ミルクおやじとは? わかりやすく解説

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ミルクおやじ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/25 02:03 UTC 版)

ミルクおやじ
村川 徳浩 むらかわ のりひろ
深谷駅前で歌うミルクおやじ
(2011年4月10日)
生年月日 (1960-04-12) 1960年4月12日(65歳)
出生地 日本 埼玉県深谷市
出身校 埼玉県立熊谷高等学校
立正大学短期大学部
前職 酪農家
現職 深谷市議会議員
シンガーソングライター
公式サイト 政治家/ミルクおやじ
当選回数 4回
在任期間 2011年 - 現職
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ミルクおやじ(本名:村川 徳浩(むらかわ のりひろ)、1960年4月12日 - )は、日本政治家シンガーソングライター、元酪農家。埼玉県深谷市議会議員(4期)。通称名で立候補し当選・活動している議員の一人として知られる[1][2][3][4][5]

来歴

1960年、埼玉県深谷市酪農家の長男として生まれる。深谷市立幡羅小学校、幡羅中学校を卒業後、埼玉県立熊谷高等学校を経て、学習院大学理学部物理学科に入学するが中退。その後、立正大学短期大学部社会福祉学科二部を卒業[6]

1986年、26歳で家業の酪農を継ぐ。

2000年(平成12年)、雪印乳業の集団食中毒事件が発生。村川は生産者の一人として怒りを感じる一方、消費者の牛乳離れが進むのではないかと先行きの不安を抱くようになった。そんな中、酪農作業の合間に何気なく口ずさんだ鼻歌をもとに、オリジナル曲「ミルクソング」を書き上げた[6]

当時PTA会長を務めていた小学校の行事でこの曲を披露したところ好評を博し、これをきっかけに友人の松崎雄一(プロミュージシャン、編曲家)に編曲を依頼。CDを自主制作した[7]

このオリジナル曲が、地元埼玉県のFM局NACK5の音楽番組「ザ・オーディション」で、2001年8月の月間MVPに選ばれたことをきっかけに、「ミルク082(おやじと読む)」の芸名で活動を本格化。牛の気持ちになって歌おうと考え、牛の着ぐるみも制作。ダンス教室にも通い、牛のスタイルで歌って踊るパフォーマンスを行うようになった[8]

元々音楽が好きで、若い頃には楽器も演奏していたほか、地域のアマチュア楽団でコントラバスを担当した経験もある。牛乳PR活動を始めるまでは音楽から離れていたが、埼玉県牛乳普及協会のイベントや、地元の幼稚園・小学校を訪問するなど、各地でのイベントやライブ活動は好評を博し、歌って踊る酪農家として評判になった [9][10]

その後、牛や牛乳、地元・深谷市の特産物(ねぎなど)をテーマにしたオリジナル曲を披露するようになり、「呼ばれたら歌いに行く」というスタイルを貫いている。活動についてはインタビューで「9割は趣味、1割は牛乳普及活動」と語っている[11]

2007年1月、埼玉県牛乳普及協会は、牛乳普及活動の一環として県内にある1300の全小中学校に村川のCD「乳(ニュー)ミュージック」を無償で配布[12]。 同年10月、村川のオリジナル曲「うしうしサンバ」が、日本酪農乳業協会の液晶型ポップCMに採用され、全国の量販店の牛乳売り場で流れることとなった[13]

一方、自らの牧場「青空牧場」ではピーク時の2007年に約60頭の乳牛を飼育していたが、牛乳の需要低迷や飼料費の高騰が続く中、事業拡大のために行った8000万円の設備投資が負担となり、経営の見通しが立たなくなり、2008年3月に廃業[14]。 その際に乳牛を売り払ったものの、およそ5000万円の借金が残ったという[10][15][16]

酪農の廃業後も、埼玉県牛乳普及協会が無料で派遣する形で小学校やスーパーなどを訪れ牛乳をPRするイベントは続けていた[17] [18]

