紙巻きたばこ 構造と材質

紙巻きたばこ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/03 13:56 UTC 版)

構造と材質

灰皿に置かれた紙巻きたばこ
フィルター付き紙巻きたばこの構造例

形状は刻みたばこを紙で筒状に巻いたもので、太さは7mm程度[注 1]、長さは85mmから100mm程度が一般的である[6]。太さ5.4mm程度のものや[6]、9mm近いものもあり[7]、長さも短いものは65mm程度の物もある[6]

たばこ葉を巻く紙は、シガレットペーパーやライスペーパーと呼ばれる[6] が、ライスペーパーといっても原料は米ではなく、紙の材料は主に[7] やパルプである[6]。紙の燃える臭いを抑えたり燃焼速度を刻みたばことあわせるためにシガレットペーパーには炭酸カルシウムが加えられており、また国によっては紙にアンモニウム、リン酸塩、炭酸マグネシウム、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウムなどが加えられることもあり、たばこの味に悪影響を与えないように各製造業者ごとに工夫が凝らされている[7]

タバコ葉には匂いをよくするために香料が加えられることが多く、よく使われる香料には糖類、ココア、カンゾウ、メンソール、ラム酒、バニラ等がある[6]。これらの香料はタバコ葉に直接染みこませたり、フィルターもしくはシガレットペーパーに染み込ませたりされる。

この他、依存性を高めるためにアセトアルデヒドを添加したり[8]、タバコの煙を見えにくくしたり、においや刺激を低減するために、添加物を加えている[9]

吸い口

米国ボンサック社が考案した両切煙草の巻き上げ機の原理。ロール状の紙が動くことによって刻んだ煙草葉が紙の上に筋状に置かれていき、それが金属管を通ることによって紙が巻かれ、その先でのりで接着され、その後等間隔で切断される

紙巻たばこの吸い口は、大別して3種ある。

  • 口付(くちつき)……ストロー状の巻紙(口紙という)の吸い口が付いたもの。今の紙巻きたばこのようなフィルターは付いておらず、くわえやすいように口紙を潰して吸うことが多い。初期の紙巻きたばこの形態で現在日本では製造されていない。日本の国産口付煙草として最初に成功を収めたのは、銀座岩谷松平が1884年に発売した「天狗煙草」である[10]。岩谷では手作業を必要とする巻き上げ工程の原料送り出し部分を機械化した足踏み填充機を導入して大量生産を可能にし、紙巻煙草の日本での普及に貢献した[10]
  • 両切(りょうぎり)……刻んだタバコ葉を紙で巻き両端を揃えて切ったもの。口付たばこの次に登場した。日本初の国産両切煙草は1890年の村井吉兵衛の「サンライス」である[10]。村井はボンサック式巻き上げ機など米国の技術を導入して完全機械化して成功を収めた[10]。現在日本ではショートピースが両切りである。

  口付や両切たばこは吸うときに注意しないと刻みタバコ葉が口に入ってくるものである。

  • フィルター付き……現在のほとんどの紙巻たばこの形である。国産では、1957年(昭和32年)、「ホープ」が最初[11]

フィルター

現在日本で販売されているほとんどの紙巻きたばこの吸い口部分にはフィルターが付いている。フィルター部分を包む紙はシガレットペーパーと区別するためにチップペーパーと呼ばれ、小さな穴を開けるなどして煙を吸い込む際に混ざる空気の量を調節し、味を軽くしたりニコチンやタールを軽減したりする[6]。このような低減は本数が増えたり、より深く肺の奥まで吸いこむことにつながりかえって健康に良くない影響がある(後述)[12]。 以下にその種類と構造を記す。

  • アセテートフィルター…アセテートのみで作られたもの。プレーンフィルターとも呼ばれる。
  • チャコールフィルター…アセテートにチャコール(活性炭)を混ぜて作ったもの。
  • リセスドフィルター…チップペーパーがフィルターよりも長く、フィルターの吸い口に近い部分が中空になっているもの。
  • AFTフィルター…フィルター表面に溝があり、煙を吸い込むと同時に溝から外気をより多く取り込む構造になっているもの。

品質

たばこ会社により、紙巻たばこ1本に含まれるニコチン量のコントロール、喫煙時に摂取するニコチン量の制御が行われている。日本では、たばこ事業法に基づく財務省令により国際標準化機構 (ISO) が定めた方法でタール・ニコチン量が測定されて、たばこ製品の包装に表示されている。現在日本ではたばこ1本あたりのタール量は整数値、ニコチン量は小数点1桁までの数値で表示されることになっている。


