修辞技法 誇張法

修辞技法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/21 13:35 UTC 版)

誇張法

言いたいことを強調して大げさに言う手法。

  • 天地がひっくり返ってもそれはありえない。
  • 死んでもこの土地は手放さない。
  • 耳の穴かっぽじってよく聞け

など。

列挙法・列叙法

ある特定の対象に対して、関連性のある単語、あるいは文章を立て続けに並べて強調する手法。

列挙法の用例
  • 地球温暖化、オゾン層破壊、森林伐採に酸性雨、地球を取り巻く環境問題は数え上げればきりがない。
列叙法の用例
  • このホテルが営業していた頃はこの辺も賑わっていた。しかし、かつての繁栄は見る影もない。辺りに人気は全く無く、薄暗い。建物のコンクリートはすっかり朽ち果てている。外壁には無数の蔓が巻き付いている。誰かが侵入したのか、無残に窓ガラスも叩き割られている。

折句

史的現在

「歴史的現在」とも。過去の出来事を、あたかもたった今行われているかのように書き表す手法。

撞着語法

撞着法ともいう。お互い背反する二つの真理をつなげる用法。一つの語句となっている例も多い。

用例
  • 慇懃無礼
    慇懃とは懇ろで礼節を弁えていること。無礼とは礼儀知らずのこと。慇懃無礼で表向きは敬意を払っているようで、心の裡では相手を見下している様子をいう
  • 必要悪
    本来悪は必要とされないが、社会、あるいは機構を動かしていく上で、犠牲にしなければならない、黙認せねばならない部分も存在するということ
など。

頓降法/漸降法

いろいろと肯定的な文面を列挙しておいて、最後に落ちとなる言葉を入れることで、全体を否定したり、滑稽な表現をしたりする方法。漸層法の一種と見なされる。頓降法の場合は、一旦盛り上げておいてから一気に落とす場合が多い。対して、段階的に落ちを利用する手法は「漸降法」と呼んでいる学者もいるが、反漸層法 (Anticlimax) 《→前述:#漸層法》の和訳である場合と頓降法(Bathos)である場合があり、かなり紛らわしくなっている。

頓降法

滑稽表現の用例
  • 広東料理はありとあらゆるものが食材になる。―足が生えて食材にならないのは人と机ぐらいなものだ。
    人が記述されているのは便宜上だが、落ちとなっているのは食材になろうはずもない机が含まれている点である。
全体否定の用例
  • この大作映画は凄い。独特の世界観、大物俳優の起用、セットの豪華さ、話題性、どれを取っても文句はないだろう。ただ、ストーリーがひどく稚拙だが。
    この評論家が訴えたいのは無論、最後の落ちの部分であり、結局瑣末なものは評価しても、根本が駄目なので作品自体は全く評価されていないと分かるだろう。

漸降法

慣例性のある任意の対象に対して階層化を行い、最後に落ちを持ってくる手法。コントや漫画で頻繁に用いられる三段落ちも漸降法である。

漸降法の用例
  • 地震、雷、火事、親父。
    古くから言われる俚諺であるが、1位、2位、3位の後、4位に大きく隔たられた対象を持ってくる手法で、滑稽表現を醸し出すことが多い。ここでは、実際父親が厳格な存在だったという象徴もあるが、自然の驚異とただの一個人を比較しているところに大きな落差が見られる。
    1. 「宝くじで三億円が当たったら何を買いたい?」
    2. 「外車」
    3. 「宝石」
    4. 「宝くじ三百万枚」
    このコントのように、落ち以外の対象は階層化が発生せず(願望として外車も宝石も同等と見て良いため)、平行線から急落する場合もあるが、これも漸降法に分類される。

黙説

省略法と区別される。言葉を始めておきながら、激情、節度を抑制するため、あえて言葉を濁らせ、文を完結させない手法。省略された部分は暗黙の了解で、読者に分かっていたり、また想像を膨らませたりするものもある。また、一番大事な部分をわざと遅らせる場合や逆に文の途中を中断する用例、黙説した部分を地の文で補完する場合もあり、これを『待望法』『逆中断』『暗示黙過』などと訳している。

黙説の用例
  • 自分を二軍に落としたあのコーチが許せない。…きっと今に…今に見返してやるから待っていろよ!
    ここでは反骨精神漲るその強い感情が全て省略されている。しかし、読み手とすれば、その中に渦巻いている悔しい気持ちが暗に読み取れるはずである。
未決/待望法の用例
  • 毎晩、終電近くまで仕事が押し迫る。なけなしの休みもいきなり呼び出される。職場の上司も自分は何もできないくせ、他人を叱ることだけは一丁前だ。なんで、こんな会社に自分がいる。できるものなら、今から全てを捨て、海外にでも出て行きたい。
    一番、大事な言葉は「出て行きたい」、すなわち会社を辞めたいという部分である。しかし、それを冒頭に置かず、末尾に置くことで、文章としては完結しておらず、あくまで主語の人物の願望、待望に留まっていることが読み取れる。
空間設定/逆中断の用例
  • 僕は、彼女に温めてきた想いを告げることにした。
     …彼女は静かにコクッと頷いた。
    おそらく、告白かプロポーズの場面であり、ここでは登場人物の台詞が一切省略されているが、前者と異なり、結論だけがしっかりと表現されている。
暗示黙過/暗示的看過法の用例
  • 恩師との別れが来ても、涙を見せてはいけない。彼はいつまでも、自分の成長を見守ってくれるよ。
    ここでは本当に「涙を見せてはいけない」のではなく、大いに悲しんで当然である、という意味である。このように言葉では否定文でも、内容は肯定となっている場合がある。
いわんやの修辞学の用例
  • 彼女の手料理を平らげるのはやっとのことだというのに、こればっかりは…。彼は一目散に、洗面所に向かっていった。
    況んやとは「尚更」という意味で、同事典で佐々木健一が補足を設けている。状況としては、登場人物の「彼女」は料理が苦手だと読み取れ、それを食べさせられる「彼」はある程度は何とか慣れているが、流石に「これ」は食べられなかったという結論である。こればっかりは…の後は省略されているが、後の彼の料理から背ける行動が記述されているので、暗示された内容は把握できるだろう。

  1. ^ 諷喩 とは - コトバンク”. デジタル大辞泉. 小学館. 2011年4月5日閲覧。
  2. ^ 野内 良三 (2005) 『日本語修辞辞典』 国書刊行会
  3. ^ 佐藤信夫他『レトリック事典』





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「修辞技法」の関連用語

修辞技法のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



修辞技法のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの修辞技法 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS