コロコロ_(伝説の生物)とは? わかりやすく解説

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コロコロ (伝説の生物)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/01 00:02 UTC 版)

コロコロの写生図。アラウカナ族(マプチェ族)の俗信の解説に伴う挿画[1]

コロコロColo Colo, Colocolo)はマプチェ族の俗信における、ネズミのような害獣。

巣から人家に忍び込み、睡眠者の血を吸ったり、唾液を吸ったり抜き取ったり、食器道具を舐めたりし、衰弱状態や結核などの病気を引き起こすといわれる。

「オンドリの卵」から孵化するともいわれれ、幼生はヘビや地下に潜るトカゲのようであるが、やがて変態して羽で覆われたネズミのような姿になるという。

ヤマネコの種も同じ名で呼ばれるが、その実在動物と伝説との関連性も仮説される。

伝承

コロコロの伝承については、人類学者・民俗学者のトマス・ゲヴァラ英語版がアラウカナ族(マプチェ族)の原住民より採取したフォークロアがあり[2]、言語学者・民俗学者フリオ・ビクーニャ・シフエンテススペイン語版がこれに加え、都市人口の現地調査で得た地域別の伝承が発表されている[3]

マプチェ族の伝承によれば、コロコロとは"血に飢えた獣"[注 1]であり、ニワトリの卵(大衆が信じるところでは雄鶏の卵[注 2])に生を享け、焼きつける太陽の熱が充分ならば、ヘビやトカゲの姿で孵化する。 だがやがてのち、羽に覆われたクマネズミのような姿に変態する[注 3][2]。疑わしいとされるのは、雌鶏が産んだにしては小さすぎるなど、発達障害の兆しがある卵で、先住民たちは雄鶏が産んだ卵だなどと決めつける[5]

コロコロは人家の近くの洞窟をねぐらにし、機を窺って家の中に侵入してきて、住人の唾液を餌とし、家族が食事の盛り付けに使用済みの食器道具(杓子など[注 4])を舐める。このため、一家は肺結核を発病し[10]やがて死に陥るとされる。なんらかの類感呪術[注 5]の干渉のせいにされていると、伝承採集者である人類学者ゲヴァラ英語版は述べている[2]。 「オンドリの卵」と怪しい卵が見つかると、集落民は燃やしてしまう[2]

都市部の伝説

ビクーニャ・シフエンテススペイン語版は、チリの首都サンティアゴを含む北沿岸から中部(バルパライソ市からコンセプシオン市)の地帯でおこなった、コロコロの伝承についての現地調査のデータを発表している[注 6]

北方では、コロコロは人間の寝入ったときを狙って血を吸うとされる(伝承"a"、ラ・セレナ市)[注 7][3]

首都州では、コロコロは、人の住居近くに巣食い、やってきては(同じ人間から)唾液を飲みにくる。被害者は徐々に衰弱がすすみ、容姿が損なわれ、害獣を退治しないと被害者は死んでしまう(伝承"b"、サンティアゴ市、タラガンテスペイン語版市)。またはコロコロは大きさがイエミソサザイ[注 8]ほどの黒い鳥で、唾液を飲みにこられると即死する危険があるという(伝承"c"、マリョコ英語版)。

首都南[注 9]、チリのちょうど中央部では[注 10]、コロコロをコウモリに似た小鳥だとし、唾液を吸って人を殺すという異聞(伝説"d"、ケヤ英語版村、 カウケネス英語版市内)もあれば、小さなネズミで、唾液を飲んだり、食べ残しを食い漁られると人間は致死性の病にかかるともいう(伝説"e"、コイウエコ英語版・デ・チヤン英語版)。あるいは目には見えないが邪悪な動物で、その鳴き声が「コロ=コロ」と聞こえるのだという(伝承 "f"、コエレム英語版[3]

この最後の伝承 "f" では、邪悪な不可視の動物が唾液を飲み高熱病・結核で人を殺すという部分までが、その他多くの町で異口同音で語られたコロコロの典型である。「コロ=コロ」の鳴き声の部分がともなうものも、幾つかある[注 11][3]

中央よりもだいぶ南部のジャンキウエ県ヴァルディヴィア県英語版[注 12]でも、コロコロは(さして変わらず)、発育不足の「オンドリの卵」から生まれた地潜りのトカゲで、唾液を摂取して人間を殺すという伝承がみられた[11]

実在動物の同定

コロコロ」という俗名で知られるのが、ネコ科オセロット属の別名パンパスキャットで[12]、語学者ロドルフォ・レンススペイン語版の辞典(1904年)にも「ヤマネコの一種」と記載される)[14]アグスティン・エドワーズ・マック=クルーア英語版によれば、コロコロとは、すでに絶滅種なヤマネコの一種が元となり、伝説で地潜りするトカゲとされたものだと主張する[15]。パンパスキャットは、多種との雑種化も知られる[12]

チロエオポッサム[注 13](Dromiciops 属1種のみ単型)も「コロコロ」の俗名があるが、 これは鳴き声の音写から来た名前だろうとされる[16]

