十石犬とは? わかりやすく解説

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十石犬

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/21 05:59 UTC 版)

十石犬
原産地  日本群馬県
特徴
毛色 栗色、赤、胡麻等
主要畜犬団体による分類と標準
主要畜犬団体による分類はありません
イヌ (Canis lupus familiaris)

十石犬(じっこくけん、じっこくいぬ)は、日本犬の一種[1]

概要

十石号

群馬県多野郡上野村で飼育されていた柴犬の一種で、十石犬の名は同村と長野県南佐久郡佐久穂町の県境にある十石峠及び十石街道(国道299号)に由来する[2]

ルーツは長野県南佐久郡川上村の梓山地区で繁殖されていた梓山犬である。梓山犬は県境を越えた群馬県上野村へも譲渡されていた[3]。「十石犬」と呼ばれるようになった由来は譲渡先の群馬県にあり、1928年の秋頃に日本犬保存会・初代会長斎藤弘吉が、上野村楢原字黒川集落の猟師、飯出庄太郎[注 1][注 2]からチン(7歳オス)を譲り受け、十石峠から名を取り「十石号」と名付けたのが始まり[4][5][6]。斎藤は十石号を1931年8月まで飼育した[6]

柴犬(赤犬)の一種ともされ、上野動物園で開かれた日本犬の展覧会で上位入賞の栄誉に輝き、多くの愛犬家から柴犬最高峰の風格と評価されたという[7]

昭和30年代に絶滅したと言われるが、その血筋を受け継ぐ犬が10頭ほどおり、それらの犬を交配させて昔の十石犬の姿を取り戻そうとする活動が行われている[8]。長野県川上村においても、戦後一時梓山犬は絶滅したものの群馬県上野村より子犬を譲り受け保存活動が行われている[9]

梓山犬(十石犬)の頭数は2022年時点で120頭未満である[10]

地元上野村には十石犬がニホンオオカミとの交雑種である狼犬であるとの伝承がある[11]

特徴

  • 体格:すらっとしていて、たち耳、巻き尾[12]
  • 毛:胡麻、赤毛が多いが長野県側との交流により黒の差し毛の個体も生まれた[6]
  • 用途:猟犬番犬
  • 性格:やんちゃで活発。帰巣性が強く、方向感覚にも優れる[6]
  • サイズ:中・小型犬、体高はオスで39.5センチ前後[6]

正系の十石犬

正系の十石犬に似た犬

元々の十石犬は七・八貫(約26.3kg-30kg)で、体高一尺七・八寸(約54.5kg-57.6kg)の犬であった。十石峠付近は古くから狩猟地と見做され、犬も良系のものが多かった[13]

しかしながら明治末から獣が減少していって、それに伴い信州柴犬に置き換えられていった。1931年(昭和6年)にフクという牡犬を最後にこの系統は絶滅した[13]。以降の十石犬は正系と柴犬の混血である[13][14]

脚注

注釈

  1. ^ 『狼犬「十石犬」懐想』では「飯出庄三郎」とする。
  2. ^ 「群馬の地犬」(『上州風』24号)では飯山庄太郎。

出典

  1. ^ 太田 2022, p. 3
  2. ^ 太田 2022, pp. 56–58
  3. ^ 佐茂規彦「希少狩猟犬に合いに行く① 100年の時を超えて復興する梓山犬」『けもの道2022秋号 Hunter's autumN』三才ブックス、2022年10月14日。ISBN 978-4-86673-335-7https://www.google.co.jp/books/edition/%E3%81%91%E3%82%82%E3%81%AE%E9%81%93_2022%E7%A7%8B%E5%8F%B7_Hunter_s_autumN/VrCTEAAAQBAJ?hl=ja&gbpv=0 
  4. ^ 十石という犬名の由来”. ::: 十石犬とはどんな犬か :::. 2016年6月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月29日閲覧。
  5. ^ 太田 2022, pp. 58–61
  6. ^ a b c d e 小山宏「群馬の地犬」『上州風』24号、上毛新聞社、2006年3月31日、42-50頁。 ISBN 4-88058-044-9 
  7. ^ 原初の柴犬”. ::: 十石犬とはどんな犬か :::. 2016年9月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月29日閲覧。
  8. ^ 保存会の設立”. ::: 十石犬とはどんな犬か :::. 2016年9月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月29日閲覧。
  9. ^ Facebookより 純粋な川上犬飼育者の会 2015年4月23日の投稿
  10. ^ joetsutj (2022年2月26日). “全国で120頭の希少な猟犬「梓山犬」 上越市の久保埜さん宅にやってきた!”. 上越タウンジャーナル. 2024年9月29日閲覧。
  11. ^ 太田 2022, pp. 28–38
  12. ^ 太田 2022, pp. 49–50
  13. ^ a b c 高久兵四郞『犬 : 研究・飼育・訓練・医療講座』 4巻、新小説社、1937年、84頁。doi:10.11501/1261254 
  14. ^ 不識庵「十石峠の幻の犬」『日本犬保存会創立五十周年史』 下巻、日本犬保存会、1978年12月、1022-1024頁。doi:10.11501/12617016 

参考文献

  • 太田, 博『狼犬「十石犬」懐想』上毛新聞社出版編集部、2022年11月15日。 ISBN 978-4-86352-320-3 

関連文献

  • 橘不折『十石犬物語』2003年、文芸社
  • 「幻の十石犬を求めて」『上毛新聞』1994年2月14日 - 16日
  • 『上野村の自然 動物』1999年、上野村教育委員会

関連項目

外部リンク





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