福音書を執筆する聖マタイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/29 23:29 UTC 版)
イタリア語: San Matteo che scrive il suo Vangelo 英語: Saint Matthew Writing His Gospel | |
作者 | カルロ・ドルチ |
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製作年 | 1670年ごろ |
種類 | キャンバスに油彩 |
寸法 | 133.7 cm × 113.7 cm (52.6 in × 44.8 in) |
所蔵 | J・ポール・ゲティ美術館、ロサンゼルス |
『福音書を執筆する聖マタイ』(ふくいんしょをしっぴつするせいマタイ、伊: San Matteo che scrive il suo Vangelo、英: Saint Matthew Writing His Gospel)は、17世紀イタリア・バロック期の画家カルロ・ドルチが1670年ごろにキャンバス上に油彩で制作した絵画である。聖マタイを主題としており、本来、聖マルコ、聖ヨハネ、聖ルカとともに4人の福音書記者を描いた連作の一部をなしていた[1]。作品は1969年以来、ロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館に所蔵されている[1]。
作品
ドルチは生地フィレンツェでその生涯のほとんどを過ごしたが、その作品は17世紀ヨーロッパ各地で名声を得た[2]。彼は子供のころから敬虔なキリスト教徒であり、生涯聖ベネディクトゥス信者会に属し[3][4]、その信仰心が彼の芸術の原動力となっていた[2]。ドルチの友人で伝記作者のフィリッポ・バルディヌッチは、絵を見る者が自分と同様に敬虔な信仰心を抱くよう、宗教的な主題しか描かないことをドルチが誓ったと伝えている[2]。
ドルチの洗練され、輝くような作品は17世紀の芸術庇護者たち、とりわけ彼の故郷フィレンツェの芸術庇護者たちに好まれた[1]。画家が4人の福音書記者を描いた連作は、彼の聴罪司祭の1人のおそらくドメニコ・カルパンティ (Domenico Carpanti) のために描かれ、売却された。同時期の記録によると、1点につきわずか100スクーディで、画家の原材料費を賄うのがやっとの価格であった。そのような行為は、敬虔なドルチの聴罪司祭への敬愛を反映している[1]。
ドルチは1650年ごろから大型の作品に加え、半身像の聖人像を描くようになった[3]。本作の主題である聖マタイは徴税の仕事をしていたが、イエス・キリストに選ばれて使徒となった。「マタイによる福音書」はイエスに関する記述の詳しさから、彼を実際に知ることのできたマタイ本人が執筆したと考えられる。マタイが福音書を執筆する場面が描かれる時は、天使が付き添う[5]。画中の聖マタイは、彼の福音書の冒頭の言葉を記しているが、それは彼の母語であるヘブライ語で正確に再現されている。ドルチに典型的な細密な筆致で、聖人の羽毛のような髭の質感、重い衣服の柔らかさ、そして爪の中の汚れまでもが克明に表現されている[1]。
脚注
- ^ a b c d e “Saint Matthew Writing His Gospel”. J・ポール・ゲティ美術館公式サイト (英語). 2025年3月8日閲覧。
- ^ a b c 『大エルミタージュ美術館展 オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち』、2017年、190-191頁。
- ^ a b 『国立西洋美術館名作選』、2016年、64頁
- ^ “悲しみの聖母”. 国立西洋美術館公式サイト (日本語). 2025年3月8日閲覧。
- ^ 「聖書」と「神話」の象徴図鑑 2011年、146頁。
参考文献
- 『大エルミタージュ美術館展 オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち』、エルミタージュ美術館、日本テレビ放送網、読売新聞社、BS日テレ、森アーツセンター、2017年刊行
- 国立西洋美術館名作選、国立西洋美術館、2016年刊行 ISBN 978-4-907442-13-2
- 岡田温司監修『「聖書」と「神話」の象徴図鑑』、ナツメ社、2011年刊行 ISBN 978-4-8163-5133-4
外部リンク
- 福音書を執筆する聖マタイのページへのリンク