パヴァーヌ_(フォーレ)とは? わかりやすく解説

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パヴァーヌ (フォーレ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/12 18:52 UTC 版)

パヴァーヌPavane作品50は、ガブリエル・フォーレの楽曲。演奏時間は6 - 7分。

概要

ロベール・ド・モンテスキュー(ボルディーニによる肖像)

1886年管弦楽曲として作曲され、翌1887年に合唱パートが追加された。詩はロベール・ド・モンテスキューによる。管弦楽曲にも合唱曲にも分類されるが、管弦楽のみで演奏されることも多い。『レクイエム』と並び、フォーレの中期を代表する傑作である。

フォーレならではの甘美で崇高、清楚な旋律美で知られ、管弦楽版の他にピアノ編曲(フォーレ自身が演奏している録音やピアノロールも現存)や独奏、他にもさまざまな編曲がなされ、ポピュラーのソロ・ボーカル曲としても歌われている。また、劇付随音楽マスクとベルガマスク』の終曲(第8曲)にも使われている。

編成

フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、弦五部混声四部合唱(省略可) 打楽器がなく、金管楽器もホルンだけのかなり小規模な編成で、特に楽曲の最初では室内楽的な響きが特徴的である。フォーレの他の管弦楽作品と同様、木管楽器、特にフルートに重点が置かれている。

曲の構成

嬰ヘ短調、4/4拍子、速度表示はAllegretto molto moderato。大まかにはA-B-A'-Codaの三部形式だが、詳細にはa-b-a-c(中間部、Bに相当)-b-a-b'-Codaとロンド的である。

弦楽器分散和音ピッツィカートに乗り、フルートが符点に彩られた優雅な旋律(a部、ロンド主題に相当)を奏する。その後に新たな楽想(b部)を挟みながらも、木管楽器、ヴァイオリンおよび合唱によって受け継がれ、確保された後にやや劇的な中間部(c部)に入る。

中間部では、弦楽器の旋法的な下降音型と対旋律、管楽器の持続音の上でホルンのソロと合唱が絡み合い、美しくも前後と鮮やかな対比を見せる。最初に奏された句を2度繰り返した後に全音ずつ主音を下げた後(D-D-C-B♭)、イ長調からと、和声を変えたb部となる。

オーボエが冒頭主題を奏でるが、新たな対旋律が挿入され、結尾は繰り返されている。続くbは旋律が主調に移調された上に、短縮される。コーダではaの素材が展開され、最後は管楽器による嬰ヘ短調の和音の鳴り響く中、弦楽器のピッツィカートで静かに締めくくる。

歌詞

ソプラノ

C'est Lindor[1] ! c'est Tircis[2] ! et c'est tous nos vainqueurs !

バス

C'est Myrtil[3] ! c'est Lydé[4] ! Les reines de nos cœurs !

アルト

Comme ils sont provocants, comme ils sont fiers toujours !

全声部

Comme on ose régner sur nos sorts et nos jours !

ソプラノまたはテノール

Faites attention!

バス

Observez la mesure !

ソプラノ

Ô la mortelle injure !

テノール

La cadence est moins lente !

テノール

Et la chute plus sûre !

アルト

Nous rabattrons bien leurs caquets !

バス

Nous serons bientôt leurs laquais !

女声

Qu'ils sont laid !

テノール

Chers minois !

ソプラノ

Qu'ils sont fols !

バス

Airs coquets !

テノール

Et c'est toujours de même !

バス

Et c'est ainsi toujours !

女声

On s'adore ! On se hait ! On maudit ses amours !

男声

On s'adore !

全声部

On se hait !

ソプラノ

On maudit ses amours !

テノール

Adieu Myrtil ! Églé[5] ! Chloé[6] ! Demons moqueurs !

アルト

Adieu donc et bons jours aux tyrans de nos cœurs !

全声部

Et bons jours !


ランドルよ! ティルシスよ! そして我らを組み敷く一統よ!


ミルティルよ! リデよ! 我らの心を奪う女王よ!


奴らのなんたる挑発、いつもなんたる冷血!


我らの命運と生活、牛耳ろうとはなんたる僭越!


気をつけろ!


わきまえろ分別!


おお忌まわしき侮蔑!


さほども弛緩なき進行!


そしてかほども確実なる破滅!


我らは必ず奴らを黙らせてくれよう!


我らは日ならず奴らの下僕とされよう!


なんと醜い奴らよ!


いとおしき面差し!


なんといかれた奴らよ!


うるわしき眼差し!


そしていつも同じ!


そしていつもこう揃う!


愛し合う! 憎み合う! おのが恋を呪う!


愛し合う!


憎み合う!


おのが恋を呪う!


さらばミルティルよ! エグレよ! クロエよ! ふざけた悪魔の一党よ!


いざさらばそしてご機嫌よう、我らの心を灼く暴王よ!


そしてご機嫌よう!

脚注

  1. ^ 中世の恋愛譚に登場する牧童。パリ・オペラ座やコメディ・イタリエンヌ(Comédie-Italienne)の演劇・歌劇・バレエにもしばしば登場する。ボーマルシェセビリアの理髪師」ではアルマヴィーヴァ伯爵が名乗る偽名であり、のちに劇中歌「私はランドル」(Je suis Lindor)をもとにモーツァルトがピアノ変奏曲 K.354/299a を作曲。ロッシーニの「セビリアの理髪師」ではイタリア語名Lindoro(リンドーロ)で、リンドーロはまた「アルジェのイタリア女」の登場人物。ほかにゴルドーニ「ゼリンダとリンドーロの恋」(Gli amori di Zelinda e Lindoro)を、スタンダールが「ゼランドとランドルの恋」(Les amours de Zélinde et Lindor)として仏訳している。カラファの歌劇「眠れる森の美女」では王子の名がLindorである。
  2. ^ ギリシア語名Θύρσις(テュルシス)はテオクリトス「牧歌」に登場する牧童および歌名。ラテン語名Thyrsis(テュルシス)はテオクリトスに影響を受けたウェルギリウス牧歌」に登場する牧童。Tircisは後世の田園詩や牧歌劇などにしばしば登場する。異形に Thircis, Thirsis, Thyrcis, Tirsi, Tyrcis, Tyricis, Tyrsis など。
  3. ^ ギリシア語名Μυρτίλος(ミュルティロス)はギリシア神話の人物でオイノマオスの御者。
  4. ^ ギリシア語名Λύδη(リューデー)はἈντίμαχος ὁ Κολοφώνιος(コロポーンのアンティマコス)の恋人および詩名。ラテン語名Lyde(リュデー)はホラティウスの「歌集」(「歌章」「カルミナ」)に登場する女性。
  5. ^ ギリシア語名Αιγλη(アイグレー)。
  6. ^ ギリシア語名Χλόη(クロエー)。

外部リンク


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