可変戦闘機 (マクロスシリーズ)
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開発と運用
VFは地球統合軍の主力兵器、あるいは異星人の謎の兵器としてさまざまなバリエーションの機体が存在する。偶然の発見や見込み違い、現場(実戦)の要請や政治的背景など、幾多の要因により独自の進化系統を成している。
(注)以下の記事中の西暦年数は作品中における架空の表記である。
誕生期(西暦2001年 - 2008年)
1999年、地球に墜落した異星人の戦艦(後のSDF-1マクロス)から得られたオーバー・テクノロジーにより、巨大異星人との格闘戦用巨大歩行兵器の研究が始まった。ロボット研究で実績のある陸軍は、陸戦機動兵器を開発の基礎においた重装型のデストロイド開発を提案。これに対し、海軍・空軍・海兵隊は航空機とロボットを融合させた、機動性・展開力に優れる全領域可変戦闘システムという大胆な計画提案で対抗した。ただし、初期の発想はあくまで「飛行形態を採れるロボット兵器」であり、飛行能力は移動手段という副次的なものであった。航空用エンジンの大出力を活かした格闘能力が期待され、オプションのアーマードパックの開発も検討された。
基礎研究は2001年2月に始動したが、初の量産機[6]VF-1バルキリーがロールアウトしたのは2008年11月だった。実用化の難航と共に、開発コンセプトも予想されたロボット兵器とは違うものへ変化した。まず、異星人墜落艦の調査で高機動兵器が発見されたため、対抗して高度な空戦能力が必要と判断された。主に大気圏内での空力的要求から、現用戦闘機に近いファイター形態が生まれ、当初のロボット(バトロイド)中心から空陸両用思想へ転じた。さらに、開発上最も重要な転換点はガウォーク形態の「発見」であった。VF-1の試作機 VF-X1 の試験飛行中、ファイター形態から両手足を伸ばした変形の途中段階が、低空低速ホバリング時に極めて有用であることが判明。操縦安定性に優れ、空陸の戦場を立体的に移動できるガウォークは独立した運用形態として採用された。これらの結果、VFシリーズは三つの形態を持つ多用途機動兵器として成功することになる。
運用に関しては、異星人勢力の太陽系侵攻を阻止する迎撃戦闘がシミュレートされていた。現代戦の「制空権の確保→地上制圧」という展開に沿い、
- ファイターモードで敵航空兵力を退け制空権を確保。敵地上侵攻部隊へ上空から対地攻撃を行う。
- ガウォークモードに変形し、低空ホバリング飛行でより密な掃討を行う。
- バトロイドモードで着地し、接近戦にて制圧(ただし格闘戦(殴り合い)はやむを得ない場合の最終手段)。巨人族兵士の拘束や交渉も行う。
また、宇宙艦隊戦においてはバトロイド形態で敵戦艦内に強行突入し、抵抗を排除しつつ司令室を占拠するという海兵隊的な特殊作戦も計画されていた。敵軍と同等の大型戦艦(ただしゼントラーディ側基準では 1,200メートル級は「小~中型艦級」あつかい )がマクロス1隻のみという状況から、VF部隊による白兵戦術も有効とみなされた。
地球を一つの政体に統一する統合戦争の末期には統合軍はVF-0を、反統合同盟はSV-51を実戦投入した。反応エンジンの搭載が間に合わず両者ともにジェットエンジンを搭載した試作機ではあるが、従来のジェット戦闘機を上回る機動性を発揮し、十分に実戦可能な兵器として完成する。
第一次星間大戦(西暦2009年 - 2010年)
ゼントラーディ軍との戦闘(第一次星間大戦)が始まると地上戦を交える局面はほとんどなく、圧倒的な艦隊規模の差に白兵戦も無意味であった。VF-1部隊はおもにマクロス艦直掩機として活躍し、最終決戦の「ミンメイ・アタック」では反応弾を抱え戦闘攻撃機としても出撃した。本来、これらは無人戦闘機ゴーストや宇宙戦闘機ランサーIIの任務であったが、VF-1は期待以上の汎用性を発揮し、宇宙用追加装備(スーパーパック)も性能向上に大きく貢献した。また、パイロットたちの創意工夫で変形を駆使した空中戦技が編み出され、ロイ・フォッカーやマクシミリアン・ジーナスらエースパイロットは空中戦でもバトロイド形態が有効であることを証明した。VFシリーズはマルチロール機として総合性能評価でデストロイドシリーズを凌駕し、戦後も統合軍の主力兵器として更に開発が進められることになった。
