舗装 各国の実情

舗装

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/29 22:52 UTC 版)

各国の実情

現代の舗装道路は、モータリゼーションに対応したものである。かつて道路は歩行者あるいは軽車両が通行するだけの機能があれば十分とされており、故に路面の耐久性はさほど重視されてはいなかった。しかし、世界的なモータリゼーションの拡大に伴い、凹凸の激しい未舗装道路は、自動車通行に向かないこともあって、道路の機能として車両の走行性をより重要視する傾向に向かっていることから、道路における未舗装道路の割合は世界的に減少傾向となっている。

このため開発途上国でも、都市間や国を結ぶ幹線道路や、都市内部の道路を中心に舗装されている場合が多い。ただし、舗装した道路は維持するための多額の費用が必要であり、後発開発途上国においては財源を捻出できず修繕が十分でない場合も多い。修繕が行われないため路面状態が悪くなり凹凸が激しいことから通行中のパンクなどは後を絶たない。

一方では、近年になってアメリカ合衆国の複数の州では経済状態の悪化による税収不足から、損傷した舗装道路を再舗装せず砂利道に戻すことが行なわれており、ミシガン州では州内20以上の郡において過去3年で約50マイルが未舗装道路へと戻っている[47]。これは1マイルあたりの再舗装には10万ドル以上を要するのに対して、砂利道に戻すのには約1万ドルしかかからないためだという。

日本

日本では、耐久年数20年前後を目安とした本舗装と、表層の厚さが3–4 cm簡易舗装の二つに区分されており、本舗装は主に国道や都市部の幹線道路に、また簡易舗装は末端の生活道路で建設されている[48]

日本における道路の舗装率は国道、都道府県道で簡易舗装を含めると約97 %であるが、すべての道路の割合として見た場合の舗装率は約80%となっている[49]。また都道府県道や市町村道においては簡易舗装の割合が多い[50]。また道路として快適な走行性が求められないような作業用道路(林道や農道など)においては公道、私道においてもコスト面から未舗装としているところも多い。

日本国内の舗装率には地域差があり、全体的にみて東日本よりも西日本の方が舗装率が高いというデータ結果も出ている[51]。国土交通省が発行する道路統計年報2012年によれば、簡易舗装も含めた舗装率90 %以上の都道府県は、東日本が神奈川県だけであるのに対して、西日本は滋賀県・大阪府・鳥取県・広島県・山口県・香川県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県の10府県におよび、特に佐賀県では96.5 %と日本一の舗装率を誇る[51]。また反対に80 %未満の都道府県は、東日本が北海道・岩手県・秋田県・茨城県など11道県あるのに対して、西日本には該当する府県はない[51]

日本での法規

国や県、市町村などの公共機関が発注する公共工事の場合は、工事を進める上で使用する材料の基準試験、品質管理や出来形管理の基準がそれぞれ定められており、施工業者はこれに従い工事を進めていく必要がある。


注釈

  1. ^ になってしまうこと。
  2. ^ あるいは「ジョン・ラウダン・マカダム」「ジョン・ロウドン・マカダム」とも。
  3. ^ 国土交通省によれば、日本の約95 %の道路がアスファルト舗装である。
  4. ^ ただし、一部寒冷地においては、下層路盤の下に凍上抑制層の5層となる
  5. ^ 2012年に一部開通予定の新東名高速道路では、開通区間約160 kmのうち、70%弱にあたる110 kmがコンクリート舗装となる。