2009年、廃業をきっかけに「全国各地で歌い、牛乳をPRしたい」と、全国行脚の旅を始める[10]。 牛乳の日である2009年6月1日に地元の埼玉県を出発、牛柄の自家用車で観光牧場や道の駅、小学校、幼稚園、老人福祉施設などを巡り、路上ライブを行う。自作のオリジナルCDを2000枚作成し、1枚500円で販売。この売り上げから旅の資金を捻出したという。全国39都道県を回り、2010年6月20日に地元深谷市での全国ツアー凱旋ライブをもって行脚の旅を終える。この全国行脚の旅は各地の新聞やテレビなどで広く取り上げられた[19][20][21][22][23][24][25]

2011年4月、埼玉県深谷市議会議員選挙に「ミルクおやじ」の通称で立候補し、初当選。[26][27]。ユニークな名前からネット上で話題を集めた。[28]以降、4期連続で当選。

2022年1月23日投開票の深谷市長選挙に無所属の「ミルクおやじ」名で立候補すると表明していたが[29][30]、準備不足などを理由して出馬を断念する[31] [32]

通称名での立候補と法的根拠

村川は「ミルクおやじ」の通称で2011年に深谷市議会議員選挙に初出馬し、1,814票を獲得して初当選[33]。以降4期にわたり市議を務めている。

公職選挙法施行令第88条第8項では、通称の使用承認手続として

「法第144条第1項の規定による通称の使用の承認を受けようとする者はあらかじめ当該通称が本名に代わるものとして広く通用している旨を説明し、かつ、そのことを証するに足りる資料を選挙長に提出しなければならない」

と定めている。

総務省によれば、著書や名刺、はがき、手紙などに通称が載っていることを証拠として提出し、「通称」として広く通用していると認められれば、本名以外の名前でも立候補できるという [5]

出馬時にはすでにシンガーソングライター「ミルク082(おやじ)」として10年以上牛乳普及活動の実績があり、地域で広く知られる存在となっていたことから、深谷市選挙管理委員会は、CD、ファンレター、新聞記事などの資料提出をもって通称使用を許可した[1][34]

立候補時には「選挙や政治をなめている」「深谷市の恥」といった批判も寄せられたが、本人は日本テレビのインタビューに次のように述べている[5]

「ふざけて名乗っているのではなく、牛乳のPRや酪農家への理解といった目的があった。どういう考えのもとで出馬するのかが重要。有権者は当選後も議員の質を見ている。政治活動を続けるのは甘くない」

議員として出席する公式行事では本名の「村川徳浩」を使用し[35]、通称への配慮として、深谷市議会の中継では「村川徳浩(ミルクおやじ)」と"本名+(通称)"の形で字幕が入る。議会だよりでは 村川徳浩 ミルクおやじと本名の「村川徳浩」に通称のふりがなが付される形をとっている。情報発信やイベント活動は通称の「ミルクおやじ」を名義として状況に応じて使い分けている[1]

政治活動

牛柄の選挙カー(2023年4月、深谷市)

牛柄の着ぐるみ姿の写真に「ミルクおやじ」の通称名が入る選挙ポスターは、ユニークな表現のポスター事例としてしばしばメディアに取り上げられる [3][9][36]

後援会組織を持たず、今後作るつもりもないという[9]。選挙期間中はトレードマークのホルスタインの着ぐるみを着用し、牛柄の車にスピーカーを載せ、自作の曲を流し、歌いながら選挙区を回る[27]

音楽活動

「ミルク082(おやじ)」名義で、3枚のCDをリリースしている。自らの楽曲を「乳(ニュー)ミュージック」と呼び、演歌からロックまで多くのジャンルを手掛ける。

代表曲は「ミルクソング」「うしうしサンバ」「ねぎ〜サンバ」「ゴーゴーふっかちゃん」。

2023年6月1日には、大木綾子に楽曲提供した「うしうしサンバ/酪農応援歌」が配信限定でリリースされた[37]

選挙結果

当落 選挙 執行日 年齢 選挙区 政党 得票数 得票率 定数 得票順位
/候補者数
政党内比例順位
/政党当選者数
深谷市議会議員選挙[33] 2011年4月24日 51 ―― 無所属 1814票 2.94% 26 22/32 /
深谷市議会議員選挙[38] 2015年4月26日 55 ―― 無所属 2543票 4.36% 24 3/33 /
深谷市議会議員選挙[39] 2019年4月21日 59 ―― 無所属 2446票 4.50% 24 2/31 /
深谷市議会議員選挙[40] 2023年4月23日 63 ―― 無所属 2241票 4.99% 24 5/26 /