宇宙移民時代(西暦2011年 - 2040年)
戦後の2010年代から2020年代にかけては宇宙移民船団の護衛や移民星系の治安維持が主任務となった。この時代は名機VF-1の機体設計をベースにさまざまな「亜種」が生まれた。使用環境に応じて宇宙用、大気圏内用、ローコストの機体などを使い分ける専用機思想が主流となり、技術面では変形システムの見直し、機体の大型化、ステルス技術の導入などが行われた。地球再生計画が一段落して余裕が生まれてくると新たなVFの可能性を模索する「アドバンスド・バルキリー計画」により「VA」「VB」などの新しいカテゴリーの可変機が生まれてくるようになる。また、開発メーカーの統合再編が進んだ結果、新星インダストリー社とゼネラル・ギャラクシー社が2大メーカーとなり、ゼントラーディ技術の融合も積極的に行われた。
その後、移民星系の拡大と共に紛争や内乱が続発し、広域治安維持活動のため使いまわしやすい万能機の価値が見直されるようになった。2030年、新統合軍はVF-1の正統な後継機VF-11を次期主力機として採用。VF-11は新たなスタンダードとなり、それ以前の旧型機は退役や配置転換などの世代交代を強いられた。
AVF(西暦2041年 - 2050年)
移民惑星間の政治関係やテロリスト組織の活発化など、複雑化した治安問題に通常部隊では対処できないケースが増えたため、精鋭部隊を編成し、敵拠点をピンポイントで攻略する特務作戦が重要になった。新統合軍は最適な機体を求め、2034年からVF-11をはるかに凌駕する次期主力可変戦闘機(Advanced Variable Fighter : AVF)の開発計画に着手した。過酷な任務に就くため、AVFには以下のような基本性能が要求された。
- 有事において迅速に出撃できるよう、ブースター装備なしでも大気圏内外を連続長距離飛行できる。
- 敵警戒圏に縦深侵入するため、単独でのフォールド能力と高度な隠密性(ステルス性)を備える。
- 防空網を突破するため大気圏内での高度な空戦能力を必要とする。
- 施設内での鎮圧行動のため、バトロイド形態での格闘戦闘力と防御力を強化する。
これらの実現のため、新開発の熱核バーストタービンエンジン、フォールドブースター、第三世代型アクティブ・ステルス、空力制御装置、AI操縦サポートシステム(BDIシステム)、ピンポイント・バリアなどの最新技術が意欲的に投入された。
2039年から惑星エデンのニューエドワーズ基地で行われた競争試作プロジェクト、通称「スーパーノヴァ計画」では、新星インダストリー社のYF-19 とゼネラル・ギャラクシー社のYF-21が制式採用をかけて優劣を競った。一時は無人戦闘機「ゴーストX-9」の開発により有人戦闘機不要論が強まる時もあったが、2040年の「シャロン・アップル事件」で人工知能の脆弱性が露呈し、無人戦闘機採用は一時凍結、両機共に制式採用されることとなった。YF-19はVF-19として特殊任務用から一般兵用の量産機までバリエーションを展開し、YF-21は不安定な脳波コントロールから通常のコクピットに変更され、特殊任務機VF-22Sとして精鋭部隊に配備された。
これらAVFは2045年のバロータ戦役、2047年のミルキードールズ誘拐事件、2050年のラクテンス蜂起といった移民船団や移民惑星での紛争時に活躍した。
「YF-24ファミリー」の展開(西暦2051年 - )
高性能のVF-19とVF-22は共に制式採用されたものの、主力機としての大量配備は見送られ少数生産に止まった。理由は機体価格と維持費が高価であったことと、一般のパイロットには操縦難度が高く、高機動時に発生するG負荷に肉体が耐えられなかったためである。操縦性に関してはAIや脳波コントロールによるサポートがAVFの時点で行われてきたが、肉体の限界は当時どうにもならない問題として有人戦闘機の性能向上に重く圧し掛かった。そんな中、X-9の諸問題をクリアしたゴーストAIF-7Sが実用化され、大抵の任務がゴーストで済むようになった。その結果、AVF以前の機体の中で最も高性能であったVF-17を改良し、高い操縦性と汎用性を備えたVF-171が新統合軍の主力機となった。
