明朝体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/18 20:26 UTC 版)
特徴
活字として彫刻するために、基本となる楷書の諸要素を単純化したものが定着している[1]。縦画と横画はそれぞれ垂直・水平で、おおむね縦画は太く、横画は細い。しかし「亡」や「戈」に見られる緩やかな転折では、どちらもほぼ同じ太さとなる。ほかには、横画の始めの打ち込みや終わりのウロコ、縦画のはね、また左右のはらいなどに楷書の特徴を残している。しめすへんやしんにょうなど一部の部分では、隷書と類似したものも見られる。
活字としての利便性から字形が正方形に近づいたため、筆書体とは要素のまとめ方が異なり、字面において点画が可能な限り均等に配置される。こうした字面を一杯に大きく使う手法は、小さいサイズでの可読性が向上するだけでなく、文章を縦横二方向に組むことが行われるようになった後は、いずれの方向へ組んでも整然とした効果を得られるという点で、さらに有効なものとなった。
字体問題
明朝体は活字の書体として成立したため、書き文字よりも字体が固定化しやすい。様式化のために手書き書体で正統なものとされた楷書との字体の相違が発生した。加えて『康熙字典』に発する字体の問題があり、明朝体の字体をめぐる問題はこれらが合わさって起こっている。
木版印刷や活字による活版印刷における印刷書体として成立した字体は、当時の通用字体または正字体を反映して様式化されたものであった。例えば筆押さえは楷書では運筆上で軽く添えるだけのもので、明朝体のような様式化されたものではない。
そのほかにもくさかんむり(艹)を3画につくる明朝体は、楷書体が原則として4画につくるのと対立した。そしてぐうのあし(禸)の1画目の始めの位置と2画目の始めの位置が同じである明朝体は、1画目と2画目を左上で交わらせる楷書体と対立した。『康熙字典』において『説文解字』などに則り新たに定められた正字はこれらとは異なっていた。それまでの「隠」と「隱」のような字画の構成要素の不足で正誤または正俗字体を区別していたのに加えて、書体の変遷として通用していた「曽」の点画の向きが『説文』の小篆のものと異なるのを問題として「曾」を正字とするなどとした。
しかしそれでも一般的な出版においては通用字体が主流のままであったが、中国へ欧米勢力が入り、金属鋳造活字の開発を始めた時、『康熙字典』を参照して漢字活字を製作した。一部において通用字体が使われることもあったが、欠画なども『康熙字典』のままであった。これらの活字技術が従来の技術に取って代わり、金属活字によると明朝体が日常で見られるものとなると、それまでの通用字体・正字体との隔たりが大きな問題となった。例えば楷書体では「吉」の上部は「土」につくり「𠮷」として、「高」は「はしご高(髙)」が多かったが、新たに入ってきた明朝体の字体を理由にこれらが誤りとされるなど、筆記書体に大きな影響を与えた。
筆押さえなどは、字を示す上で必要がないとされることもある。中国や台湾の規範ではこれらを省いた場合があり、楷書風に改めたものが示されている。日本で1949年4月に当用漢字字体表が告示された際、手書きの表であったため筆押さえなどがなかった。したがって、ないのが正しいとして、活字を作り直す業者や、新字体で印刷するのにそれらを不要とする顧客もあった。しかし当用漢字表外の漢字や、一部活字業者では筆押さえなどは残されたままであった。教育などでは正しい字体の指導上問題になるとして明朝体を使用しなかったり、使用したとしても「印」や「収」などの折れ曲がりの部分、しんにょうが楷書と異なるとして特別に変えたりした。
ただし常用漢字などでは、このような筆押さえ等の形状に加え、点画の付くか離れるかや長短などという細かい差異を「デザイン差」と呼び、専ら統一などするまでもない「差」として、統一は強制でないとしている。日本産業規格(JIS)などでもそれに従うが、教育の場などにおいて省みられることは少ない。
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- ^ “【フォントまめ知識】明朝体ってなに?| ブログ | ニィスフォント | NIS Font | 長竹産業グループ”. 2023年1月9日閲覧。
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- ^ 中国語では「仿宋体」という。
- ^ “小さな文字に隠された壮大な歴史 その1 | フォント・書体の開発及び販売 | ダイナコムウェア株式会社”. ダイナコムウェア株式会社. 2023年1月9日閲覧。
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- ^ a b 『絶対フォント感を身につける。』エムディエヌコーポレーション、2018年、110-113頁。ISBN 978-4-8443-6820-5。OCLC 1076324644 。
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- ^ “様々な韓流コンテンツのデザインに!韓国のフォントブランド Design210”. デザインポケット. 2023年1月10日閲覧。
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