時間遅れの考慮
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 14:31 UTC 版)
「ロジスティック方程式」の記事における「時間遅れの考慮」の解説
ロジスティック方程式では、ある時刻の個体数 N(t) が同時刻の個体数増加率 dN(t)/dt に瞬間的に影響を与えるというモデルになっている。しかし、妊娠期間や性成熟までの期間などが存在するため瞬間的に影響が出るというのは非現実的でもある。よって、モデルの中に影響の時間遅れを含ませることが考えられる。遅延時間を T とすると、ロジスティック方程式に時間遅れの効果を取り込んだモデルとして d N ( t ) d t = r N ( t ) ( 1 − N ( t − T ) K ) {\displaystyle {\frac {dN(t)}{dt}}=rN(t)\left(1-{\frac {N(t-T)}{K}}\right)} がよく用いられる。この式はジョージ・イヴリン・ハッチンソンが発案したためHutchinson方程式とも呼ばれる。このモデルでは、ロジスティック方程式におけるブレーキ効果の部分に、現時点での個体数 N(t) ではなく、時間 T だけ前の時点での個体数 N(t − T) が入力されている。 時間遅れを持つロジスティック方程式でも N = 0 または N = K が平衡状態であることに変わりはない。しかし個体数が環境収容力 K に達しても、T 時間前における個体数は K よりも小さいか大きいので、増加率は0とならない。そのため、個体数は環境収容力を通り過ぎてしまう。環境収容力を上回った(下回った)個体数が継続すると、増加率は個体数を環境収容力に収束させる方向に働く。しかし、それによって個体数が環境収容力に戻っても、再度同じ現象が起き、また環境収容力を通り過ぎる。このように平衡状態を行き過ぎたり戻り過ぎたりしながら個体数が振動する現象が、このモデルでは起こり得る。より詳細にいえば、解の振る舞いは rT の値によって変化する。rT が π/2 を超えるとホップ分岐を起こし、解は平衡状態を回るリミットサイクルとなる。周期変動を実際に起こすヒツジキンバエ(英語版)の実験データに対して、ロバート・メイがこの式の当てはめを行って良好な結果を得ている。
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