好まれる項構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/31 00:02 UTC 版)
Du Bois(1987)は、能格性の談話的基盤として、文法的・語用論的な「好まれる項構造」(preferred argument structure; PAS)を提案した。彼の提案によれば、ある種の談話において、文法と語用論の両面で、項構造における項の数と役割に関する以下のような制限が見られる。 文法面では、1つの節に現れる語彙的名詞句(代名詞でない名詞句)の数に制限があり、2つ以上現れることは非常に稀である。また、語彙的名詞句はSやOに現れ、Aにはめったに現れない。この文法面の偏りを制約として表したのが次の2つの制約である。 単一語彙項制約(one lexical argument constraint)– 1つの節につき2つ以上の語彙的な項を避けよ 非語彙的A制約(non lexical A constraint)– 語彙的なAを避けよ 語用的には、1つの節に現れる新情報の数に制限があり、2つ以上現れることは非常に稀である。また、新情報である項はSやOに現れ、Aにはめったに現れない。この語用論的な偏りを制約として表したのが次の2つの制約である。 単一新情報項制約(one new argument constraint)– 1つの節につき2つ以上の新情報の項を避けよ 旧情報A制約(given A constraint)– 新情報のAを避けよ このように、文法と語用論の両面で、SとOは語彙的な項・新情報である項が自由に現れるという共通性を持っている。これが能格性の基盤であるとDu Boisは主張した。
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