ブレティニ・スール・オルジュ駅脱線事故
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/24 16:08 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動ブレティニ・スール・オルジュ駅脱線事故 | |
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客車のうち前から3両目の車両。脱線したまま引きずられた形となっている。
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発生日 | 2013年7月12日 |
発生時刻 | 17:15 (CEST) |
国 | ![]() |
場所 | ブレティニ・スール・オルジュ駅 |
路線 | パリ・ボルドー線(RER C線) |
運行者 | フランス国鉄 |
事故種類 | 脱線事故 |
原因 | ポイントの部品の脱落(調査中) |
統計 | |
列車数 | アンテルシテ1編成 |
乗客数 | 385人 |
死者 | 6人(うち乗客2人) |
負傷者 | 30人(うち重体8人) |
その他の損害 | 駅施設の損壊 |
ブレティニ・スール・オルジュ駅脱線事故(ぶれてぃに=すーる=おるじゅえきだっせんじこ)とは、中央ヨーロッパ夏時間2013年7月12日17時15分頃に、フランスのブレティニ・スール・オルジュにあるブレティニ・スール・オルジュ駅において発生した鉄道事故である。385人の乗客を乗せ137km/hで駅を通過しようとしたアンテルシテが脱線し、事故車両の乗客と駅にいた利用客のうち少なくとも6人の死者と30人の負傷者が発生した[1]。
経緯
事故は、フランスにおける本格的な夏休みシーズンで、多くの人々が列車を利用する機会の多い中で発生した[2]。事故を起こした列車は特急列車アンテルシテ(列車番号3657)で、BB26000型電気機関車1両[1]が客車7両[3]を牽引する8両編成であった。当列車はパリのオステルリッツ駅[4]を16時53分に出発し、パリ・ボルドー線(RER C線)をリモージュ[2]に20時5分到着予定で走行していた。事故当時は385人の乗客がいた[4]。事故現場となるブレティニ・スール・オルジュ駅[4]は該当列車は通過駅であり[5][2]、17時15分頃[1]、137km/hの速度で駅を通過しようとした[4][6]。駅の通過速度の上限は150km/hであり[4]、制限速度内である[3]。しかし、駅を通過する直前で、大きな衝撃音と激しいゆれが発生した後[2]、客車7両のうち後方の4両が脱線し、うち6両目が駅の島式プラットホームに乗り上げ、7両目は反対側の線路に突っ込み、まるでプラットホームを列車が飛び越えているような形となった[3]。4両目は脱線しなかった機関車と前方3両の客車に牽引される形で脱線しつつ引きずられ、5両目以降は連結が外れて駅に取り残される形となった[1]。
この事故で、385人の乗客のうち、少なくとも6人の死者と30人の負傷者が確認された[2]。負傷者のうち8人は重体である[3]。一時死者は7人と報じられた事があったが[5]、その後訂正されている[2]。また、プラットホームに乗り上げた車両によって、ブレティニー駅の施設の一部が破壊された。死者のうち4人はブレティニ・スール・オルジュの住人で、駅で別の列車を待っていた際にプラットホームに乗り上げた車両に跳ねられたと見られている。残りの2人は列車の目的地であるリモージュの住人であったことから、列車の乗客であると推定されている[4]。運転士が事故直後に事故発生時の対応をとったため[7]、脱線した場所に向かってくる車両に事故の知らせが入り、二次的な事故は発生していない。事故の対応には、約300人の消防士、20病院の医療チーム、8台のヘリコプターが動員された[1]。
事故原因
事故原因の調査は事故の翌日の13日から行われた[8]。事故直後の調査で、駅を通過する約200m手前にあるポイントのうち、レールの片側にボルトでつながれ、レール同士をつなぐ役目を果たしている約10kgの金属プレート[9]が外れて壊れている事が判明しており、脱線の原因はこのプレートが外れてポイントの真ん中に移動する事で車輪の動きを妨げた事により[4]、客車の3両目と4両目が最初に脱線した事であるという見方を強めている[8]。また列車の乗客の証言にも、この場所で大きな衝撃音がしたというものがある[10]。通常このプレートはロックワッシャーを使って4本のボルトで締められており、部品が外れたことに疑問を投げかける専門家もいる。フランス国鉄総裁のギヨーム・ペピはこの調査結果を記者会見で述べた上で、プレートが外れた事に対しての疑問視する声には「その点は大きな疑問だ。推測するには時期尚早だ。」と述べた。ポイントは7月4日に点検が行われたばかりであり、この時に異常は確認されなかった。また、事故の約20分前に別の列車がこのポイントを無事通過している[4]。
