宮川真紀
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/31 13:31 UTC 版)
みやかわ まき
宮川 真紀
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生誕 | 東京都 |
出身校 | 早稲田大学社会科学部 |
職業 | 編集者、出版者 |
受賞 | 梓会出版文化賞 特別賞(2022年) |
公式サイト | タバブックス公式サイト |
宮川 真紀(みやかわ まき)は、日本の編集者、出版者。独立系出版社タバブックス代表[1]。雑誌『仕事文脈』の発行人・編集長として知られる[2][3]。
株式会社パルコにて雑誌編集や書籍編集を担当したのち、2006年よりフリーランス編集者として独立し、書籍企画・編集・制作や執筆活動を経て、2012年に出版社タバブックスを設立[4][2]。主に労働やフェミニズムをテーマとした出版物を多数刊行している[5][6]。主な出版物に、栗原康『はたらかないで、たらふく食べたい』、植本一子『かなわない』、山下陽光『バイトやめる学校』、小川たまか『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』、イ・ミンギョン『私たちにはことばが必要だ』などがある[7][8]。
経歴
東京生まれ[9]。早稲田大学社会科学部卒業[9]。1985年、外資系企業に2年勤務後、出版社の広告営業を2年経験した[9]。その後、株式会社パルコの雑誌『月刊アクロス』編集部に約7年在籍し、企画や原稿執筆を行った[9]。書籍編集部(PARCO出版)に異動し、8年間で約45冊の書籍を手がけた[9]。20年ほどの会社勤務を経て2006年にパルコを早期退職し、フリーランス編集者として独立した[9]。以後、書籍の企画・編集・制作や執筆(神谷巻尾名義)を行った[3][10]。
タバブックス
2012年8月に個人出版社「タバブックス」を設立し、2013年6月に合同会社化した[2][11]。フリー時代、生理用布ナプキンの本が商業的な出版社の意向で理想とは異なる形で出版され、すぐ絶版になったことをきっかけに、自ら出版社を立ち上げた[4][12]。同社は売れ筋よりも著者の意向や独自性を重視し、働き方や暮らしに悩む人々の営みに光を当てる出版活動を展開している[4][12]。植本一子のエッセイ『かなわない』や[4][13]、小ぶりな判型と分量を特徴とする「シリーズ3/4」書籍企画などで注目された[4]。
2013年秋、設立の契機となったユーゴ著『布ナプキン:こころ、からだ、軽くなる』の新装版を刊行し、同時にリトルマガジン『仕事文脈』を創刊した[2]。『仕事文脈』は創刊以来、年2回刊行され、当初はZINEとして文学フリマで販売されたのち、書籍流通に展開された[2][3][14]。2025年までに26巻を刊行し、記事を再編集したセレクションとして『女と仕事(2018年)』や『家父長制はいらない(2024年)』も出版されている[15][8]。
2022年、梓会出版文化賞 特別賞を受賞した[16][17]。『仕事文脈』をはじめ労働やフェミニズムに関する良質な出版物や、リトルプレス『ランバーロール』にみられる斬新な編集・デザインを通じて、本に触れる楽しさを読者に伝えたことが評価された[5]。
著作・編著書
PARCO出版で編集を担当した主な書籍
- 『少女ロマンス』高橋真琴:著、1999年[18]
- 『おしゃれ手帖』野宮真貴:著、1999年
- 『日記書いてる場合じゃねえよ』安野モヨコ:著、2001年
- 『Doughnuts ドーナッツ!マイボーゾウにのる』100%ORANGE:著、2002年[8]
- 『しかもフタが無い』ヨシタケシンスケ:著、2003年[8]
- 『文学賞メッタ斬り!』大森望・豊崎由美:著、2004年
- 『辞めない理由』碧野圭:著、2006年
- ほか
フリーランス時代の主な編著書・編集担当書籍
- 『リビドー・ガールズ:女子とエロ』神谷巻尾:編著、PARCO出版、2006年
- 『布ナプキン:こころ、からだ、軽くなる』企画編集、ユーゴ:著、産経新聞出版、2010年
