都)” (PDF). 内閣府. p. 6 (2021年11月3日). 2024年7月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年11月9日閲覧。
- ^ “令和6年秋の褒章受章者(東京都)” (PDF). 内閣府. p. 3 (2024年11月3日). 2024年11月9日閲覧。
外部リンク
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