六月の真夜の家裂く金の馬
作 者 | |
季 語 | |
季 節 | 夏 |
出 典 | むしかりの花 |
前 書 | |
評 言 | 去る三月二日に亡くなられた金子皆子氏。情趣と優しさ溢れる、その作品の数々に触れているうち、ふとこの句がぐぐっと飛び込んできた。「六月の真夜」という、一年の中でも、とりわけしっとりと穏やかであろうひと時に、突如として「金の馬」があらわれ、わが家を切り裂くというのである。この唐突な展開、激しさにまずは圧倒される。 金の馬が指し示すもの、投影されているもの、もちろんそれは作者にしか、いや作者にもはっきりと限定できないのかも知れない。しかしこの金の馬、まばゆく光る荒々しさは、あるいは作者が心のどこかでずっと憧れていたものではなかっただろうか。妻として、母として、長い年月、家を守り通してきた作者。その均衡と安寧を壊して、空想の金の馬にまたがり、遥かな世界へと向かう・・。これもまた作者の、家庭人としての情動の一面。その鮮烈さに打たれた。 第一句集「むしかりの花」(1988)所収。 |
評 者 | |
備 考 |
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