プトゥームの黒人の大修道院長とは? わかりやすく解説

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プトゥームの黒人の大修道院長

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/20 01:11 UTC 版)

ウィアード・テイルズ』掲載号より冒頭部分

プトゥームの黒人の大修道院長』(プトゥームのこくじんのだいしゅうどういんちょう、原題:: The Black Abbot of Puthuum)は、アメリカ合衆国のホラー小説家クラーク・アシュトン・スミスによる短編小説。『ウィアード・テイルズ』1936年3月号に掲載された[1]

ゾティークのシリーズの一編。冒頭には「ホアラフ王の弓兵」の詩が載せられ、物語後に主人公のゾバルが詠ったものと示唆される。

あらすじ

ホアラフ王の弓兵

何世紀も前、ヨロス国では黒人修道会が栄えたものの、今や修道院の存在は忘れられ、王国にいる黒人も、貴人や富豪の後宮に従事する宦官などごくわずかだった。

弓兵ゾバルと槍兵クシャラは、ヨロス王ホアラフの目に留まり、選り抜きの戦士として重用される。あるとき王は宦官シムバンに、荒涼のイズドレルで噂される美女ルバルサを後宮に買い入れる任務を授ける。護衛として同行したゾバルとクシャラはルバルサに惹かれる。その帰り道、「三日月状の黒い影」が、一行の行く手を阻み、取り囲んで「軍隊のような騒音」で威嚇してくる。そこへ、「プトゥームの修道院の大修道院長」ウジュクを名乗る黒人が現れる。ウジュクから修道院に招待されたゾバルとクシャラは、その露骨な怪しさと好色さに警戒するも、シムバンとルバルサの説得によって申し出を受け入れた。とはいえ、ゾバルたち2人は修道院に通された後も警戒心を解かなかった。やがて、シムバンとルバルサもウジュクの怪しさに気づきはじめたころ、ゾバルとクシャラは、修道士たちの「影」の不自然さを見て取り、大修道院長が魔物であると確実視する。寝室は4人分用意されたが、4人は一室に集まって、寝台にルバルサが、床にシムバンが眠り、ゾバルとクシャラは戸口の外で警護につく。

夜明け方、眠り込んでいた戦士2人は、中庭からの物音で目を覚ます。クシャラは警護を続け、ゾバルが調べに行く。声に気づいたゾバルが地下納骨所へ向かうと、プトゥームの大修道院長のウルドルを名乗るミイラに遭遇し、ゾバルが持つ「善なる魔術矢」で自分を殺すよう頼まれる。ウジュクの正体はウルドルが魔物にたぶらかされてもうけた、半人半魔の子であり、「善なる魔術矢」ならウジュクも殺せるだろうとウルドルは告げる。ウルドルから幻術を解除するための護符を受け取ったゾバルは、ウルドルの望み通り死を与えた後、地上へ戻る。

その時、寝室から仲間たちの声と嫌らしい笑い声がする。クシャラの奥の戸口が壁で塞がれており、彼は何が起こっているのかわからなかったが、ゾバルが持ってきた護符によってすべての幻影が消え、プトゥーム修道院そのものが廃墟に戻る。シムバンは既に殺されており、その近くでは真っ黒な夢魔がルバルサを襲っていた。そこへ化物の姿となったウジュクが12人の修道士とともに現れ、ゾバルとクシャラに襲い掛かる。ゾバルは、修道士たちの奥にいるウジュクに狙いを定め、魔術矢を射ち込む。ウジュクの死により修道士たちは消え、その巨体は縮み、腐臭が立ち上る。また、ルバルサも無事だった。

その後、ゾバルとクシャラは、お互いがルバルサに対して深い恋慕を抱いていることを自覚する。ゾバルは、もう彼女を王のもとには連れて行けないと判断し、外国に逃げることと、2人のどちらが彼女を自分のものにするかを籤で決めようと提案し、クシャラは同意する。2人は夢魔の死体の五本指を拾い、兜に納めて、籤引きを始める。ゾバルが勝ち、クシャラは悔しがったものの、ルバルサはクシャラを選ぶ。

大修道院長ウルドル

「ホアラフ王の弓兵」から1000年以上前のこと、処女の女神オジュハルを崇拝する禁欲宗団が、北の黒人帝国イルカルの皇帝から追放される形で、ヨロス国に来る。彼らは大修道院長ウルドルの指導のもと、イズドレルの砂漠に修道院を建て、俗世を避けて敬虔な信仰に明け暮れる。やがて大勢いた修道士たちは死んでいき、高潔さと魔術で長命となったウルドルが最後の一人となる。

その後、ウルドルは砂漠の女夢魔たちに誑かされてウジュクをもうけてしまい、オジュハルの怒りを買い、贖罪を命じられる。さらにウジュクは、老いて弱ったウルドルを地下納骨所に放り込んで監禁する。ウルドルは朽ちていくも決して死なず、聖者の幻視の力は、1000年間にわたりウジュクの悪行を見続けていた。

ウジュクは大修道院長を装い、不死性と地獄の力を授けられ、プトゥームを支配する。普段は妖術を用いて修道院を隠しており、目につけた者が近くに来ると姿を現し、男は喰らい、女は情欲に奉仕させていった。

主な登場人物

  • ゾバル - 弓兵。乗馬は神経質な種馬。主人公。
  • クシャラ - 槍兵。乗馬は白黒ぶちの武装牝馬。
  • シムバン - 宦官。ホアラフ王の後宮の調達人。肥満体で臆病。驢馬2頭を騎乗用と荷物用に用いる。
  • ルバルサ - イズドレルに住む遊牧民の娘。祖母と二人暮らし。シムバンに買い取られる。乗馬は王が用意した専用の去勢馬。
  • ウジュク - 悪役。プトゥームの修道院の大修道院長。長身の黒人。二本角の紫帽子をかぶる。見た目と異なる、大きな不格好な影がある。
  • ホアラフ王 - ヨロスの国王。
  • アムドク - ヨロスの宮廷魔術師。ゾバルに、魔物をしりぞける魔術の矢毒を授ける。クシャラにも魔術武器を授けようとしたが、愛用の槍に勝る得物はないと断られた。
  • 12人の修道士 - 黄色の頭巾をかぶった、ウジュクによく似た黒人たち。影をもたない。
  • ウルドル - 真の、プトゥームの黒人の大修道院長。夢魔にたぶらかされ、悪鬼ウジュクをもうける。ウジュクによって地下に監禁され、朽ちながらも生き永らえていた。
  • オジュハル - 処女の女神。プトゥームの禁欲宗団が信仰する。

関連作品

  • 拷問者の島 - 銀死病でヨロス王国と首都ファラードが滅びる。

収録

脚注

注釈

出典

  1. ^ 創元推理文庫『ゾティーク幻妖怪異譚』解説(大瀧啓裕)、437-438ページ。



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