銀河系各方面に散らばった移民船団では、それぞれの環境や目的によりVFに求める性能の違いが存在する。2050年代には汎用性を持たせた原型機のデータを基に、各移民船団が独自に系列機を改設計・生産するという潮流が生まれる。一度は開発が中止されたYF-24の設計をベースに、マクロス・フロンティア船団ではVF-25、マクロス・ギャラクシー船団ではVF-27が実戦配備され、2059年のバジュラ戦役で活躍することになる。この戦闘ではバジュラのジャミング攻撃でゴーストが無力化され、有人戦闘機の必要性が再認された。また、この時代には練度の低い新統合軍ではなく、S.M.Sやケイオスといった民間企業の軍事部門に最新鋭機が外部委託されるようになっていく。
YF-24とその系列機(YF-24ファミリー)には、以下のような新技術が導入された。
- 高G機動時の慣性を一時的に緩衝するISC(Inertia Store Converter:通称「慣性バッファ」)。
- 高出力のステージII熱核タービンエンジン。
- 操縦支援インターフェイスおよび飛行パワードスーツとなるEX-ギアシステム。
- インプラント(サイボーグ化)技術と融合した、完全な脳波コントロール操縦 (VF-27) 。
- 希少な高純度のフォールドクォーツを搭載(YF-29、YF-30、VF-31)。
- 用途選択式のマルチパーパスコンテナユニット(YF-30、VF-31)。
『超時空要塞マクロスII』に繋がる設定における開発史
2054年、地球人類はログェス基幹艦隊の自動兵器工廠衛星をほぼ無傷で入手したことで、新たな軍事技術を入手する。これによりVFシリーズは従来の3倍もの出力を実現することになる。これによって生まれた次世代のVF-2シリーズは2091年のマルドゥーク軍との戦闘に投入される。
- ^ ただし、最初にデザインされたVF-1はロボットのデザインが先行し、変形機構を編み出す上でF-14に似た戦闘機形態にたどり着いており、ガウォーク形態も変形玩具の開発過程で偶然見出された経緯を持つ。なお、「VF-17 ナイトメア」や「VF-22 シュトゥルムフォーゲルII」をデザインした際に河森は「現実の航空機がステルス化に伴う装備内蔵により肥大化したのでデザインが楽になった」とコメントしている。
- ^ 「マクロスアルティメットフロンティア 超時空娘々パック」によるとVF-25のデザイン期間は3か月。
- ^ 「河森正治デザインワークス」 155頁によると「VB-6 ケーニッヒモンスター」は1994年のラフスケッチから完成の1998年まで4年かかっている。
- ^ ゼントラーディ軍のバトルスーツ、クァドラン・ローが搭載するイナーシャ=ベクトルコントロールシステムを、YF-21やVF-22が導入している。
- ^ マクロス・クロニクル No.36
- ^ 『マクロス ゼロ』に登場するVF-0とSV-51は試作戦闘機を実戦投入したという設定で、生産数も少ない。
- ^ 『マクロス・クロニクル No.48』 18頁
- ^ a b c 『THIS IS ANIMATION SPECIAL マクロスプラス』 小学館、1995年
- ^ a b 『マクロスデジタルミッションVF-X 最強攻略ガイド』小学館、1997年、81頁。
- ^ 「マクロスエース」 8号268頁
- ^ バジュラ本星決戦時において「今から20年ほど前に初めて独自開発した」と記述されている。
- ^ a b c 「マクロス・クロニクル」第46号 28頁。
- ^ マクロス・ザ・ライド 下 214頁
- ^ 河森は「バルキリーの機首の垂れ下がりは、F-14よりもF-4です」と述べている(『河森正治デザインワークス』、エムディエヌコーポレーション、2006年、187頁)。
- ^ a b 『河森正治マクロスデザインワークス』、ムービック、2001年、153頁。
- ^ デザイン発表後により形状が似たSu-47(S-37)が公表された。存在を知った河森は「カナード翼の位置がYF-19の没案にそっくりでびっくりした」とコメントしている(『フィギュア王 No.77』ワールドフォトプレス刊より)。
- ^ a b 『THE変形 河森正治デザインワークス展 「マクロス」〜「サイバーフォーミュラ」〜「アクエリオン」〜∞』パンフレット、2015年、18頁。
- ^ a b 型式番号が4桁台なのは「開発メーカー内で担当チームが異なる」イメージから。
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