その他

  • 熊谷高校時代の同級生には、プロのロックギタリストである葛城哲哉がいる。

脚注

出典

  1. ^ a b c 「勝手につくば大使」「ミルクおやじ」…選管泣かせの通称、どこまで認められるか”. 読売新聞オンライン (2022年2月17日). 2025年3月17日閲覧。
  2. ^ 覆面レスラー、ミルクおやじ氏ら活躍/主な通称議員”. 日刊スポーツ (2021年2月9日). 2025年3月17日閲覧。
  3. ^ a b 政治家もキラキラネームの時代到来?現役政治家「ミルクおやじ」を始め驚きの名前6選”. 選挙ドットコム (2018年2月19日). 2025年3月17日閲覧。
  4. ^ 田中将介 (2019年4月27日). “統一地方選で勝った渡辺ミッチーの孫2人 マック赤坂、ミルクおやじのメンタルとは?”. 週刊朝日オンライン. 朝日新聞出版. 2025年3月26日閲覧。
  5. ^ a b c 【それって本当?】本名以外で出馬、どこまでOK? 現職議員からは「合法的な破壊行為」の声も 一部の候補者が本名よりも通称を選ぶ理由」『日本テレビ放送網』2025年6月14日。2025年9月25日閲覧。
  6. ^ a b 「「ミルクソング」歌う酪農家 村川徳浩さん」『毎日新聞 埼玉版』毎日新聞社、2001年11月5日、21面。2025年4月26日閲覧。
  7. ^ 米沢文「多士彩々 村川徳浩さん」『産経新聞』産経新聞社、2005年10月25日。2025年4月26日閲覧。
  8. ^ 「「子どもたちに飲んでほしい」牛乳応援CD制作」『読売新聞』読売新聞社、2001年9月9日、朝刊、32面。
  9. ^ a b c 畠山理仁 (2020年2月17日). “「選挙の鬼」ではなく「選挙の牛」がいた! あなたは「ミルクおやじ」を知っていますか?”. よみタイ. 2025年3月17日閲覧。
  10. ^ a b c 埼玉県の元酪農家・村川さん、「乳(にゅう)ミュージック」で牛乳PR”. 函館地域ニュース by 函館新聞社. 函館新聞社 (2009年7月28日). 2025年3月26日閲覧。
  11. ^ 酪農家:村川徳浩さん”. 関東生乳販売農業協同組合連合会. 関東生乳販売農業協同組合連合会 (2006年12月1日). 2025年4月26日閲覧。
  12. ^ 「乳ミュージック 出荷 深谷の酪農家 販促用CDを小中学校に配布」『朝日新聞 埼玉版』朝日新聞社、2007年1月13日。2025年4月26日閲覧。
  13. ^ 「ミルクCM子どもつかむ 深谷の酪農家」『読売新聞 埼玉版』読売新聞社、2007年10月3日。2025年4月26日閲覧。
  14. ^ 「歌で酪農応援 ミルク082」『読売新聞』読売新聞社、2009年5月6日、夕刊。
  15. ^ 「酪農の苦労、歌で知って 廃業にめげず牛乳テーマ 深谷・村川さん全国へ /埼玉県」『朝日新聞』朝日新聞社、2009年5月29日、朝刊、31面。
  16. ^ 「「モーっと飲もう」082は歌う 「ミルクおやじ」こと深谷市議の村川さん /埼玉県」『朝日新聞』朝日新聞社、2012年6月13日、朝刊、29面。
  17. ^ ミルク082(おやじ)”. 文化放送 浜美枝のいつかあなたと. 文化放送 (2010年6月13日). 2023年4月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月26日閲覧。
  18. ^ 金沢衛「ミルク082が児童に牛乳PR 鴻巣・赤見台第二小」『毎日新聞』毎日新聞社、2008年5月15日、朝刊。
  19. ^ 「歌で酪農応援ミルク082 昨年廃業 全国縦断ライブへ」『読売新聞』読売新聞社、2009年5月26日、夕刊。
  20. ^ 「乳ミュージック 北海道を巡業中 埼玉県の酪農家 歌って牛乳PR」『朝日新聞』朝日新聞社、2009年7月25日、朝刊。
