適応障害 適応障害の概要

適応障害

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/30 14:15 UTC 版)

Adjustment disorder (situational depression)
分類および外部参照情報
診療科・
学術分野
精神医学, 臨床心理学
ICD-10 F43.2
ICD-9-CM 309
DiseasesDB 33765
MedlinePlus 000932
eMedicine med/3348
MeSH D000275
GeneReviews
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ストレスへの正常な反応は、著しい苦痛を呈さない[1]。また死別は適応障害ではない[1]。他の精神障害に当てはまるときはそれが優先される[1]うつ病との判別がつきにくい場合がある[2]。また適応障害が、正当な臨床単位であることを確立するデータは不足している[3]。ストレスが原因で発生する身体的な異常は心身症である。

適応障害は自然軽快することも多い[3][1]。治療には心理療法が推奨され、薬物療法は証拠の不足により避けるべきである[3]。治療法については、「適応障害#治療」を参照。

定義

精神医学的障害の一種である。

症状

  • ストレスが原因で、情緒的な障害が発生し、それは抑うつ気分や不安などを伴うことが多い[4]。また青年期や小児期では、社会規範を犯すなど素行の問題が現れることがある[4]
  • 社会生活や職業・学業などにも支障をきたし、生活機能の低下や、業績・学力の低下、場合によっては就業・就学そのものが不可能になる場合がある。
  • 行動的な障害を伴う患者は、ストレスが原因で普段とはかけ離れた著しい行動に出ることがある。それらの行動の具体例としては、年相応の規則をやぶり、怠学、喧嘩、法律に背くことなどが挙げられる[4]。社会的ルールを無視するような行為、破壊や暴走、また暴飲などもある[5]
  • 軽度の行動的な障害としては、電話やメール、手紙に応答せず、人との接触を避けて引きこもることも挙げられる。

診断基準

適応障害は、DSM-IV[4]ICD-10でも若干診断基準が異なる。

  • はっきりと確認できる大きなストレス、及び継続的、反復的にかかり続けるストレスが発症の原因であり、そのストレスを受けてから3か月以内(ICD10では1か月以内)に情緒面、行動面で症状が発生すること。
  • ストレス因子と接した時に起きる予測を超えた苦痛の反応もしくは、社会生活、職業・学業的機能において著しい障害が起きること。
  • 不安障害や気分障害、うつ病など他の精神障害が原因ではなく、ストレスが死別反応などによるものではないこと。
  • ストレス因子が排除された場合、半年以内に症状がなくなること。
  • ストレス因子がなくなった後も半年以上症状が続く場合は、他のストレス障害(PTSDや分類不能の重度のストレス障害)や特定不能の不安障害などを考慮する必要がある。ただし、ICD10の場合は、遷延性抑うつ反応の場合は最長2年間持続するとされている。
  • また、症状の持続時間が6か月以内のものを急性、6か月以上のものを慢性と呼ぶ。慢性の場合は継続的なストレスが続いている場合に適用される(たとえば、周りに犯罪が多発する場所に住んでいる。裁判に巻き込まれるなど)。

またDSMの下位の診断コードの分類として、抑うつ気分を伴う、不安を伴う、素行の障害を伴う、特定不能の適応障害がある[4]


  1. ^ a b c d e f g h アレン・フランセス 『精神疾患診断のエッセンス―DSM-5の上手な使い方』金剛出版、2014年3月、117-118頁。ISBN 978-4772413527 
  2. ^ a b 日本うつ病学会; 気分障害のガイドライン作成委員会 (2012-07-26) (pdf). 日本うつ病学会治療ガイドライン (Report) (2012 Ver.1 ed.). p. 3. http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/mood_disorder/img/120726.pdf. 
  3. ^ a b c d e f g h i j Adjustment Disorder: epidemiology, diagnosis and treatment 2009.
  4. ^ a b c d e DSM-IV-TR邦訳書 2004, §適応障害.
  5. ^ 齋藤英二監修『心の病気』p.70.
  6. ^ a b アメリカ精神医学会 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』日本精神神経学会日本語版用語監修・高橋三郎・大野裕監訳・染矢俊幸・神庭重信・尾崎紀夫・三村將・村井俊哉訳、医学書院、2014年6月30日、20、161、801頁。ISBN 978-4260019071 
  7. ^ a b c DSM-IV-TR邦訳書 2004, §適応障害-鑑別診断.
  8. ^ 大野裕 『精神医療・診断の手引き―DSM-IIIはなぜ作られ、DSM-5はなぜ批判されたか』金剛出版、2014年、39-40頁。ISBN 978-4772413862 
  9. ^ ICD-10 : F43, 世界保健機関, (2009), http://apps.who.int/classifications/icd10/browse/2015/en#/F43 
  10. ^ アローズ, D. L., & キャレッセ, M. A. 大前泰彦・清水佳苗(訳) (1999). 適応障害の解決――解決志向ブリーフセラピーによるアプローチ―― 金剛出版, 79-80・84・86頁.
  11. ^ 伊藤 絵美 (2011). 適応障害の心理臨床 原田誠一(編) 適応障害 (pp.122-123) 日本出版社
  12. ^ a b 高井祐子、木内千暁 (2010). 認知療法を通して認知過程および行動変容の相互作用が認められた適応障害例. 女性心身医学 2011年 15巻 3号 p.321-326, doi:10.18977/jspog.15.3_321
  13. ^ a b 森下克也、高橋歩美 (2011). 漢方薬と認知療法の併用により改善した適応障害の1例. 心身医学, 2011年 51巻 9号 p.831-837, doi:10.15064/jjpm.51.9_831
  14. ^ アローズ, D. L., & キャレッセ, M. A. 大前泰彦、清水佳苗(訳) (1999). 適応障害の解決 -解決志向ブリーフセラピーによるアプローチ- 金剛出版, 86-87, 89頁.
  15. ^ 伊藤絵美 (2011). 適応障害の心理臨床 原田誠一(編) 適応障害 (pp.122-126) 日本出版社
  16. ^ 谷口弘一、福岡欣治 (2006). 対人関係と適応の心理学――ストレス対処の理論と実践―― 北大路書房, 83-95頁.
  17. ^ a b 阿部麻衣、遠藤由香、野田智子 ほか(2014). 認知行動療法が奏功した抑うつを伴う適応障害の一例(一般演題,第74回日本心身医学会東北地方会演題抄録). 心身医学, 2014年 54巻 12号 p.1149-, doi:10.15064/jjpm.54.12_1149_1
  18. ^ 伊藤絵美 (2011). 適応障害の心理臨床 原田誠一(編) 適応障害 (p.122) 日本出版社
  19. ^ 伊藤絵美 (2011). 適応障害の心理臨床 原田誠一(編) 適応障害 (p.127) 日本出版社


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