  1. ^ 紙巻たばこの太さは直径ではなく円周で表示するのが一般的 -出典 日本専売公社『たばこの話あれこれ』p.100
  1. ^ a b Sweanor, David; Nutt, David J.; Phillips, Lawrence D.; Balfour, David; Curran, H. Valerie; Dockrell, Martin; Foulds, Jonathan; Fagerstrom, Karl et al. (2014). “Estimating the Harms of Nicotine-Containing Products Using the MCDA Approach”. European Addiction Research 20 (5): 218–225. doi:10.1159/000360220. PMID 24714502. https://www.karger.com/Article/FullText/360220. 
  2. ^ a b コロンビア大学嗜癖物質乱用国立センター (2012-06). Addiction Medicine: Closing the Gap between Science and Practice. p. 56. http://www.casacolumbia.org/templates/NewsRoom.aspx?articleid=678&zoneid=51 
  3. ^ a b Thun, Michael J.; Carter, Brian D.; Feskanich, Diane; Freedman, Neal D.; Prentice, Ross; Lopez, Alan D.; Hartge, Patricia; Gapstur, Susan M. (2013). “50-Year Trends in Smoking-Related Mortality in the United States”. New England Journal of Medicine 368 (4): 351–364. doi:10.1056/NEJMsa1211127. PMC 3632080. PMID 23343064. http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMsa1211127#t=article. 
  4. ^ a b Hughes, John R. (2008). “Smoking and suicide: A brief overview”. Drug and Alcohol Dependence 98 (3): 169–178. doi:10.1016/j.drugalcdep.2008.06.003. PMC 2585177. PMID 18676099. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2585177/. 
  5. ^ a b Hooman, Sharifi; Zahra, Hessami; Safa, Mitra; et al. (2013). “Association between cigarette smoking and suicide in psychiatric inpatients”. Tobacco Induced Diseases 11 (1): 5. doi:10.1186/1617-9625-11-5. PMC 3586371. PMID 23419005. https://tobaccoinduceddiseases.biomedcentral.com/articles/10.1186/1617-9625-11-5. 
  6. ^ a b c d e f g JTたばこワールド・たばこの構造 2012.8.30閲覧
  7. ^ a b c 日本専売公社『たばこの話あれこれ』日本専売公社、1976年、p.100
  8. ^ フィリップ・J・ヒルツ 著、小林薫 訳「10章 宣誓の上で」『タバコ・ウォーズ: 米タバコ帝国の栄光と崩壊』早川書房、1998年。ISBN 978-4-15-208183-4 (元B&W社研究部長ウィガンド博士の証言)
  9. ^ Connolly, G. N (2000). “How cigarette additives are used to mask environmental tobacco smoke”. Tobacco Control 9 (3): 283–291. doi:10.1136/tc.9.3.283. PMC 1748381. PMID 10982572. http://tobaccocontrol.bmj.com/content/9/3/283.long. 
  10. ^ a b c d 第6章 煙草消費の変容と煙草専売の運営 戦間期日本の家計消費 世帯の対応とその限界、西川邦夫、東京大学社会科学研究所研究シリーズ No. 57、東京大学社会科学研究所、2015、p85
  11. ^ 日本専売公社東京工場・工場史編集委員会 編著『たばこと共に七十余年』日本専売公社東京工場発行、1982年、pp.5-10
  12. ^ a b c Michael J Thun, David M Burns (2001). “Health impact of “reduced yield” cigarettes: a critical assessment of the epidemiological evidence”. Tob Control (10): i4-i11. doi:10.1136/tc.10.suppl_1.i4. PMC 1766045. http://tobaccocontrol.bmj.com/content/10/suppl_1/i4.full. 
  13. ^ 上野堅實『タバコの歴史』大修館書店、1998年、pp.167-168
  14. ^ ジョーダン・グッドマン 著『タバコの世界史』和田光弘 他 訳、平凡社、1996年、pp.124-126
  15. ^ a b ジョーダン・グッドマン 著『タバコの世界史』和田光弘 他 訳、平凡社、1996年、pp.124-130
  16. ^ ジョーダン・グッドマン 著『タバコの世界史』和田光弘 他 訳、平凡社、1996年、pp.131
  17. ^ United States Department of Health and Human Services, Public Health Service, National Institutes of Health, National Cancer Institute (19 November 2001). Monograph 13: Risks Associated with Smoking Cigarettes with Low Tar Machine-Measured Yields of Tar and Nicotine (Report). 米国がん協会. 2016年9月1日閲覧
  18. ^ 紙巻たばこで肺ガン イヌに吸わせて発生 米の学者が初めて実証『朝日新聞』1970年(昭和45年)2月6日夕刊 3版 11面
  19. ^ a b White, C. (2002). “Tobacco industry knowingly duped public with "low tar" brands”. BMJ 324 (7338): 633. doi:10.1136/bmj.324.7338.633. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1172091/. 
  20. ^ a b “喫煙による死者数、2030年までに年800万人に増加へ”. ロイター. (2017年1月10日). https://jp.reuters.com/article/health-tobacco-idJPKBN14U0C7 2018年2月18日閲覧。 
  21. ^ 湯前宗太郎、平野麻理子 (2018年7月20日). “フィリップ・モリス、日本で三重苦 加熱式・法規制”. 日本経済新聞. https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33196640Q8A720C1000000/ 2018年11月10日閲覧。 
  22. ^ “米「メンソールたばこ」禁止方針”. 共同通信. https://escholarship.org/content/qt33d643pd/qt33d643pd.pdf?t=lnrnmz 2018年11月20日閲覧。 
  23. ^ 黒川顕『中毒症のすべて―いざという時に役立つ、的確な治療のために』永井書店、2006年、278-282頁。ISBN 4-8159-1741-8 
  24. ^ Sheldon, T. (2001). “Low tar cigarettes linked to rise in adenocarcinomas”. BMJ 322 (7288): 693. doi:10.1136/bmj.322.7288.693. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1119898/. 
  25. ^ たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約 (PDF) (外務省)
  26. ^ タールニコチン含有量推移 厚生労働省 最新たばこ情報
  27. ^ 日本専売公社『タバコの話あれこれ』日本専売公社、1976年、p.97
  28. ^ Doll, R. (2004). “Mortality in relation to smoking: 50 years' observations on male British doctors”. BMJ 328 (7455): 1519–0. doi:10.1136/bmj.38142.554479.AE. PMC 437139. PMID 15213107. http://www.bmj.com/content/328/7455/1519. 
  29. ^ NYC
  30. ^ Iwasaki M,et al.Cigarette smoking and completed suicide among middle-aged men: a population-based cohort study in Japan.Ann Epidemiol. 2005 Apr;15(4):286-92.
  31. ^ 国立がん研究センター「たばこと自殺について」Iwasaki Mらの2005年の研究の要約


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