成功したオタク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/11 23:40 UTC 版)
成功したオタク | |
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성덕 | |
監督 | オ・セヨン |
製作 | オ・セヨン |
音楽 | チョン・ギョンイン |
撮影 | オ・セヨン |
編集 | オ・セヨン |
製作会社 | ハラン社 |
配給 | AUD |
公開 | |
上映時間 | 85分 |
製作国 | ![]() |
言語 | 韓国語 |
成功したオタク | |
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各種表記 | |
ハングル: | 성덕 |
発音: | ソンドク |
日本語読み: | せいこうしたおたく |
英題: | Fanatic |
『成功したオタク』(せいこうしたオタク、原題:성덕、英題:Fanatic)は、2021年公開の韓国のドキュメンタリー映画。韓国芸術総合学校に通う大学生のオ・セヨンは「推し」のチョン・ジュニョンに認知され、テレビ共演までした "成功したオタク" だった。ところが2019年にチョンは性加害事件で逮捕され、集団性暴行罪で有罪判決を受ける[6]。「推しがある日突然犯罪者になる」という経験をした友人たちを、オ・セヨンはインタビューして回り、対話の記録をユーモラスにまとめ上げた[7][8][9]。
概要
釜山広域市出身のオ・セヨンは中学生のときに男性歌手のチョン・ジュニョンを知った。韓服を着てソウルまで会いに行き、好きなチョンに名前を覚えてもらい、テレビ共演までした。ファンの間で "成功したオタク" として知られる存在となり、高校卒業後の2018年には韓国芸術総合学校映像院映画科に入学した[7][8]。
ところが大学2年の2019年3月11日、チョンがV.Iの参加するカカオトークのグループチャットに複数の女性との性行為を盗撮した動画を流していたことが報道により明らかとなった[10]。チョンは同月13日に所属事務所を通じて芸能界引退を宣言し[11]、同月21日に逮捕された[12][13]。さらに被害者の証言などにより、2016年1月に江原道洪川郡で、同年3月に大邱広域市でそれぞれ泥酔した女性を集団で強姦していたことが明らかとなった[6][14][15]。
「推し活」が人生のすべてだったオ・セヨンは受け入れがたい現実に苦悩しつつ、同様の経験をした友人たちのことを思い始めた。同年7月から彼女たちを訪ねて回り、インタビューを撮り続けた[9]。オが会った者の中には、チョンの性行為盗撮に対する告訴を2016年9月にスクープしたスポーツソウルの女性記者のパク・ヒョシル[16]もいた。報道後検察が早々と嫌疑なしの処分を下したため[17]、パク記者はファンを含むネチズンたちによって激しい批難にさらされた[18][16]。オはパクと差し向かいに座り(カメラはパクの後方から撮っているためパクの顔は写っていない)、謝罪した[18]。そして2016年当時に綴った「愛の日記」を読み上げると、パクは思わず声を出して笑った[注 1]。オがパクに「ファンのなかにも『悪いのは彼の友だちだ』『彼は他人の罪を着せられた』と言ってかばう人たちがいます。どう思いますか?」と尋ねると、パクは「朴槿恵元大統領の支持者と同じですよ」と答えた。
オは、朴槿恵の無罪を信じ釈放を求める支持者たちの集会に潜入。朴正煕元大統領、妻の陸英修、子の朴槿恵の3人の写真が並んだ垂れ幕や、大量の太極旗にまじってはためくアメリカ合衆国の国旗などをカメラに収めた。会場では乞われるままに、朴槿恵宛ての葉書を書いた。その後、朴正煕の出身地である慶尚北道亀尾市に行き、記帳に書かれた「閣下!尊敬しています。愛しています」などの言葉と、朴の巨大な銅像[19]を撮影した。
韓国映画振興委員会からの資金援助を受けて[20]、撮影は2021年8月まで行われた。完成した映画は同年10月、第26回釜山国際映画祭のワイドアングルドキュメンタリー競争部門に招待された[18]。11月14日には光州女性映画祭で上映された[2]。
日本語の「オタク」は意味も発音もほぼそのまま韓国に輸入され、「오덕후(オドック)」として定着した。やがて語頭の「オ」が省略され、「덕후(トック)」と呼ばれるようになった[21]。それぞれの「推し」の分野で成功を収めた人は「성공한 덕후(ソンゴンハン ドック)」となり、それも省略されて「성덕(ソンドク)」となった。オは自嘲を込めてこの言葉を作品のタイトルにした[22]。
2022年9月28日、韓国で一般公開された[4]。同年11月、オは日記とインタビュー、公開後の反響やエッセイをまとめた『成功したオタク日記』を刊行した[7]。同年12月、第58回大鐘賞のドキュメンタリー賞にノミネートされた。
2024年3月30日、日本で一般公開された[5]。同年7月11日、『成功したオタク日記』は日本のすばる舎から翻訳出版された。10月1日、U-NEXTで先行独占配信された[23]。
脚注
注釈
- ^ オ・セヨンは当時自分が書いた日記を読み進む中で、ほかとトーンが違う文章を見つけた。2016年のスポーツソウル紙の記事とそれに続く嫌疑なしの処分に関する文書だった。オはパクの前で読み上げる。「たった30分で不起訴となるならなぜ記事になったのか? 学生はいい成績を取りたいし、映画監督なら素晴らしいシーンを撮りたい。記者なら注目を浴びたいと思うだろう。でもその欲求が時に誰かを・・・」。パクは笑いながら「傷つける?」と問いかけ、オは「苦しめ悲しませることを気づくべきだ」と続きを読んだ。そして「パク・ヒョシル記者。その名前を忘れない」にさしかかるとパクはさらに大きく笑った。
出典
- ^ a b Fanatic - IMDb
- ^ a b “12회 광주여성영화제”. 광주여성영화제. 2025年9月8日閲覧。
- ^ “Fanatic goes behind the scenes in Korean fan culture”. easternKicks.com (2022年6月8日). 2025年9月10日閲覧。
- ^ a b “성덕”. 독립영화 라이브러리 | indieground. 2025年9月10日閲覧。
- ^ a b 成功したオタク - KINENOTE
- ^ a b “K-pop stars Jung Joon-young and Choi Jong-hoon sentenced for rape”. BBC (2019年11月29日). 2019年11月29日閲覧。
- ^ a b c 唐木優衣、オ・セヨン (2024年7月31日). “「推し」が犯罪者に! 「成功したオタク日記」著者オ・セヨンさん 大事なのは自分を見失わないこと”. 好書好日. 2025年9月10日閲覧。
- ^ a b “「推しが性犯罪で逮捕された」ある強火オタクが、混乱・傷心・自己嫌悪...と向き合った癒しの記録”. mi-mollet(ミモレ) (2024年3月30日). 2025年9月10日閲覧。
- ^ a b “健全な推し活のためには、エンタメを扱う企業と、推し、そしてファンという三者が一体となって変わらなければならない 『成功したオタク』オ・セヨン監督インタビュー”. NeoL (2024年3月30日). 2025年9月10日閲覧。
- ^ ““가수 정준영, 카톡방에 10개월간 영상 유포””. wikitree (2019年3月11日). 2025年9月10日閲覧。
- ^ 오경묵 (2019年3月13日). “정준영 심야 사과문 발표 "모든 죄 인정…연예계 은퇴"”. 조선일보. 2025年9月10日閲覧。
- ^ “「違法動画流布」チョン・ジュニョンさん、21日に令状実質審査:”. 時事ドットコム. 2019年3月28日閲覧。
- ^ “韓国のスター歌手チョン・ジュニョン容疑者を逮捕 わいせつ動画共有の疑い”. CNN.co.jp. 2019年3月28日閲覧。
- ^ “K-pop stars Jung Joon-young and Choi Jong-hoon sentenced to prison for rape”. ABC News (2019年11月29日). 2019年11月29日閲覧。
- ^ “歌手チョン・ジュニョンが満期出所 集団性暴行で懲役5年=韓国”. 聯合ニュース (2024年3月19日). 2025年9月10日閲覧。
- ^ a b “정준영 몰카 보도 기자 "3년 전부터 수상했다"”. 노컷뉴스 (2019年3月14日). 2025年9月10日閲覧。
- ^ “검찰, 성추문 고소 당한 가수 정준영 무혐의 처분”. 연합뉴스 (2016年10月6日). 2025年9月1日閲覧。
- ^ a b c 김지혜 (2021年10月14日). “졸지에 범죄자 팬이 돼버린 이들의 웃픈 자화상, 영화 ‘성덕’ 오세연 감독”. 경향신문. 2025年9月10日閲覧。
- ^ “朴正煕元大統領にあやかりミュージカル、記念切手、拓本集まで…”. ハンギョレ (2016年6月13日). 2025年9月10日閲覧。
- ^ “매월 마지막 주 목요일은 인디가 있는 날! 보물같은 독립예술영화 보러 오세요”. 영화진흥위원회 (2023年8月25日). 2025年9月8日閲覧。
- ^ “「オタク」の韓国語は?アイドルオタクが知ってると役立つ用語まとめ”. 천글【チョングル】 (2020年8月2日). 2025年9月10日閲覧。
- ^ 映画「成功したオタク」公式サイト
- ^ “もし推しが逮捕されたら──苦悩するファンを追う映画『成功したオタク』配信開始”. KAI-YOU (2024年9月24日). 2025年9月10日閲覧。
関連項目
外部リンク
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