  21. ^ 「牛乳もっと飲もうぜ 「ミルクおやじ」元酪農家・村川さん 函館訪れ熱唱」『北海道新聞』北海道新聞社、2009年7月31日、夕刊。
  22. ^ 「牛乳ファンもっと 埼玉県の元酪農家 着ぐるみ+歌行脚」『日本農業新聞』日本農業新聞社、2009年8月20日、朝刊。
  23. ^ 「広がれ!牛乳好きの輪 深谷の元酪農家・村川さんが全国行脚」『埼玉新聞』埼玉新聞社、2009年9月23日、朝刊。
  24. ^ 「元酪農家の歌手 牛乳消費後押し 全国行脚ライブあすまで琴浦」『日本海新聞』新日本海新聞社、2009年11月20日、朝刊。
  25. ^ 「「もっと牛乳を」、消費拡大へPR JR熊谷駅で元酪農家ら /埼玉県」『朝日新聞』朝日新聞社、2010年6月2日、朝刊、26面。
  26. ^ 4市議選で改援隊計15人当選 ミルクおやじ氏初当選”. asahi.com マイタウン埼玉. 朝日新聞社 (2011年4月24日). 2011年4月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月26日閲覧。
  27. ^ a b 「2首長29市町議選、投開票 北本市長に石津氏3選 2011統一地方選 /埼玉県」『朝日新聞』朝日新聞社、2011年4月25日、朝刊、15面。
  28. ^ 織本幸介 (2011年4月25日). “深谷市議選でミルクおやじ氏が当選、YouTubeにはオリジナルソングも”. RBBTODAY. IID, Inc.. 2025年3月27日閲覧。
  29. ^ 「深谷市長選出馬、村川市議が表明 /埼玉県」『朝日新聞』朝日新聞社、2021年12月15日、朝刊、23面。
  30. ^ “市議の村川氏、深谷市長選へ /埼玉”. 毎日新聞. (2021年12月15日). https://mainichi.jp/articles/20211215/ddl/k11/010/082000c 2025年3月25日閲覧。 
  31. ^ “深谷市長選 村川氏、出馬取りやめ 「準備不足」 /埼玉”. 毎日新聞. (2021年12月29日). https://mainichi.jp/articles/20211229/ddl/k11/010/144000c 2025年3月25日閲覧。 
  32. ^ 「深谷市長選出馬、村川氏取りやめ /埼玉県」『朝日新聞』朝日新聞社、2021年12月29日、朝刊、17面。
  33. ^ a b 深谷市議会議員選挙(2011年)結果”. 深谷市 (2023年3月27日). 2024年5月17日閲覧。
  34. ^ 小森準平 (2023年4月29日). “立候補者の「通称」”. 神戸新聞 (神戸新聞社). https://www.kobe-np.co.jp/column/hibi/202304/0016295388.shtml 2025年3月26日閲覧。 
  35. ^ 村川徳浩(むらかわのりひろ)”. 深谷市議会. 2025年3月26日閲覧。
  36. ^ 陳怡秀 (2017年10月19日). “【日本想想】日本競選海報學問大:張貼限制多,卻能變身牛奶老爹?!” (中国語). 想想論壇. 小英教育基金會. 2025年3月27日閲覧。
  37. ^ 大木綾子「うしうしサンバ」06/01 配信RELEASE”. 株式会社フリーボード (2023年5月30日). 2024年5月17日閲覧。
  38. ^ 深谷市議会議員選挙(2015年)結果”. 深谷市 (2023年3月27日). 2024年5月17日閲覧。
  39. ^ 深谷市議会議員選挙(2019年)結果”. 深谷市 (2023年3月27日). 2024年5月17日閲覧。
  40. ^ 深谷市議会議員選挙(2023年)結果”. 深谷市 (2023年4月24日). 2024年5月17日閲覧。

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