宇宙ステーション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/09 23:54 UTC 版)
計画段階の宇宙ステーション
- 月軌道プラットフォームゲートウェイ (LOP-G)
- アメリカのNASAが主導する月の軌道又は月周回軌道への新しい宇宙ステーションの建設計画。2020年代に建造開始を予定している。
- 規模としてはミニチュアサイズで、滞在可能な宇宙飛行士は4人。構成モジュールも「電力・推進力」「居住」「輸送」「エアロック」の4基とシンプルになっている。成功すれば最も地球から離れた場所に設置された宇宙ステーションとなり、さらに2030年代予定されている火星有人探査に使用される大型宇宙船深宇宙輸送機 (DST)(重量41トン、4人の乗組員が火星への往復4年間生活可能。使い捨てではなく、LOP-Gで乗員の入れ替えや物資の補給を行う事で再使用可能)の建造・試験・補給拠点としての利用が計画されている。
- OPSEK
- ロシアが2010年代に計画していた宇宙ステーション。2024年のISS運用終了の前に、新たに幾つかのモジュール打ち上げ、ISSのロシアモジュールの一部として順次ドッキングする形で建造を行い、ISS運用終了時に構成要素となるモジュールをISSから切り離して、再構成することで単独の宇宙ステーションとなる。ISSに比べて小型になるが、機能的には同等の物を維持し、ミニチュア版といってもよいものを目指していた。
- 後にロシアはISSに2028年まで参加延長することを発表しており、ISSからモジュールを流用せず、周回軌道もISSと全く異なる新規の宇宙ステーション建造を検討している[16]。
- 日本宇宙ステーション (JSS)
- JAXAで構想している小型宇宙ステーション。
- ISS運用予定が短かった頃に構想されたもので、運用終了時に廃棄されるモジュールから設計上10年程度寿命の残っているきぼうを回収し、発展型HTVによって独自の居住モジュールやドッキングモジュール、太陽電池アレイ、推進モジュール(場合によっては打ち上げに使ったHTVの与圧キャリアや推進モジュールを流用する)を打ち上げ、組み合わせる予定であった。
- 日本は人工衛星や無人探査機はいくつも成功させているが、逆に有人での往還技術や長期間稼働できる生命維持システムを未だ持っていないため、構想の域を出ない。
- 2024年現在、JAXAはISSときぼうモジュール運用終了後の方針について、「日本独自の宇宙ステーションの建造」を選択肢としては検討しているものの、費用対効果などの観点から実現は困難とし、アメリカの商業宇宙ステーションへ日本の開発したモジュールを接続する形での低軌道有人活動の継続を目標としている。[17][18]
- バーラティヤ・アンタリクシャ・ステーション
- インドが独自に計画している20トンの小型宇宙ステーション。2019年にISROから発表され、最初のモジュール打ち上げを2028年に予定している。最終的には2035年を目途に、複数のモジュールから成る35トンの宇宙ステーションへ拡張される予定。[19][20]
- 3.7トンのカプセル型有人宇宙船ガガニャーンを発展させたもので、乗組員は2〜3名。常時の有人運用は想定せず、一度の滞在期間は15〜20日間ほど(微小重力での科学実験を行うには十分としている)だが、使い捨てではなく、宇宙船からの補給で数年に渡って使用できるという。
- 商業用宇宙ステーション
- いくつかの民間宇宙企業により、建造が計画されている。2021年には、NASAがISS運用終了後を見据えた代替となる宇宙ステーションの確保を目的として、商用地球低軌道開発プログラム(CLD)を開始し、2024年現在以下のオービタル・リーフとスターラブの二つが資金提供を受けている。[21]
- オービタル・リーフ
- ブルーオリジン社やシエラ・ネヴァダ・コーポレーション社などが2020年代後半の運用開始を目指し開発中の宇宙ステーション。膨張式モジュールによりISSと同規模の広さを持つ。ISS終了後の民間移管先となることを企図している。[22]
- アクシオム・ステーション
- 現在ISSへの民間宇宙旅行を提供しているアクシオム・スペースが開発中の宇宙ステーション。2026年に打ち上げ予定のAxH1(ハブ・ワン)モジュールを皮切りに複数のモジュールを接続していき、まずはISSの一部分(アクシオム軌道セグメント)として完成させ、ISSの運用終了後に切り離して独自の宇宙ステーションとする計画である。[23][24]
- スターラブ
- ボイジャー・スペースとエアバスが出資する合弁企業であるスターラブ・スペースが2028年の運用開始を目指して開発中の宇宙ステーション。また、当初はCLDの資金提供を受け独自のステーション建造を計画していたノースロップ・グラマンも、補給船としてシグナス宇宙船を提供する形で参画している。ISSの半分程度の容積を持つ単一の大型与圧モジュールと機械モジュールから成るステーションで、スペースXのスターシップを用いて打ち上げられる予定。ステーションの運用目的については、観光ではなく研究と工業に特化した施設にするとしている。[25][26]
- ヘイヴン1
- アメリカの民間宇宙企業ヴァストが開発中の宇宙ステーション。最速で2025年8月にファルコン9ロケットでの打ち上げを予定しており、ステーションを回転させて月面レベルの人工重力を発生させる実験などを行うとしている。さらに、将来的にはより大型の人工重力発生機能を備えた宇宙ステーションの建造も計画している。[27][28]
- ^ “中国の宇宙ステーション計画がまた前進!「天宮二号」宇宙実験室を打ち上げ”. sorae.jp (2016年9月16日). 2016年9月18日閲覧。