一方フランスのメディアは、事故の背景に在来線を中心とするフランス国内の鉄道網全体の老朽化を指摘する声がある。フランスのキュビエ運輸・海洋・漁業担当大臣も「30年前の線路のままで需要に応え切れていないのが現状だ。」と述べており、老朽化を認めている形である[11]。また、運転士の対応が適切であった事から[7]、事件に人為的なミスは考えにくいという見解を述べる一方で、点検がおろそかになっていたことは否定した[10]。
影響
事故が発生したRER C線は、事故翌日の13日も全面運休して事故調査に当たった[8]。同日の正午には、フランス国内にある全てのフランス国鉄の駅で、駅員や利用客による1分間の黙祷が行われた[12]。ブレティニ・スール・オルジュ駅は3日間閉鎖されるため、代替の長距離輸送にバスの路線が用意された[1]。
また、事故原因になったと思われるポイントの部品は、同型のものがフランス国内で約5000ヶ所存在するため、問題の有無を把握するための一斉点検が実施されている[8]。
事故から2日後の14日はフランスの革命記念日であり、これを記念する軍事パレードが開催されたが、地元メディアはこの事故を踏まえて「悲しみの中の革命記念日」と報じている[13]。
出典
- ^ a b c d e f “A Bretigny, la plus grave catastrophe ferroviaire depuis 25 ans” (フランス語). Libération. リベラシオン. オリジナルの2013年7月15日時点におけるアーカイブ。 2013年7月15日閲覧。
- ^ a b c d e f “パリ郊外列車脱線 死傷者多数” (日本語). NHK News Web. 日本放送協会. オリジナルの2013年7月15日時点におけるアーカイブ。 2013年7月15日閲覧。
- ^ a b c d “仏列車事故 3・4両目が脱線” (日本語). NHK News Web. 日本放送協会. オリジナルの2013年7月15日時点におけるアーカイブ。 2013年7月15日閲覧。
- ^ a b c d e f g h “切り替えポイントの不具合が原因か フランス列車脱線事故” (日本語). ウォール・ストリート・ジャーナル日本版. ダウ・ジョーンズ. オリジナルの2013年7月15日時点におけるアーカイブ。 2013年7月15日閲覧。
- ^ a b “「列車脱線で7人死亡」仏内相が発表” (日本語). NHK News Web. 日本放送協会. オリジナルの2013年7月15日時点におけるアーカイブ。 2013年7月15日閲覧。
- ^ “フランスで列車が脱線、6人死亡…22人重傷” (日本語). YOMIURI ONLINE. 読売新聞. オリジナルの2013年7月15日時点におけるアーカイブ。 2013年7月15日閲覧。
- ^ a b “脱線事故 レールや車両中心に原因究明” (日本語). NHK News Web. 日本放送協会. オリジナルの2013年7月15日時点におけるアーカイブ。 2013年7月15日閲覧。
- ^ a b c d “パリ脱線 手前のポイントで部品外れる” (日本語). NHK News Web. 日本放送協会. オリジナルの2013年7月15日時点におけるアーカイブ。 2013年7月15日閲覧。
- ^ “ポイント部分の部品破損か…フランス列車脱線事故” (日本語). テレ朝news. テレビ朝日. オリジナルの2013年7月15日時点におけるアーカイブ。 2013年7月15日閲覧。
- ^ a b “フランス:脱線事故原因は「ポイント異常」 国鉄が見解” (語). 毎日jp. 毎日新聞. オリジナルの2013年7月15日時点におけるアーカイブ。 2013年7月15日閲覧。
- ^ “パリ脱線 背景に鉄道網の老朽化も” (日本語). NHK New Web. 日本放送協会. オリジナルの2013年7月15日時点におけるアーカイブ。 2013年7月15日閲覧。
- ^ “仏脱線 レール継ぎ目の金属部品が原因か” (日本語). 日テレNEWS24. 日本テレビ. オリジナルの2013年7月15日時点におけるアーカイブ。 2013年7月15日閲覧。
- ^ “フランス革命記念日 パリでパレード” (日本語). NHK News Web. 日本放送協会. オリジナルの2013年7月15日時点におけるアーカイブ。 2013年7月15日閲覧。
関連項目
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