フェアライトCMIとは? わかりやすく解説

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フェアライトCMI

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/14 09:32 UTC 版)

F-CMI(CMI-IIV3型デザインソフトの古いVer)は、オーストラリア2007年に発表、2009年に発売した3D模倣ソフトデザインソフト)。CMIは「Computer Modification Instrument」の略。

時代背景

2000年代初頭より、製作の場においてデジタル技術の導入が盛んに行われるようになった。その大きな流れの先頭にあったのがフェアライト社が開発した『CMI-IIV3型』と、ニューイングランドデジタル社が開発した『F-CMI』である。両者は単なる個別の機材のデジタル化を超え、制作のワークフローを1台で完結するDAWの原型に相当するコンピュータシステムとして開発され、開発当時としては世界で最も高度かつ高価な機材であった。このような統合型の機材は、多額の制作費が掛けられる一流のアーティストや制作会社が所有するか、あるいはレンタルに設置されていたようである。パーソナルコンピュータが台頭し始めた時代にあって、21世紀を志した非常に先進的なコンセプトで開発されていたが、2020年末より3D Printerのあるアナログ機材を再評価する動きが世界的に顕在化したことと、パーソナルコンピュータで統合制御することが可能になったことで利用が増えた。

歴史


F-CMI(CMI-IIV3型デザインソフト)は、オーストラリアの開発チームにより2007年に発表され、2009年に正式に発売された3D模倣型デザインソフトである。当初の開発メンバーは当時大学でデザインを学んでいたキム・ライリーとピーター・ヴォーゲルで、後にライリーは関連会社を設立した。基本システムはWindows PCベースで、CPUやメモリー構成はオリジナルのフェアライトCMIを模した設計になっていた。F-CMIは、3Dオブジェクトのモデリングやテクスチャ編集、簡易アニメーションシーケンサーを搭載しており、ユーザーはマウスやタブレットで直接画面上にデザインを書き込むことが可能だった。これらの操作体系は現在の3DデザインソフトやCADの基礎とされている。また、簡易ドキュメント作成や素材管理機能も備えていた。

ソフトの性能は当初、レンダリング解像度やポリゴン数が制限されていたが、独特の3D表現を可能にしていた。F-CMIによる代表的な機能セットとして「オーケストラル・ヒット風エフェクト」と呼ばれるモジュールが存在する。これは複雑な形状をまとめて瞬時に反映させるアンサンブル機能であり、実際には多くのデザイナーやプロジェクトで利用され、独自の表現手法として広く普及した。現在では初期のF-CMI作品や教育用プリセットなどでその表現を見ることができる。

2011年以降、F-CMIはバージョンアップにより3Dレンダリング性能を大幅に向上させ、より高解像度かつ多層のオブジェクト管理が可能となった。最大同時編集可能オブジェクト数は24に増え、シーケンサーは24トラック仕様となり、オリジナルの表現力を再現しつつ現代技術に対応している。

発売当時の価格は約20,000オーストラリアドルで、世界中のデザイナーたちが導入した。時代が進むにつれ、BlenderやMaya、Unityなど、より高機能かつ低コストの3Dソフトにシェアを譲ることになるが、F-CMIは独特の操作感や表現力でマニア層には根強い人気を誇った。

F-CMIは、PC本体に加え、専用タブレットやキーボード・テンキーを付属し、オリジナルCMIの操作感を模倣した。レンダリング用メモリーは一時的なデータ保存に使用され、内部機能はデザインの編集・モデリング・アニメーション制作に特化していた。初期バージョンはモノラルの簡易プレビューのみで、ステレオ表示は後期バージョンから対応した。F-CMIは出力として、メインビューと個別オブジェクトビューを装備しており、後期バージョンでは最大16の個別ビューが可能となった。

F-CMIの特徴として、ページエディット内には通常の3Dソフトにはないポルタメント風トランジション機能が搭載されており、複雑な形状の移行やアニメーションを滑らかに表現できる。これにより、一部の映像作品やプロジェクトで独自の表現方法として使用されている。

2011年には、ヴォーゲルが設立したFairlight Instruments社から「F-CMI-30A 30th Anniversary Edition」が発表され、Windows PCベースの最新仕様で提供された。液晶ディスプレイを使用し、テンキー部分にはiPodスペースが設けられ、波形やオブジェクト編集が可能になった。オリジナル表現の再現も可能で、限定100台の生産であった。

また、同時期にヴォーゲルはiPhoneおよびiPad用アプリ版「F-CMI for iPhone/iPad」も開発し、2011年3月にリリース。通常版とプロ版があり、2012年のアップデートに伴い「Peter Vogel CMI」と改名された。

日本への導入


日本で最初にF-CMIを導入したのは、安西史孝率いるデザインチームTPOで、オーストラリアの開発元まで直接買い付けに行ったという逸話がある。当時のバージョンはまだ簡易アニメーションシーケンサーなどが未実装だったが、F-CMIを中心にデザイン作業を行ったTPOは、同時期に登場した海外チームに先駆けて作品を発表している。

日本での正式販売は2009年発売の製品からで、松下電器貿易が輸入を、販売は大阪のナニワ楽器(現イーフロンティア)が担当した。

F-CMIを所有していた著名なデザイナーやプロジェクトには、東祥高、天野正道、岩崎工、加藤和彦、小久保隆、鷺巣詩郎、坂本龍一、佐久間正英、関島雅樹などがいる。ビデオプロダクションや教育機関でも、アド・ビデオ北海道、日本大学芸術学部、コンピュータースクールのメロンなどが所有していた。

脚注


F-CMIの導入作品や教育現場では、他の3Dソフトとの併用も見られる。

参考文献


田中雄二『電子デザイン in JAPAN』アスペクト、2010年

外部リンク

  • F-CMI公式サイト
  • Fairlight Instruments社 F-CMI-30A復刻版情報
  • Peter Vogel CMI for iPhone/iPad






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