同時マスキング
(周波数マスキング から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/19 16:41 UTC 版)
例えば、440ヘルツと450ヘルツの正弦波の音は別々に聴けば区別できるが、ほぼ同じ周波数帯であるため、同時に鳴っていると、明確に区別して知覚できない。
原理
同時マスキングは蝸牛の基底膜が音の周波数に応じた位置で揺れるために発生する。音の振動は卵円窓から入って進行波となり、高い音ほど手前側の基底膜を大きく揺らす。逆に低い音は奥まで伝播する。この周波数依存性のため、似た周波数の2つの音が同時に鳴ると隣接する基底膜がともに揺れる。これにより片方の音に対する感度が落ち、マスキングが発生する[3]。
同時マスキングでは低音が高音をマスクする傾向がある[4]。これは進行波が徐々に振幅を増し、共振点以降で急激に減少することで説明される。つまり高音は手前(卵円窓側)で振幅が収まるため低音をあまりマスクせず、逆に低音は奥に進みながら徐々に振幅が増すため途中の高音の共振点をマスクする。
応用
同時マスキングは音の大きさ(ラウドネス)の知覚へ影響するため、大きさに関する応用が様々なされている。以下はその一例である:
脚注
- ^ a b
周波数マスキングは,マスカとマスキが時間的に同時に発生しているときに観測されることから,同時マスキング(simultaneous masking)とも呼ばれる.
(西村 2010, p. 6) - ^ 文部省、日本心理学会編『学術用語集 : 心理学編』日本学術振興会、1986年。ISBN 4-8181-8602-3。
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マスキングの起源の一端は蝸牛の構造に見ることができ,音は基底膜に進行波を生じさせるが,卵円窓から遠いところに低い周波数の共振点があるため,低い周波数成分が存在していると,その手前の高い周波数成分に感応する部位にも振動が伝搬し,この部位での感度が低下する
(西村 2010, p. 6) - ^
周波数マスキングは,一般に低い周波数成分がそれよりもやや高い周波数成分をマスクすることが多い.
(西村 2010, p. 6)
参考文献
- 岩宮眞一郎『図解入門よくわかる最新音響の基本と応用 : 音の科学、技術、芸術を基礎から学ぶ : 「音」の世界を包括的に解説』秀和システム〈How-nual visual guide book〉、2011年、61頁。 ISBN 978-4-7980-2921-4。
- 西村, 竜一「S3群 2編 2章 聴覚と音声」『知識の森』電子情報通信学会、2010年、1-13頁 。
関連項目
- 周波数マスキングのページへのリンク