素性文字 素性文字の具体例

素性文字

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/14 01:36 UTC 版)

素性文字の具体例

素性文字の特徴を例示するため、非素性文字であるギリシア文字 (古代ギリシャ語) と素性文字であるハングル (朝鮮語)における破裂音の表記を以下に示す。

例として古代ギリシャ語において Π であらわされる子音 [p] は発声において声帯の振動を伴わない無声音であり、調音位置が両唇音であるといった弁別的素性を持つ。しかし Π という文字にこれらの素性は反映されておらず、例えば同じ両唇音を表す ΒΦ と共通点はない。

これに対して朝鮮語のハングルにおいては調音位置や無気音・有気音・濃音などの素性を同じくする子音を表す字母が共通のパターンを持っており、素性を反映していることがわかる。

ギリシア文字 (非素性文字)
調音位置 無声音 有声音 有気音
両唇音 Π [p] Β [b] Φ [pʰ]
歯茎音 Τ [t] Δ [d] Θ [tʰ]
軟口蓋音 Κ [k] Γ [g] Χ [kʰ]
ハングル (素性文字)
調音位置 無気音 有気音 濃音
両唇音 [p] [pʰ] [pʼ]
歯茎音 [t] [tʰ] [tʼ]
軟口蓋音 [k] [kʰ] [kʼ]

また日本語におけるかなは素性文字ではないが、かなにおける濁点記法は有声音という弁別的素性を表しており、素性文字的な要素といえる。そのほか上記のようなIPA表記におけるダイアクリティカルマークについても同様である。

ハングル以外の素性文字

サンプソンは、通常の文字体系ではハングルと同じ設計のものはほかにないが、アイザック・ピットマンの速記文字がこれに近いとしている[7]

エルフ語の文字(テングワール)も素性文字に含まれる[8]

ピーター・T・ダニエルズ英語版は、さまざまな言語によるアラビア文字の借用を論じて、借用されるごとにアラビア語に存在しない音を表す文字を既存の文字の変形によって作るため、より素性文字的になっていくとした[9][10]


  1. ^ この日本語名は李翊燮等(2004) p.48 に見える
  2. ^ Sampson (1985) p.40
  3. ^ 2015年の第2版では8章
  4. ^ Sampson (1985) p.32
  5. ^ チャオ (1980) pp.155-156
  6. ^ DeFrancis (1989) pp.196-198
  7. ^ Sampson (1985) p.123
  8. ^ Daniels (1997) p.370
  9. ^ Daniels (1997)
  10. ^ Kaye (1996) p.743


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