注釈

  1. ^ "animal sanguinario"
  2. ^ "que la creencia popular atribuye al gallo"
  3. ^ "metamorfosea"
  4. ^ コロコロに関して具体的な道具の種類が示されないが、マプチェ職人は木製も銀製も食器道具を作る[6]。木製レードル(スペイン語: cucharón)はマプチェ語で「ルフン」[仮カナ表記][7]「ルフウエ」と称す[8]
  5. ^ "mágica simpática"
  6. ^ 他の幻獣の場合は、ビクーニャは自身の調査以外にも、他の筆者の解説の抜き書きするが、コロコロについてはゲヴァラの原住民調査とレンツ辞書以外はそれができないでいる。
  7. ^ ラ・セレナは首都サンティアゴから北向き約400キロメートル (250 mi) の距離にある。
  8. ^ "chercán"
  9. ^ 大都市としては、首都から南方に451キロメートル (280 mi)離れた臨海のコンセプシオン市(上述)が目印だが、以下の町はより内陸
  10. ^ 出される地名はマウレ州カウケネス、ニュブレ州コイウエコとコエレムは、首都からそれぞれ350, 360, 500キロメートル (220, 220, 310 mi)南方にある。
  11. ^ ビクーニャが個々では記載しなかった例が残り 27 あり、うち 5 例が " f)"と同一で、22例が鳴き声以外は同じだった。マウスほどの大きさだとか、目測の大きさを語る者もいた[3]
  12. ^ 首都からは800km-1000km距離。
  13. ^ スペイン語ではmonito de monte、マプチェ語ではkongoy kongoyという。

出典

  1. ^ Guevara (1908), Fig. 42.4 Ngúrúvilu on p. 323
  2. ^ a b c d Guevara, Tomás (1908). “Capitulo XIV. Concepciones míticas”. Psicolojía del pueblo araucano. Historia de la civilización de Araucanía. Santiago de Chile: Impr. Cervantes. p. 324, fig. 42. https://books.google.com/books?id=sbtoAAAAMAAJ&pg=PA324 
  3. ^ a b c d e f g Vicuña Cifuentes, Julio (1915). “VIII. El ColoColo” (スペイン語). Mitos y supersticiones recogidos de la tradición oral chilena. Santiago de Chile: Imprenta Universitaria. pp. 35–36. https://books.google.com/books?id=EdsOBP___ssC&pg=RA1-PA35 
  4. ^ Guevara, Tomás (January–June 1899). “Historia de la Civilizacion de Aruncanía (continuation Capítulo VIII)”. Anales de la Universidad de Chile 103: 1033. https://books.google.com/books?id=_IbNAAAAMAAJ&pg=PA1033&q=colo. 
  5. ^ Guevara Historia I: 230 apud Vicuña;[3] (=Guevara (1899) Ch. VIII[4]
  6. ^ Guervara (1908), p. 103.
  7. ^ Augusta, Félix José de [in スペイン語] (1916). "rəfun, rəfün". Diccionario araucano-español y español-araucano: Araucano-español (スペイン語). Santiago de Chile: Imprenta universitaria. p. 198.
  8. ^ Catrileo, María [in スペイン語] (2017). "rüfüwe". Diccionario Lingüístico Etnográfico de la Lengua Mapuche (スペイン語). Valdivia, Chile: Ediciones Universidad Austral de Chile. p. 18. ISBN 9789563900279
  9. ^ Moesbach, Ernesto Wilhelm de [in スペイン語] (1976) [1944]. "Colo colo". Voz de Arauco: explicación de los nombres indígenas de Chile (スペイン語). Santiago de Chile: Impr. Cervantes. p. 154.
  10. ^ ゲバラはスペイン語で "consunción" 「結核」、メスバッハはスペイン語で tisis 「結核」と表現[9]
  11. ^ Gotschlich, Bernardo (December 1913). “Llanquihue i Valdivia”. Boletín del Museo Nacional de Chile (Santiago: Imprenta Universitaria) 6 (1): 451. https://books.google.com/books?id=-5o1AQAAMAAJ&pg=PA451. 
  12. ^ a b Gittleman, John L.; Funk, Stephan M.; Macdonald, David et al., eds (2001). Carnivore Conservation. Cambridge University Press. p. 339–340. ISBN 9780521665377. https://books.google.com/books?id=v39RdyYUfRIC&pg=PA339 
  13. ^ Lenz, Rodolfo [in スペイン語] (1904). "201. Colocolo". Diccionario etimolójico de las voces chilenas derivadas de lenguas indijenas americanas (スペイン語). Santiago de Chile: Imprenta Cervantes. p. 202.
  14. ^ Lenz[13]、Vicuña 所引[3]
  15. ^ Edwards Mac-Clure, Agustín (1928). My Native Land: Panorama, Reminiscences, Writers and Folklore. London: Ernest Benn Limited. p. 174. https://books.google.com/books?id=JdAZAAAAYAAJ&q=colo-colo 
  16. ^ Cabrera & Yepes (1960) p. 46 apud Chicago Natural History Museum (1945) "Fam. Diprotodontidae". Fieldiana: Geology, p. 46

関連項目




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