ゲルファント=ナイマルクの定理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/10 02:16 UTC 版)
作用素環論において、ゲルファント=ナイマルクの定理(—のていり、英: Gelfand–Naimark theorem)は、C*環の基本構造定理である。単位的可換C*環があるコンパクト・ハウスドルフ空間上の連続な複素数値関数のなす関数環と等距離∗同型となることを主張する。1943年にロシアの数学者イズライル・ゲルファントとマルク・ナイマルクによって導かれた[1][2]。C*環の構造を分類する基本定理であるともに、位相群上の抽象調和解析や正規作用素のスペクトル理論に応用される。圏論的な観点では、局所コンパクト・ハウスドルフ空間のなす圏と可換なC*環のなす圏の反変同値を意味しており[3]、アレクサンドル・グロタンディークによるスキーム理論の形成にも影響を与えた。なお、可換とは限らない一般のC*環については、あるヒルベルト空間上の有界作用素がなすC*環と等距離∗同型となるが、この定理もゲルファント=ナイマルクの定理と呼ばれる。可換及び非可換なC*環における構造を示した二つのゲルファント=ナイマルクの定理は、アラン・コンヌによる非可換幾何の創設の動機付けの一つともなっている。
導入
C*環 A は有界作用素の有する性質を抽象化した複素数体 C 上の多元環であり、積 ab、和 a + b、複素数倍 λ の演算(a, b ∈ A, λ ∈ C)に加えて、対合と呼ばれる随伴作用に対応する作用 ∗ : a ↦ a* を持つ。さらに、A にはノルム || ⋅ || が付随し、ノルムから定まる一様位相についてバナッハ空間である。加えて A において、ノルムは劣乗法性 ||ab|| ≤ ||a||||b|| を満たすとともに、C*性と呼ばれる条件 ||a*a|| = ||a||2 を満たす。
可換なC*環の例としては、コンパクト・ハウスドルフ空間 X 上の連続な複素数値関数のなす集合 C(X) が挙げられる。C(X) に積を各点毎に f ⋅ g(t) = f(t) g(t) で、対合を複素共役
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