- ^ “中国の有人宇宙船「神舟10号」、無事地球に帰還”. sorae.jp (2013年6月26日). 2015年11月19日閲覧。
- ^ “CHINA’S OUT-OF-CONTROL TIANGONG-1 SPACE STATION TO CRASH BACK TO EARTH EARLY 2018”. 2017年9月18日閲覧。
- ^ “中国モジュール「天宮1号」南太平洋上空で突入 大部分が燃え尽きる”. sorae.jp (2018年4月2日). 2018年4月12日閲覧。
- ^ 塚本直樹 (2016年10月19日). “中国人の有人宇宙船、宇宙実験室「天宮二号」にドッキング成功 30日の滞在ミッションへ”. sorae.jp 2016年10月20日閲覧。
- ^ 塚本直樹 (2016年11月19日). “中国人飛行士、宇宙実験室「天宮二号」より無事帰還 約1ヶ月の滞在ミッションに成功”. sorae.jp 2016年11月21日閲覧。
- ^ “無人補給船「天舟一号」ドッキング成功! 中国宇宙実験室「天宮二号」と”. sorae.jp (2017年4月24日). 2017年4月27日閲覧。
- ^ “中国当局、宇宙実験室「天宮2号」また混乱 落下報道後に「まだ軌道上」”. 日刊工業新聞. (2019年7月19日) 2019年7月22日閲覧。
- ^ a b “民間宇宙ステーション試験モジュール打ち上げに成功! 宇宙で膨張して展開 - MYCOMジャーナル”. 2006年7月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年1月8日閲覧。
- ^ “中国、22年前後に定員3人の宇宙ステーション建設”. 2019年11月20日閲覧。
- ^ “中国の有人宇宙船「神舟12号」が無事帰還”. AFP BB News. (2021年9月17日) 2021年10月17日閲覧。
- ^ “中国、有人宇宙船を打ち上げ 宇宙ステーション完成へ”. CNN (2022年11月30日). 2022年12月1日閲覧。
- ^ “中国宇宙船が接続成功=ステーション運用本格化”. 時事通信 (2022年11月30日). 2022年12月1日閲覧。
- ^ “中国 独自の宇宙ステーション“すでに完成” 本格的運用開始へ”. NHK (2023年1月5日). 2023年1月6日閲覧。
- ^ “習近平国家主席が2023年新年の挨拶を発表”. 北京週報 (2022年12月31日). 2023年1月6日閲覧。
- ^ “2028年までISS参加延長 ロシア宇宙企業が決定”. 産経新聞 (2023年4月12日). 2023年5月18日閲覧。
- ^ “ポストISSにおける我が国の地球低軌道活動について(その2)”. 宇宙航空研究開発機構 (2022年11月8日). 2024年3月7日閲覧。
- ^ “JAXAから米国商業宇宙ステーション接続型の日本実験棟後継機の概念検討の実施者に選定”. 三井物産株式会社 (2023年9月14日). 2024年3月7日閲覧。
- ^ “Bharatiya Antariksh Station to be assembled in multiple phases by Isro” (英語). India Today (2024年2月7日). 2024年3月7日閲覧。
- ^ “What is Bharatiya Antariksh Station, India's first space station to be set up by 2035?” (英語). Mint (2024年2月7日). 2024年3月7日閲覧。
- ^ KadonoMisato (2022年3月2日). “NASAの商用宇宙ステーション開発支援計画でスペースXが落選。当落を分けた要因は?”. sorae 宇宙へのポータルサイト. 2024年3月7日閲覧。
- ^ 鳥嶋真也 (2021年11月1日). “米民間企業ら、商業用の宇宙ステーション「オービタル・リーフ」計画を発表”. マイナビニュース. 2022年11月10日閲覧。
- ^ “三菱電機:DSPACE 元NASAプロ集団が進める「宇宙旅行」と「商業宇宙ステーション」”. 三菱電機 (2020年3月16日). 2024年3月7日閲覧。
- ^ “Axiom Station” (英語). Axiom Space. 2024年3月7日閲覧。
- ^ “商業宇宙ステーション「Starlab」の打ち上げにスターシップの選定を発表【宇宙ビジネスニュース】”. 宙畑 (2024年2月5日). 2024年3月7日閲覧。
- ^ “Starlab - A New-Era Space Destination” (英語). Starlab Space. 2024年3月7日閲覧。
- ^ “米民間企業が商用宇宙ステーションの打ち上げ計画を発表 4名で30日間滞在可能”. sorae 宇宙へのポータルサイト (2023年5月12日). 2024年3月7日閲覧。
- ^ “Roadmap” (英語). Vast. 2024年3月7日閲覧。
- ^ David Shiga (2010年2月23日). “NASA sets sights on inflatable space stations”. New Scientist 2010年2月24日閲覧。
- 1 宇宙ステーションとは
- 2 宇宙ステーションの概要
- 3 概要
- 4 計画段階の宇宙ステーション
- 5 未来の宇宙ステーション
- 6 タイムライン
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