救急救命士 救急救命士の現状

救急救命士

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/08 04:43 UTC 版)

救急救命士の現状

  • 2012年(平成24年)4月1日現在、救急救命士を運用している消防本部は、全国791消防本部のうち790本部で、その運用率は99.9%である。救急救命士を運用している救急隊は年々増加し、全国4965隊の救急隊のうち95.9%にあたる4763隊となっている。また、救急救命士の資格を有する消防職員は2万7827人であり、うち救急救命士として運用されている救急隊員は2万2118人である[9]
  • 医療専門職がいない院外で活動をする救急隊員や陸・海・空自衛隊員、海上保安庁職員などの活動可能範囲を広げ、救命率を上げるために創設された国家資格である。救命救急センターなどの病院での採用事例もあり、入院患者以外の重度傷病者に対して救急救命処置を実施することは可能である。
  • 米国のEMSやパラメディック(日本の救急救命士にあたる)は州ごとに資格があり[10]、消防や警察などの公的機関に加えて民間の救急隊や娯楽施設でも活動しているが、日本の場合は救急救命士の資格が厚生労働省救急隊の活動基準は消防庁と別個になっている事も職域拡大の障害となっている。消防機関に属する救急救命士は、公務員であるために職務行為以外の活動にあたる法律の改正や救急救命士の職域拡大に向けた活動や運動を行う事は公務員の性格上出来ないのも事実である。そこで、公務員以外の民間の救急救命士有資格者が中心となって一般社団法人日本救急救命士協会[11]を設立し職域拡大に向けた活動を開始したり、常設消防がない宮崎県美郷町救急搬送を民間の「日本救急システム[12]」に委託し日本で初めての民間救急救命士による救急活動を開始[13]するなど新たな動きもみられつつある。
  • 2021年10月1日付けで改正救急救命士法が施行されたことに伴い「救急現場から傷病者が入院もしくは帰宅するまで」の間において救急救命処置を実施することが可能となった。これまでは救急現場から医療機関までに限定されていたが、改正により医療機関内で救急救命士としての業務が可能となった。

民間救急救命士の活用

消防機関に属さない救急救命士は救急救命士全体の37%であるが、ここから海上保安庁・自衛隊・警察に属する救急救命士を除いたものが「民間救急救命士」である[14]。民間救急救命士は主として警備会社・病院・民間搬送機関に所属することが多い[14]

民間では、ベテランであれば患者搬送の補助や救命講習の指導役などに経験を活かせるため、一部の病院が消防局を定年退職した資格者を積極的に採用している[15]

厚生労働省では「救急救命士法における消防に属さない救急救命士の活用範囲」として「役場救急での活用」以外にも、「地域包括ケアシステムでの活用」、「集客施設・イベントでの活用」、「救命センター等病院での活用」を例に挙げている[14]。今後は、消防機関退職後の救急救命士の活用や、新たな領域においても医療資格を有する病院前のスペシャリストである救急救命士の活用といった活用が検討されている[14]


注釈

  1. ^ 救急救命士の業務のあり方等に関する検討会の答申を受けて加えられた。

出典

  1. ^ a b c 救急救命士法 | e-Gov法令検索”. elaws.e-gov.go.jp. 2021年9月22日閲覧。
  2. ^ 救急ドキュメンタリー 救急救命士誕生 Archived 2011年5月3日, at the Wayback Machine.
  3. ^ 「「救急救命処置の範囲等について」の一部改正について」(平成21年3月2日付け医政指発0302001号厚生労働省医政局指導課長通知)
  4. ^ 救命士、消防以外にも拡大へ 救急隊の負担減らす狙い:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2021年9月23日閲覧。
  5. ^ 厚生労働省医政局指導課 (2011年3月17日). “救急救命士の特定行為の取扱いについて” (PDF). 2012年1月29日閲覧。
  6. ^ えりも町役場. “北海道えりも町| 救急救命士が行う救命処置が拡大されました”. 北海道えりも町. 2021年9月22日閲覧。
  7. ^ 救急救命士法施行規則第21条第3号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する薬剤 平成17年3月10日厚生労働省告示第65号
  8. ^ a b c 救急救命士法施行規則の一部を改正する省令等の施行について(平成26年2月5日)
  9. ^ 総務省消防庁 救急救命士及び救急救命士運用隊の推移
  10. ^ 米国アーカンソー州EMS編
  11. ^ 一般社団法人日本救急救命士協会
  12. ^ 日本救急システム
  13. ^ 宮崎・美郷町が救急活動を民間委託
  14. ^ a b c d 田中秀治. “消防機関以外に属する救急救命士の利活用の現状 救急救命士業務の質向上と担保のあり方 地域の消防との連携について(第10回救急・災害医療提供体 制等の在り方に関する検討会 資料5)” (PDF). 厚生労働省. 2019年3月22日閲覧。
  15. ^ 仙台オープン病院、経験豊富な退職救命士を積極採用 「使える技術」制限も -河北新報
  16. ^ 兵庫県消防学校 令和4年度救急救命士養成課程 修了式の実施2023年3月9日、兵庫県。2023年7月4日閲覧
  17. ^ 自衛隊入間病院 引越し編”. 防衛ホーム (2022年7月15日). 2023年1月25日閲覧。
  18. ^ 全国救急救命士教育施設協議会(2012年2月28日現在)
  19. ^ 東京アカデミー 医療系学校コンテンツ 救急救命士 学校一覧&リンク






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