整関数 増大度

整関数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/10 04:34 UTC 版)

増大度

定義により、整函数は無限遠点にのみ孤立特異点を持つ。整函数 f に対して

と置けば、この函数は最大値原理により単調増大で、f が定数でなければリウヴィルの定理から有界ではない。これを f最大絶対値函数と言う。

定理 (Hadamard)
最大絶対値の自然対数函数 ln Mf(r) は、ln r凸函数である。[1]
定理 (Blumenthal)
最大絶対値の自然対数函数 ln Mf(r) は、任意の区間上で連続かつ解析的である。[要出典]

上記の凸性からの帰結として、ln Mf(r) は右および左微分を持ち、それらは単調増大である。必ずしも連続でない函数 v(t) が存在して

が成り立つ。

関数fの絶対最大値函数 Mf(r)r に関しての増大にはいくらでも速いものが存在する。より精確には、任意の単調増大函数 g: [0, +∞)[0, +∞) に対して、適当な函数 f を選ぶことで、任意の実数 x に対して f(x)g(|x|) より真に大きい実数となるようにできる。そのためには f として

の形のものを、うまく選んだ整数列 nk に対してとればよい。実際、cg(2) および と取れる[要出典]

実はこれはトルステン・カーレマン英語版の一様近似定理[2]QR 上定義された複素数値連続函数で、E: R(0, +∞) が連続ならば、整函数 f が存在して、任意の実数 x に対して とできる」の特別の場合になっている[3]

整函数 f が適当な値 λ に対して

を満たすならば、函数 f は次数が高々 λ の多項式である。等号を満足する λ が存在しないときは、Mf(r) の増大度を exp(rk) と比較する。適当な値 r0 より大きい r に対して不等式 が常に成り立つならば、f有限増大度であると言う。整函数 f増大度 (order of growth) あるいは上増大度 (superior order)[注釈 1]は、等式
によって定義される。同じ増大度 ρ の整函数の間でも、
と定義される型 σf の函数を区別することができる。σf の値により、極小型 (σf = 0), 通常型 (0 < σf < ∞) または極大型 (σf = ∞) に分類する。

そのとき以下の不等式が成り立つ:

指数函数 exp の増大度は 1 であり、また正弦 sin および余弦函数 cos もそうである。

ミッタク゠レフラー函数

は増大度 ρ である。リンデレーフ函数
も同じ。

整函数の増大度と整級数展開の係数の間には以下のような関係がある:

  • 整函数 が十分大きな r に対して を満たすならば、
    が十分大きな n に対して成り立つ。
  • 逆に、十分大きな n に対して が成り立つならば、任意の ε > 0 に対し
    が十分大きな r に対して成り立つ。

まとめると:

増大度と係数との関係
整函数の増大度は、以下の公式
によって求まり、また整函数の型は公式
によって決定できる[4]

円周上の最大値と整級数展開の係数には関係があることを見たが、同様の関係がたとえば函数の実部のみに関してどのようになるかを問うことができる。この関係は一般にはボレル-カラテオドリの補題フランス語版によって与えられる。それもまた導函数の評価を考えるものである:

定理 (Borel–Carathéodory)
函数 f(z) は原点中心、半径 R の閉球体 B(0, R) において解析的とし、その実部の半径 r の円上でとる最大値を A(r) とすると、r(0, R) に対して、以下の不等式
を得る。また A(R) ≥ 0 ならば
を得る。

整函数の導函数はその整級数の形式微分によって得られる。コーシー–アダマールの公式を適用すると、整函数の導函数もまた整函数になることが分かる。導函数の増大度がどうなるかという問いが自然に生じるが、その増大度は上記の公式によって計算できて、以下のことが示される:

命題
整函数の導函数の増大度はもとの整函数の増大度に等しい。

また整函数は無限回微分可能であるから、任意の階数の導函数についても増大度はすべて等しい。

整函数の増大をより細かく比較するために、

で定義される下増大度 (inferior order) を考える。

命題
整函数の導函数の下増大度は、もとの整函数の下増大度に等しい。

が示されるが、これではまだ十分に精密ではない。有限増大度 ρ の整函数 f に対して、函数 ρ(r) が存在して、以下の性質

  • ρ(r) は定義されて連続、各点において左および右微分可能である;

を満たすとき、f精密増大度 (precise order) L が定義される。(※校正意見、精密増大度 L の定義が不明である。)

エミール・ボレルは、自身の整函数の研究において、整函数の増大度を

と与えることにより、整函数の通常増大 (regular growth) を定義した。定義により、これは上増大度と下増大度が一致するときのその値であり、函数の通常増大とはそのような増大度を持つという意味で言う。

整函数 f が増大度 ρ となるための必要十分条件は、その通常増大が十分大きな n と任意の ε > 0 に対して を満たし、かつ整数列 np が存在して

および とともに成り立つことである。


注釈

  1. ^ superior は上極限 limsup を取ることに由来する。すぐ後で下極限に対応する下増大度なども定義する

出典

  1. ^ Hadamard, Jacques (1892), “Étude sur les propriétés des fonctions entières et en particulier sur une fonction considérée par Riemann”, Journal de mathématiques pures et appliquées 9 
  2. ^ Carleman, Torsten, Sur un théorème de Weierstrass, http://www.math.technion.ac.il/hat/fpapers/car1.pdf 
  3. ^ たとえば Kaplan, Wilfred, Approximation par des fonctions entières, http://projecteuclid.org/download/pdf_1/euclid.mmj/1031710533 
  4. ^ Boas 1954, p. 11.
  5. ^ Rudin, Walter, Real and complex analysis [要文献特定詳細情報]
  6. ^ Pólya, Georg (1915), “Über ganzwertige ganze Funktionen”, Rendiconti del Circolo Matematico di Palermo 40: 1–16, doi:10.1007/BF03014836, ISSN 0009-725X, http://www.springerlink.com/content/7q0r434816514656/ 





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