- 『お金に困らない人生設計』神谷巻尾:編著, 倉橋隆行:監修、朝日新書、2010年
- 『文学賞メッタ斬り!ファイナル』企画編集、大森望, 豊崎由美:著、PARCO出版、2012年
- ほか
タバブックスでの主な刊行物
雑誌
- 『仕事文脈』[19][20]
- 『生活考察』[21] - 『生活考察vol.08』は、日記アンソロジー『コロナ禍日記』の続編「『コロナ禍日記』、一年後」を収録[22][23]。
- 『ランバーロール』[24][25]
書籍
- 『今日も盆踊り』小野和哉, かとうちあき:著、2015年[26][27]
- 『はたらかないで、たらふく食べたい:「生の負債」からの解放宣言』栗原康:著、2015年[28][29]
- 『かなわない』植本一子:著、2016年[30][31]
- 『バイトやめる学校』山下陽光:著、2017年[32][33]
- 『アウトサイドで生きている』櫛野展正:著、2017年[34]
- 『あたらしい無職』丹野未雪:著、2017年[35][36]
- 『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』小川たまか:著、2018年[37][38]
- 『私たちにはことばが必要だ:フェミニストは黙らない』イ・ミンギョン:著, 安達茉莉子:装画、2018年[39][40][8]
- 『菊とギロチン:やるならいましかねえ、いつだっていましかねえ』栗原康:著、2018年[41]
- 『山中カメラ現代音頭集:Shall we BON-DANCE?』山中カメラ:著、2020年[42][43]
- 『コロナ禍日記』植本一子, 円城塔, 王谷晶, 大和田俊之, 香山哲, 木下美絵, 楠本まき, 栗原裕一郎, 谷崎由依, 田中誠一, 辻本力, 中岡祐介, ニコ・ニコルソン, 西村彩, 速水健朗, 福永信, マヒトゥ・ザ・ピーポー:著、2020年[44]
- 『生きるためのフェミニズム:パンとバラと反資本主義』堅田香緒里:著、2021年[45][46]
- 『山風にのって歌がきこえる:大槻三好と松枝のこと』惣田紗希:著、2019年[47]
- 『田舎の未来』佐野和哉:著、2019年[48]
- 『私が30代になった』イ・ラン:著、2019年[49]
- 『夢を描く女性たち:イラスト偉人伝』ボムアラム:著、2020年[50]
- 『くそつまらない未来を変えられるかもしれない投資の話』ヤマザキOKコンピュータ:著、2020年[3][51]
- 『失われた賃金を求めて』イ・ミンギョン:著、2021年[52]
- 『フェアな関係』兼桝綾:著、2022年[53][54]
- 『1日が長いと感じられる日が、時々でもあるといい』小沼理:著、2022年[55][56]
- 『透明人間-Invisible Mom-』山本美里:著、2023年[57]
- 『若者の戦争と政治:20代50人に聞く実感、教育、アクション』仕事文脈編集部:編、2024年[58][59]
- ほか
出演
- 『〜JK RADIO〜TOKYO UNITED』「スポットライトが当たらない場所で、働き、育て、暮らす人。タバブックスの本づくりに注目!」、J-WAVE、2018年3月30日[4]
脚注
出典
- ^ “特別鼎談「ジェンダーバイアスと表現についての考察」〜後編〝表象の中のジェンダーバイアス〟”. 集英社 よみタイ (2019年11月15日). 2025年8月30日閲覧。
- ^ a b c d e “働き方を拡張する雑誌「仕事文脈」 やりがいでも能力開発でもない”. 好書好日. 朝日新聞社 (2019年6月4日). 2025年8月31日閲覧。
- ^ a b c d “「こうすべき」提言はしない、働き方。雑誌『仕事文脈』のパンクな原点 ― 宮川真紀(タバブックス)インタビュー”. FREENANCE MAG (2022年1月29日). 2025年8月31日閲覧。
- ^ a b c d e f “スポットライトが当たらない場所で、働き、育て、暮らす人。タバブックスの本づくりに注目!”. J-WAVE TOKYO UNITED (2018年3月30日). 2025年8月31日閲覧。
