菱文様
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/21 16:09 UTC 版)
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菱文様(ひしもんよう)は、日本の伝統的な幾何学文様のひとつで、菱形を基本とした連続模様である。水草のヒシの葉の形に由来し、正倉院宝物など古代の染織にも見られる。単純な菱形の反復だけでなく、花をあしらった花菱、角を切り落とした隅切り菱、繁栄や吉祥を表す幸菱など、多様な亜形が発展したのも特徴である。平安時代以降、装束や調度、能装束や着物の意匠に広く用いられ、現代でも家紋や工芸品に受け継がれている。
バリエーション
菱文様には多くの亜形が存在し、それぞれに異なる意味や用途がある。代表的なものを以下に挙げる。

- 入菱(いりびし) - 大きな菱の内部に小さな菱を重ねた文様。単純な反復から多重構成まで幅広い形がある。
- 花菱(はなびし) - 菱形の四隅に花弁状の装飾を施した文様。平安時代の装束や染織に多く見られ、華やかな印象を与える。
- 幸菱(さいわいびし、さちびし) - 四つの菱を斜めに組み合わせ、十字形を成した文様。吉祥を意味し、祝い事の意匠にも用いられる。
- 隅切り菱(すみきりびし) - 菱形の角を切り落とした形。切り口に別の図案を配する場合もある。
- 立涌菱(たてわくびし) - 立涌文様の曲線に沿って菱形を並べた文様。流動感があり、能装束や小紋に見られる。
- 松皮菱(まつかわびし) - 上下に小さな菱を重ねた菱文様。松の樹皮を重ねたように見えることから名付けられ、堅牢さや長寿を象徴するとされる。古くから装束や工芸品に広く用いられる。
歴史

菱文様の起源は、古代の装飾に用いられた襷文(たすきもん)にさかのぼるとされる。襷文は、襷を掛けた姿に似ることから名付けられた斜格子状の文様であり、斜めに交差する線が連続して菱形を形成する構造を持つ。この幾何学的な意匠が独立して強調されることで、やがて菱文様として確立した。
正倉院宝物に見られる織物や染織品にはすでに菱形の連続文様が確認でき、奈良時代から平安時代にかけて宮廷の装束や調度に用いられた記録もある。以降、菱文様は花菱や入菱など多様な変化を遂げ、武家社会や町人文化においても着物や工芸品に広く取り入れられていった。
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