出典

  1. ^ a b c d e f 峯岸邦夫 2018, p. 80.
  2. ^ a b 宮川豊章・岡本亨久・熊野知司 2015, p. 131.
  3. ^ a b c 峯岸邦夫 2018, p. 82.
  4. ^ a b c d 浅井建爾 2015, p. 25.
  5. ^ a b c d e f g h 峯岸邦夫 2018, p. 84.
  6. ^ ロム・インターナショナル(編) 2005, p. 159.
  7. ^ a b c d 塚本敏行「アッピア街道」 [1]
  8. ^ a b c d ロム・インターナショナル(編) 2005, p. 160.
  9. ^ a b c d e f g h 峯岸邦夫 2018, pp. 36–37.
  10. ^ a b 峯岸邦夫 2018, p. 85.
  11. ^ a b c d e f g h 峯岸邦夫 2018, p. 86.
  12. ^ a b c ロム・インターナショナル(編) 2005, p. 161.
  13. ^ a b c d e 浅井建爾 2015, p. 26.
  14. ^ a b アスファルト基礎知識 1-2アスファルト利用の歴史”. 日本アスファルト協会. 2019年11月12日閲覧。
  15. ^ 武部健一 2015, pp. 170–171.
  16. ^ 武部健一『ものと人間の文化史 116-Ⅱ 道Ⅱ』法政大学出版局 2003年 pp. 205–206。※初版のp. 206で、坪からhaに変換した際の括弧内の数字が2桁間違っているので注意。
  17. ^ 今井哲、ほか「六大都市道路發達概要」、『道路の改良』第22巻第12号、道路改良会、1940年12月、 pp. 161–228。
  18. ^ 武部健一 2015, pp. 177–181.
  19. ^ 巻上安爾ら 2002, p. 148.
  20. ^ a b c 辻本明人 1999, p. 34.
  21. ^ 日本道路協会 2018, pp. 112–113.
  22. ^ 巻上安爾ら 2002, p. 280.
  23. ^ a b c d 峯岸邦夫 2018, p. 88.
  24. ^ a b 峯岸邦夫 2018, p. 98.
  25. ^ a b 峯岸邦夫 2018, pp. 100–101.
  26. ^ a b c d 峯岸邦夫 2018, p. 92.
  27. ^ 巻上安爾ら 2002, p. 149.
  28. ^ 峯岸邦夫 2018, p. 108.
  29. ^ a b c d 峯岸邦夫 2018, pp. 92–93.
  30. ^ a b c d ロム・インターナショナル(編) 2005, p. 219.
  31. ^ a b c d e “原油高、舗装に変化 アスファルト高騰、コンクリに脚光”. 朝日新聞 (朝日新聞社). (2011年12月22日)
  32. ^ a b 宮川豊章・岡本亨久・熊野知司 2015, p. 132.
  33. ^ a b c d e f g 峯岸邦夫 2018, p. 90.
  34. ^ 巻上安爾ら 2002, p. 270.
  35. ^ 巻上安爾ら 2002, p. 271.
  36. ^ a b c d e f 窪田陽一 2013, p. 32.
  37. ^ 巻上安爾ら 2002, pp. 271–272.
  38. ^ a b c d e f g h i j k l m 峯岸邦夫 2018, p. 136.
  39. ^ 巻上安爾ら 2002, p. 274.
  40. ^ 巻上安爾ら 2002, pp. 274–275.
  41. ^ a b c d 巻上安爾ら 2002, p. 275.
  42. ^ a b c d e f 峯岸邦夫 2018, pp. 94–95.
  43. ^ a b c d e 峯岸邦夫 2018, p. 94.
  44. ^ a b 峯岸邦夫 2018, p. 95.
  45. ^ a b c d e f g h i 峯岸邦夫 2018, p. 96.
  46. ^ a b 桜井豪・高木雄一郎 (2019年11月12日). “道路で太陽光発電 ミライラボ、CASEにらみ開発”. 日本経済新聞. https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52043140R11C19A1TJ1000/ 2019年11月12日閲覧。 
  47. ^ WWMT NEWSCHANNEL 3:Rural Mich. counties turn failing roads to gravel、2009年6月12日
  48. ^ 浅井建爾 2015, pp. 26, 28.
  49. ^ Ⅱ-3-1 世界の道路延長、舗装率
  50. ^ https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/inter/keizai/gijyutu/pdf/road_design_j1_03_1.pdf 日本における道路整備について
  51. ^ a b c 浅井建爾 2015, pp. 27–28.


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