カーボン・ドラゴン (航空機)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > カーボン・ドラゴン (航空機)の意味・解説 

カーボン・ドラゴン (航空機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/30 04:45 UTC 版)

カーボン・ドラゴン
(Carbon Dragon)

カーボン・ドラゴン(Carbon Dragon)は、Jim Maupinによってアメリカで設計された高翼単座グライダーであり、ホームビルト機の図面として頒布されていた。図面頒布は終了している。[1][2][3]

設計及び開発

アメリカ連邦航空規則(14 CFR Federal Aviation Regulations)英語版第103部 "Ultralight Vehicles"英語版[注釈 1]では空虚重量155 lb (70 kg) 以下の無動力航空機をハンググライダーとして分類しており、カーボン・ドラゴンは、このアメリカ連邦航空規則第103部を利用することで、パイロット免許アメリカ連邦航空局による機体番号登録耐空証明不要で飛行することができるように意図された。カーボン・ドラゴンの標準的な空虚重量は145 lb (66 kg)であり、190 lb (86 kg)を積載したとき、全備重量335 lb (152 kg)となる。本機の開発の根底にある理念は、パイロット自身の足で発航(フットランチ)する機体のソアリング性能を、比較的低性能なグライダーと同じ領域まで向上させることだったと、設計者は語った。カーボン・ドラゴンは、概念上はVector 1 (航空機)英語版に類似させることを意図されていた。[1][2]

下記のMaupinによる説明の通り、当初の設計はより複雑な航空機とするつもりだったという。

当初の構想では、主翼内のローラーで巻き取る形式の布製フラップを備え、フラップの出し入れによって面積を100~140 平方フィート[注釈 2]に変化できる翼幅40フィート[注釈 3]の主翼となる予定だった。

計算と製図が進むにつれて、エルロンはもちろんのこと、ローラーを駆動するチェーンが必要になり、さらに主翼後流のスリップストリーム内に1,000ポンド[注釈 4]の力でフラップを引き出すための5つプーリーと2重のケーブルが必要になり…等々、どんどんと複雑になっていった。ある晩、ヘメットのモーテルでコーヒーを飲みながら、私の友人であり、指導者であり、助言者であり、コンサルタントだったIrv Culverは私にこう言ったんだ。

「Jim、君はこれを作り上げて、青春を費やしてでも全てを機能させるつもりなんだろう。それはどんどん重く、どんどん複雑になっていって、そして最後には君が作り上げた物、全ての抵抗と重量が災いして、全ての目的を果たせなくなってしまうだろう。いっそ、そんなものは全てを投げ捨てて、節約した重量と複雑さを全て翼幅を伸ばすことに注ぎ込んではどうだろう?もし君さえよければ、私が君が作ろうとしている装置の全ての空気抵抗を計算して、数字を出そうか。」

Irvが彼の言いたいことを証明するために「数字を出す」と提案してくるときは、大人しく引き下がるべきときなんだ。[2]

結果として、カーボン・ドラゴンは、翼幅13.4 m (44 ft)の主翼を持つ、より単純かつより軽量な最終形態へと再設計された。[2]

カーボン・ドラゴンは、軽量化のために主翼桁フランジ、操縦系統のロッド、フラッペロン及び楕円断面のテールブームに注意深く炭素繊維が使用されたことを除けば、基本的には典型的な木材とドープ塗装英語版された羽布英語版を用いたグライダーである。操縦系統のトルクチューブはアルミニウムパイプに炭素繊維を積層し、炭素繊維が硬化した後に、酸のプールに沈めてアルミニウムパイプを溶かして製作される。コクピットは密閉式で全体が覆われており、後により大柄なパイロットに合わせていくつかの改修が行われたが、当初の設計では腰部分の幅が43.2 cm (17 in)、肩部分の幅が63.5 cm (25 in)だった。機体の主な構造は、胴体の両側に1本ずつ配置された三角断面のトルクチューブで構成されている。主翼の翼型にはIvr Culver英語版がカーボン・ドラゴンのために設計したCulver SDが用いられ、翼幅全体に亘って30%翼弦長のフラッペロンが設けられている。このフラッペロンはフラップとしての舵角は-5度 ~ +15度であり、エルロンとしては差動比4:1で−4度 ~ +16度の舵角を持つ。フラッペロンは、サイドスティック式操縦桿と接続され、胴体内部に垂直に取り付けられた2本のプッシュロッドで動かされる。主桁より前方の主翼リブには6.35 mm (14 in)厚の5層のマホガニー合板が使用され、主桁から後方は1辺 7.94 mm (516 in)の正方形断面のスプルース材が使用されている。降着装置はコクピット底の扉に取り付けられた固定された1輪式となっている。この扉はパイロットがフットランチの際に機体を持ち上げることができるようになっている。この機体はフットランチの際にパイロットが転んだ場合も、パイロットの体が胴体後方の空間に納まり、機体の下敷きにならないよう設計されている。終局荷重倍数は±7.5、制限荷重倍数は±5.0である。[1][2][4]

カーボン・ドラゴンはフットランチ、飛行機曳航ウインチ曳航自動車曳航ゴム索発航ができるよう設計された。[1][2]

1988年10月、Maupinは、プロトタイプ機が体重54 - 95 kg (120 - 210 lb)の範囲の異なるパイロット10名によって飛行し、沈下率0.51 m/s (100 ft/min)を達成し、自動車曳航、飛行機曳航、ゴム索曳航によって発航したことを報告した。一方で、フットランチは行われなかった。1988年10月時点でMaupinはカーボン・ドラゴンの製作は2,000 USドルのコストと1000 ~ 1500時間の製作時間を要すると推定した。[2]

