岐阜県青少年保護育成条例事件とは? わかりやすく解説

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岐阜県青少年保護育成条例事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/12 18:40 UTC 版)

最高裁判所判例
事件名 岐阜県青少年保護育成条例違反
事件番号 昭和62(あ)1462
1989年(平成元年)9月19日
判例集 刑集第43巻8号785頁
裁判要旨
有害図書の自動販売機への収納を禁止処罰する岐阜県青少年保護育成条例六条二項、六条の六第一項本文、二一条五号の規定は、憲法二一条一項に違反しない。
第三小法廷
裁判長 伊藤正己
陪席裁判官 安岡滿彦坂上壽夫貞家克己
意見
多数意見 全会一致
意見 伊藤正己
反対意見 なし
参照法条
憲法21条1項,岐阜県青少年保護育成条例6条1項,岐阜県青少年保護育成条例6条2項,岐阜県青少年保護育成条例6条の6第1項,岐阜県青少年保護育成条例21条5号,岐阜県青少年保護育成条例施行規則2条,昭和54年7月1日岐阜県告示539号
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岐阜県青少年保護育成条例事件(ぎふけんせいしょうねんほごいくせいじょうれいじけん)とは自動販売機有害図書を収納することに刑事罰を規定した青少年保護育成条例表現の自由等を規定した日本国憲法第21条に抵触するかが争われた裁判[1]

概要

三重県四日市市の自動販売機雑誌販売会社と同会社社長が1985年に岐阜県内の2ヶ所の自動販売機に5回にわたり、岐阜県知事があらかじめ指定した有害図書に該当する雑誌5種類・計8冊を収納したことについて、岐阜県青少年保護育成条例に違反するとして起訴された[2]1987年6月5日岐阜簡裁は二者に罰金6万円とし、1987年11月25日名古屋高裁も控訴棄却の判決を下した[2]

被告側は「有害図書規定は表現の自由、検閲の禁止を定めた日本国憲法第21条に違反する」として条例は無効であり無罪と主張した[3]。自動販売機雑誌販売会社社長は1988年11月に死亡して公訴棄却となり、裁判は自動販売機雑誌販売会社のみとなった。

1989年9月19日最高裁は「岐阜県青少年保護育成条例による有害図書の指定は検閲に当たらない」として合憲判決を下して、棄却し有罪判決が確定した[3]。また、補足説明で「条例が定める有害図書が青少年の健全育成に有害であることは社会の共通認識である」「とりわけ自動販売機の場合は昼夜を問わず売り手と対面せずに購入できることから、書店販売より弊害が一段と大きい」「図書の内容によっては県の審議会を経ずに有害図書に包括指定することも必要かつ合理的である」としたうえで有害図書の自動販売機の収納まで禁じた岐阜県青少年保護育成条例は青少年に対する有害環境を浄化するための規制としてやむを得ない制約であると結論づけた[3]伊藤正己裁判官は「有害図書規制は表現の自由、知る自由を制限するもので、それが許されるのは青少年保護という特殊事情に基づくからである。表現の自由と関わりを持つ法的規制は厳しい明確性が要求される。」と指摘する一方で「有害図書が業界のいわゆるアウトサイダーによって出版されているという現状をみるとき、果して自主規制のようなゆるやかな手段が適切に機能するかどうかは明らかではないし、〔中略〕本件条例のようなきびしい規制が政策として妥当かどうかはともかくとして、〔中略〕違憲と判断することは相当でない」とする補足意見を述べた[3]

脚注

  1. ^ 柏崎敏義 & 加藤一彦 (2013), p. 160.
  2. ^ a b 戸松秀典 & 初宿正典 (2018), p. 281.
  3. ^ a b c d 「青少年保護条例の「有害図書」規定は合憲 健全育成に不可欠/最高裁判決」『読売新聞読売新聞社、1989年9月19日。

参考文献




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