口語訳聖書とは? わかりやすく解説

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口語訳聖書

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/24 02:20 UTC 版)

口語訳聖書(こうごやくせいしょ)[1]とは、口語文に翻訳された聖書のことである。日本国においては、日本聖書協会が出版した『聖書 口語訳[注 1]』を指す場合もある。

聖書が各国語に翻訳される際、口語は変遷して行くものであり、時間と共に文語と口語に乖離が起こる[3]。この乖離を埋めるための翻訳は、その時代の口語と近しい文体となり、文語訳聖書との対置として口語訳聖書と呼ばれる。

ドイツ語

ルター訳(1892年改訂版)

18世紀のドイツでは、マルティン・ルター訳の聖書が300年間そのまま使用されていた[4]。一方で、出版者による差異が生じ、誤植や改変の箇所が無視できない数となった[4]。そこで、ドイツ福音教会会議(: Deutsche Evangelische Kirchenkonferenz)は、ルターによる最終稿の完全な復元と、正書法に基づく現代語化を決定し、1892年に教会が責任も持って行う公的な校訂版(: Kirchenamtliche Revision)を刊行した[3][4][5]

英語

新改訂標準訳

改訂訳: Revised Version・RV)』は、1611年に完成した『ジェームズ王欽定訳: King James Version・KJV)』を英国で大幅に改訂して1885年に完成したものである[6]。また、RVに参加した米国の聖書学者によって1901年に『アメリカ標準訳: American Standard Version・ASV)』が発行された[6]。ASVは、1952年の『改訂標準訳: Revised Standard Version・RSV)』を経て、さらに約40年後の1989年に出版された『新改訂標準訳: New Revised Standard Version・NRSV)』では、過去50年間の学究的成果を反映し、1950年代以降英語に起こった変化にも注意を払われたものとなった[6]

日本語

新約聖書 口語訳
フェデリコ・バルバロ: Federico Barbaro)は、1910年(明治43年)刊行の『我主イエズスキリストの新約聖書』を参考にして、1953年(昭和28年)に『新約聖書 口語訳』をドン・ボスコ社[注 2]から出版した[8]
口語聖書
日本聖書協会では、1950年(昭和25年)ごろになると戦後現代かなづかい当用漢字の制定などによる国語の変化や聖書学の急速な進歩で、1887年(明治20年)刊の『舊約全書』並びに1917年(大正6年)刊の『改譯新約聖書』への改訳要求が次第に高まってきたことを受け、1951年(昭和26年)4月、米英の聖書協会の協力を得て翻訳を始めた[9][10]。この翻訳は、初めて日本人の聖書学者によってなされ、1955年(昭和30年)までに完成し『口語聖書[注 1]』として出版された[9]

脚註

註釈

  1. ^ a b 日本聖書協会が、1955年に出版した当初の書名は『口語聖書』[2]であったが、後に『聖書 口語訳』に改題された。
  2. ^ ドン・ボスコ社は、宗教法人カトリック・サレジオ修道会出版事業部の通称[7]

出典

  1. ^ 戦後の口語訳ー現代日本語への翻訳”. 聖書和訳史概説. 明治学院大学図書館デジタルアーカイブス. 明治学院大学図書館. 2023年1月14日閲覧。
  2. ^ 口語聖書 (日本聖書協会): 1955”. 書誌詳細. 国立国会図書館サーチ. 国立国会図書館. 2023年1月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月16日閲覧。
  3. ^ a b 宗教改革500年と聖書」『ソア』第44号、日本聖書協会、東京、2017年3月1日、3-9頁、2023年1月10日閲覧 
  4. ^ a b c Dreihundert Jahre Wildwuchs”. Die Geschichte der Lutherbibel. Bibel. Deutsche Bibelgesellschaft. 2023年6月9日閲覧。
  5. ^ 吉田新「聖書翻訳の過去・現在・未来 ルター訳聖書2017年改訂版について」『東北学院大学キリスト教文化研究所紀要』第35号、東北学院大学キリスト教文化研究所、仙台、2017年6月30日、43-49頁、ISSN 1348-4621全国書誌番号: 01000924 
  6. ^ a b c 本多峰子「英語聖書の歴史」『ソア』第39号、日本聖書協会、東京、2012年3月1日、3-7頁、2023年1月10日閲覧 
  7. ^ 代表就任のご挨拶”. お知らせ. ドン・ボスコ社. カトリック・サレジオ修道会 (2022年4月1日). 2023年1月8日閲覧。
  8. ^ 高橋虔「日本における聖書の翻訳」『日本の神学』第1984巻第23号、日本基督教学会、東京、1984年、195-204頁、doi:10.5873/nihonnoshingaku.1984.195ISSN 0285-4848全国書誌番号: 00012017 
  9. ^ a b 口語新約聖書について』日本聖書協会、東京、1954年。 NCID BA45547987https://www.bible.or.jp/wp-content/uploads/2021/03/jc_new_testament.pdf2023年1月8日閲覧 
  10. ^ 和訳史06 文語訳から口語訳へ”. 聖書翻訳の歴史. 聖書を知る. 日本聖書協会. 2023年1月8日閲覧。

関連項目

外部リンク




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