頒布されていた当時、図面は大きさ61 cm × 122 cm (2 ft × 4 ft)の23枚組で構成されており、150 USドルで売られていた。[2]

少なくとも1機のカーボン・ドラゴンは、同じ設計者により設計されたウィンドローズ英語版で使われたものに似たコクピットの天井部分に取り付ける形式の5角形のスポイラーを追加する改造を受けた。[1]

運用史

初期の試験飛行はカリフォルニア州テハチャピ英語版付近で610 m (2,000 ft) の曳航索を使用した自動車曳航により実施された。その中には夜間の収束帯上昇気流を利用した数回の45分間のソアリングをが含まれていた。設計者はプロトタイプ機の飛行の多くを彼自身で実施し、「飛ぶことが非常に楽しく、全ての出来事が非常にゆっくりと起こる」と語っている。[2]

1988年10月、Maupinは図面が70セット売れたことを公表した。[2]

定期的に開催されるハンディキャップなしのクロスカントリー競技会であるKansas Kowbell Klassic1994年大会でGary Osobaはカーボン・ドラゴンを操縦して飛行距離290 km (180 mi)を記録し、優勝した。[5]さらに Gary Osobaは1995年7月にマイクロライト航空機カテゴリー三旋点距離種目のアメリカ記録及び世界記録のため382.12 km (237.440 mi)の飛行を行い[6]、続けて1995年8月には往復コース距離種目で185.91 km (115.52 mi)[7]、1995年9月には100km三角コース速度、三角コース距離種目でそれぞれ39.40 km/h (24.48 mph)[8]、214.08 km (133.02 mi)[9] のアメリカ記録及び世界記録を樹立した。 [10]

前述の通り、カーボン・ドラゴンはアメリカ連邦航空規則第103部に適合するハンググライダーと見なされ、アメリカ連邦航空局の機体番号登録を必要としないことから、正確な完成機数は把握できていない。しかしSoaring Directoryは4機が飛行したことがあると報告している。[1][11]

派生型

製作中のSteve Arndtのマジック・ドラゴン
カーボン・ドラゴン
初期型[1]
マジック・ドラゴン
Steve Arndtにより開発された改良型

性能諸元(カーボン・ドラゴン)

出典: Sailplane Directory and Jim Maupin[1][2]

諸元

  • 乗員: 1
  • 全長: 6.1 m (20.0 ft)
  • 全高:
  • 翼幅: 13.41 m(44.0 ft)
  • 翼面積: 14.246 m2 (153.34 ft2
  • 翼型: Culver SD
  • 空虚重量: 65.8 kg (145 lb)
  • 運用時重量: 152.0 kg (335 lb)
  • アスペクト比: 12.62:1

性能

  • 失速速度: 35.2 km/h (19 kt/21.9 mph)
  • 翼面荷重: 10.64 kg/m2 (2.18 lb/ft2
  • 滑空比: 25:1 (56 km/h (35 mph))
  • 荷重倍数: ± 7.5(終局)、± 5.0(制限)
  • 沈下率: 0.51 m/s (100 ft/min)


使用されている単位の解説はウィキプロジェクト 航空/物理単位をご覧ください。

関連事項

注釈

  1. ^ 日本の航空法における「超軽量動力機」とは要件が異なり、取り扱う機体の範囲、規制内容が一致しない。
  2. ^ 9.3–13.4 m2
  3. ^ 12.2 m
  4. ^ 453.6 kgf

参考文献

  1. ^ a b c d e f g h Activate Media (2006年). “Carbon Dragon Maupin”. 2012年8月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年7月7日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k Maupin, Jim: Carbon Dragon, sales brochure, October 1988
  3. ^ Bertrand, Noel; Rene Coulon; et al: World Directory of Leisure Aviation 2003–04, p. 57. Pagefast Ltd, Lancaster OK, 2003. ISSN 1368-485X
  4. ^ Lednicer, David (2010年). “The Incomplete Guide to Airfoil Usage”. 2010年4月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年7月7日閲覧。
  5. ^ McNay, Curt (July 1994). “Sunflower Seeds”. Variometer: 4. 
  6. ^ Fédération Aéronautique Internationale (2017年10月10日). “William G. Osoba (USA) (5515) World Air Sports Federation”. 2022年8月8日閲覧。
  7. ^ Fédération Aéronautique Internationale (2017年10月10日). “William G. Osoba (USA) (5518) World Air Sports Federation”. 2022年8月8日閲覧。
  8. ^ Fédération Aéronautique Internationale (2017年10月10日). “William G. Osoba (USA) (5516) World Air Sports Federation”. 2022年8月8日閲覧。
  9. ^ Fédération Aéronautique Internationale (2017年10月10日). “William G. Osoba (USA) (5517) World Air Sports Federation”. 2022年8月8日閲覧。
  10. ^ Ruprecht, Judy (October 1998). “Badges & Records”. Soaring 62 (10): 41. 
  11. ^ Federal Aviation Administration (2011年7月). “Make / Model Inquiry Results”. 2011年7月7日閲覧。

外部リンク




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  カーボン・ドラゴン (航空機)のページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「カーボン・ドラゴン (航空機)」の関連用語

1
18% |||||

2
8% |||||

カーボン・ドラゴン (航空機)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



カーボン・ドラゴン (航空機)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのカーボン・ドラゴン (航空機) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS