平出隆 平出隆の概要

平出隆

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/08 22:14 UTC 版)

人物

「詩人、散文家として、数々の詩書を刊行。国際的ベストセラー小説『猫の客』の著者。みずからのデザインや写真による、極小の本 «via wwalnuts» 叢書を刊行中。多摩美術大学名誉教授、芸術人類学研究所所員。大江健三郎により「詩の中から新しい散文を生み出す詩人」とされる[1]。」

福岡県門司市(現北九州市門司区)出身。福岡県立小倉高等学校を経て、一橋大学社会学部に入学。神田神保町の「美学校」にも通う。1976年に一橋大学を卒業。

来歴

1972年、大学在学中に連作詩篇「花嫁」を『ユリイカ』に発表。

1974年、稲川方人、河野道代ともに、版元「書紀書林」を設立。1975年以降、同社から詩誌『書紀』『書紀=紀』[2]のほか、いくつかの詩書を刊行。70年代の詩的ラディカリズムを担う。80年代半ば以降、同社はしばらく活動を休止したが、90年代には建畠晢が新たに加入し、詩誌『stylus』を刊行した。なお、一連のプライヴェート・プレス活動、「造本としてのエクリチュール」の実践は、2010年からvia wwalnuts社を拠点に再開される。

1976年、5月に第一詩集『旅籠屋』を紫陽社より刊行。

1978年、河出書房新社に入社し、『文藝』編集部に所属。澁澤龍彦川崎長太郎らの担当編集者となる。

1982年、5月に第一評論集『破船のゆくえ』を思潮社より刊行。11月に第二詩集『胡桃の戦意のために』を思潮社より刊行。

1984年、10月に第三詩集『若い整骨師の肖像』を小沢書店より刊行。

1985年、評論集『攻撃の切尖』を小沢書店より刊行。アイオワ大学のInternational Writing Programに招待詩人として参加。

1987年、11月に詩集『家の緑閃光』を書肆山田より刊行。河出書房新社を退社。

1989年、3月に『白球礼讃』を岩波書店より刊行(岩波新書(新赤版)64)。

1990年、多摩美術大学美術学部芸術学科非常勤講師、1991年多摩美術大学美術学部芸術学科助教授、1998年教授(2006年度から2011年度まで芸術学科長をつとめる)。多摩美術大学芸術人類学研究所所員兼任。

1992年、10月に評論集『光の疑い』を小沢書店より刊行。

1993年、6月に『左手日記例言』を白水社より刊行(同書により第45回読売文学賞受賞)。

1995年、9月にケルンで開かれた《河原温 出現 – 消滅》展に際して講演を行う(草稿はのちにvia wwalnuts叢書07として刊行された[3])。

1997年、3月に編著『日本の名随筆 別巻73 野球』を作品社より刊行。

1998年、ベルリン自由大学客員教授として翌年の1999年までベルリンに滞在。

2000年、7月に歌集『弔父百首』を不識書院より刊行。

2001年、9月に『猫の客』を河出書房新社より刊行。『葉書でドナルド・エヴァンズに』を作品社より刊行。

2002年、4月に『ベルリンの瞬間』を集英社より刊行。

2003年、2月に『葉書でドナルド・エヴァンズに』の英訳 Postcards to Donald Evans 刊行(Tomoyuki Iino訳、Tibor De Nagy Foundations社)。6月に編集を担当した『伊良子清白全集』が岩波書店より刊行。10月に『伊良子清白』を新潮社より刊行。

2004年、3月に『猫の客』のフランス語訳 Le chat qui venait du ciel 刊行(Elisabeth Suetsugu訳、Editions Philippe Picquier社[4])。6月に『ウィリアム・ブレイクのバット』を幻戯書房より刊行。7月に評論集『多方通行路』を書肆山田より刊行。

2005年、春に開催されたライプツィヒでの国際ブックフェアにおいて、自装による長篇評伝『伊良子清白』が「世界でもっとも美しい本」賞の候補となる[5]。同年、「大江健三郎の推奨する詩人」として、大江と共にオーストリアでの文学祭Sprachsalzに参加。

2006年、思想家・人類学者の中沢新一を多摩美術大学に招聘し、芸術人類学研究所を創設。以後、同研究所では《野外を行く詩学》部門を担当し、研究をとおして過去の芸術家の居留地などを結び合わせる《フィールド・ミュージアム・ネット》の活動を展開する。東京都台東区の子規庵との連携により、正岡子規の研究にたずさわる。同年、新たに発見された子規の絵の調査を担当[6]

2007年、9月10日に加納光於+平出隆『雷滴 その研究』を書紀書林より刊行(インタリオ:加納光於、詩篇:平出隆、限定13部)。同月27日に論集『遊歩のグラフィスム』を岩波書店より刊行。

