断熱的到達可能性とは? わかりやすく解説

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断熱的到達可能性

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/05 01:09 UTC 版)

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断熱的到達可能性(Adiabatic accessibility)とは、熱力学における概念の一つ。「断熱・断物の壁で囲まれた系の任意の2つの平衡状態 X, Y について、X から Y への状態変化が力学的仕事だけで起こせること」を指す。

エリオット・リーブ(英語: Elliott H. Liebヤコブ・イングヴァソン(英語: Jakob Yngvasonはこの概念を用い、次のような要請(数学における公理に相当する)を熱力学の出発点のひとつにおいた。

「断熱・断物の壁で囲まれた系の任意の2つの平衡状態 X, Y について、X から Y への状態変化が力学的仕事だけで起こせるか否かが定まっている。」

つまり「状態たちの間に一本の序列が付けられる」ということである。もちろんこれだけでは熱力学の要請としては足りないので、他にも幾つかの要請をおく。そうすると、任意の状態について、その大小がこの序列の順番を決めるような、ある相加的な量が(定数倍などのつまらない不定性を除いて実質的に)一意的に定義できることが示せる。それがエントロピーになる。[1]

定義

平衡状態 Y が別の平衡状態 X から断熱的到達可能であることを、と書く。の定義として以下の要請がなされる:

反射則
どのような X についても
推移則
かつならば
状態の複合との一貫性
かつならば
スケール不変性
ならば
分裂と再結合
について であり である
安定性
もしいくらでも小さいについてならば

反射則と推移則から、前順序であることに注意する。この要請の中には、「」や「可逆機関」などの概念が含まれていない。さらに温度の概念さえ必要ない。しかしエントロピーを定義するにはまだ足りず、以下の比較仮説が必要である。 [2]

比較仮説

2つの状態 X, Y について、の少なくともどちらか一方は成り立つ。これを比較仮説という。[3]

この比較仮説は、を満たすの一覧表が十分に長いことを保証してくれる。逆にこの比較仮説がないと、エントロピー関数によって記述されない状態の一覧表も出てくる。[2]

エントロピーの構成

の時かつその時に限り、エントロピーは という性質を持つ。またの時かつその時に限り、という性質を持つ。これは熱力学第二法則に対応している。

を満たす2つの状態を選び、それぞれのエントロピーを0と1とした場合、をみたす状態X のエントロピーは次のように定義される。 [4]

参考文献

  1. ^ 清水明『熱力学の基礎』東大出版会、2007年。ISBN 978-4-13-062609-5
  2. ^ a b エリオット・リーブ, ヤコブ・イングヴァソン:「エントロピー再考」,田崎晴明訳,「パリティ」,丸善, Vol.16, No.08, pp.4-12, (2001)
  3. ^ 佐々真一「熱力学の論理と動的システム」物性研究 (2002), 78(6): 672-676
  4. ^ Lieb, Elliott H.; Yngvason, Jakob (2003). “The Mathematical Structure of the Second Law of Thermodynamics”. arXiv. doi:10.1016/S0370-1573(98)00082-9. http://arxiv.org/abs/math-ph/0204007 2012年11月7日閲覧。. 



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