- ^ a b “第38回梓会出版文化賞 選考のことば”. 出版梓会. 2025年8月31日閲覧。
- ^ “タバブックスの本”. タバブックス. 2025年8月31日閲覧。
- ^ “2.21 Thu しごとバー 悩み、うざいナイト”. 日本仕事百貨. 2025年8月31日閲覧。
- ^ a b c d e “「こうすべき」提言はしない、働き方。雑誌『仕事文脈』のパンクな原点 ― 宮川真紀(タバブックス)インタビュー”. FREENANCE MAG by GMO (2022年1月29日). 2025年8月31日閲覧。
- ^ a b c d e f “脚光を浴びるだけが仕事人ではない|タバブックス代表・宮川真紀さん”. LISTEN. イーアイデム (2018年11月7日). 2025年8月31日閲覧。
- ^ “宮川 真紀/タバブックス”. ACROSS. PARCO. 2025年8月31日閲覧。
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- ^ a b “言葉のその先を、信じているために。「仕方がない」に逃げないものづくり/宮川真紀さん(タバブックス)”. トーチライト - ここでつくって生きていくメディア (2020年12月24日). 2025年8月31日閲覧。
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- ^ “京都の人気書店『レティシア書房』店主に聞く〝幸せな生き方〟のヒントになる本”. DIME (2018年1月4日). 2025年8月30日閲覧。
- ^ “男性優位社会を直視せよ 「自己被害者化」とはおさらば ライター 武田砂鉄(今を読み解く)”. 日本経済新聞 (2025年12月14日). 2025年8月31日閲覧。
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- ^ “中年特集「ランバーロール」新刊 寄稿陣に寺田克也、近藤ようこ、藤岡拓太郎、ひうち棚ら”. コミックナタリー (2025年4月21日). 2025年8月30日閲覧。
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- ^ “白河桃子・評『早く絶版になってほしい #駄言辞典』『失われた賃金を求めて』”. 毎日新聞 (2021年7月27日). 2025年8月31日閲覧。
- ^ “【音声配信】山本ぽてとの『ポトフ』〜「本人朗読で新刊を試し聴き!」 兼枡綾『フェアな関係』、矢野利裕『学校するからだ』、石山蓮華『電線の恋人』、山本ぽてと『ぽてと元年』【文化系トークラジオLife】”. TBSラジオ (2023年1月7日). 2025年8月30日閲覧。
- ^ “兼桝 綾「頭が良い女の子」【連載コラム「告白します」】”. ダ・ヴィンチ (2024年1月28日). 2025年8月31日閲覧。
- ^ “小沼理さん「1日が長いと感じられる日が、時々でもあるといい」インタビュー 自分知るためつづる日々”. 好書好日 (2022年11月17日). 2025年8月30日閲覧。
- ^ “今週の本棚・話題の本『1日が長いと感じられる日が、時々でもあるといい』=和田靜香”. 毎日新聞 (2023年2月4日). 2025年8月30日閲覧。
- ^ “「透明人間」を写す写真家――山本美里さん”. 週刊エコノミスト Online (2024年11月25日). 2025年8月30日閲覧。
- ^ “今週の本棚『若者の戦争と政治』=仕事文脈編集部・編”. 毎日新聞 (2025年2月22日). 2025年8月31日閲覧。
- ^ “【読書亡羊】戦後80年、「戦争観」の更新が必要だ 平野高志『キーウで見たロシア・ウクライナ戦争』(星海社新書)、仕事文脈編集部編『若者の戦争と政治』(タバブックス)”. Hanadaプラス (2025年1月24日). 2025年8月31日閲覧。
外部リンク
- タバブックス公式サイト
- タバブックス (@tababooks) - X
- 仕事文脈 (@shigotobunmyaku) - X
- 宮川真紀のページへのリンク