2008年、読売文学賞選考委員をつとめる(2010年まで担当)。『胡桃の戦意のために』の英訳 For the Fighting Spirit of the Walnut 刊行(Sawako Nakayasu訳、New Directions社[7])。「第1回 日中韓・東アジア文学フォーラム」に参加。7月、古井由吉との朗読会(新宿「風花」にて)。

2009年、5月に『猫の客』が河出文庫から再刊。北九州市より特命大使(文化大使)の委嘱を受け、同年「第2回 日中韓・東アジア文学フォーラム」で基調報告を行なう。翌年、北九州市立文学館の「宗左近賞」「みずかみかずよ賞」の審査員を務める。

2010年、1月に小説『鳥を探しに』を扶桑社より刊行。via wwalnuts社を設立し、8ページを基本単位とするミニマルな書籍「via wwalnuts」叢書を創刊。メールアートのようなブックデザインを手がけるとともに、既存の文壇や詩壇から独立したかたちでの読者とのコミュニケーション・ルートを開拓し、新しい流通網をデザインするなど、様々な側面から実験的なプロデュースを行う。叢書には美術家の加納光於による図像が印刷されている。以後、同社を拠点とした出版活動を軸に、アート関係の施設やギャラリー、ブックフェアなどでさまざまな活動が展開される。3月にvia wwalnuts叢書01『雷滴 その拾遺』を刊行。以後、同叢書のシリーズを継続的に刊行。

2012年、3月に、岡井隆、平出隆、倉田比羽子、守中高明との朗読会「詩歌の饗宴————朗読と語りのゆうべ」に参加。ギタリスト・音楽プロデューサーの伊藤ゴローのアルバム『GLASHAUS(グラスハウス)』のジャケットデザインを手がけ、4月に同アルバムが発表される。デザインにはドナルド・エヴァンズの作品と平出の旧著『葉書でドナルド・エヴァンズに』にゆかりのある自身の写真が用いられた。5月には南青山のスパイラルで初の写真による個展を開催。

2014年、1月28日に小説『猫の客』の英訳The Guest Cat(Eric Selland訳)が出版される[8]。同訳書はその後、ニューヨーク・タイムズとサンデー・タイムズでベストセラーとなる[9]。これに続いて、スペイン語訳[10]、オランダ語訳[11]、イタリア語訳[12]、 スウェーデン語訳[13]、ドイツ語訳[14]、中国語訳(台湾・繁体字版)[15]、ポーランド語訳(2016年)などが刊行されている。

受賞歴


  1. ^ 平出隆ホームページ、略歴欄 http://takashihiraide.com/#about ;「平出隆は詩人・批評家として数々の詩書を刊行するとともに、文学の形式を意識的に混淆させた散文作品を刊行してきた。また、自身のデザインや写真によるアートブックの制作も書くことと一体化させて行なう。」via wwalnuts 公式ホームページ 略歴欄 http://viawwalnuts.jp/#about
  2. ^ http://takashihiraide.com/shokiki/
  3. ^ http://viawwalnuts.jp/vww-07/
  4. ^ http://www.editions-picquier.fr/catalogue/fiche.donut?id=308&cid= ポケット版は同社より2006年9月に刊行。https://www.editions-picquier.com/produit/le-chat-qui-venait-du-ciel-2/
  5. ^ http://takashihiraide.com/ryakureki/
  6. ^ asahi.com「正岡子規の絵20点見つかる 晩年の作品、画風変遷」 http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200609270221.html
  7. ^ https://www.ndbooks.com/book/for-the-fighting-spirit-of-the-walnut/
  8. ^ Eric Selland訳、New Directions社刊 http://www.ndbooks.com/book/the-guest-cat/
  9. ^ ニューヨークタイムズでは2月16日週のペーパーバック部門でベストセラー16位。http://www2.tamabi.ac.jp/iaa/hiraide_books_theguestcat/ Pan Macmillan社による紹介文 https://www.panmacmillan.com/authors/takashi-hiraide/the-guest-cat
  10. ^ El gato que venía del cielo, Alfaguara社、2014年6月11日刊 http://www.megustaleer.com/libro/el-gato-que-venia-del-cielo/ES0135337
  11. ^ DE KAT, Meulenhoff社、2015年1月14日刊 http://www.meulenhoff.nl/nl/p4c36fcf32b2f4/14548/de-kat.html
  12. ^ Il gatto venuto dal cielo, Einaudi社、2015年4月21日刊 http://www.einaudi.it/libri/libro/hiraide-takashi/il-gatto-venuto-dal-cielo/978880621902
  13. ^ Gästkatten, Brombergs Bokförlag社, 2015年10月刊. http://brombergs.se/titel/gastkatten/599
  14. ^ Der Gast im Garten, Insel社、2016年4月11日刊 http://www.suhrkamp.de/buecher/der_gast_im_garten-takashi_hiraide_17626.html
  15. ^ 『稻妻小路的貓』愛米粒社、2016年9月10日刊 http://www.books.com.tw/products/0010728367
  16. ^ http://www.wwalnuts.jp/cfbc/about/


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