レッド暗号 レッド暗号の概要

レッド暗号

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/21 04:45 UTC 版)

概要

レッド暗号は「クリハ暗号 (en:Kryha)」を参考にされたが、当時の外交用機械暗号として最も貧弱な分類に入る。

歴史

  • 1931年 - 皇紀2591年に米陸軍がレッドと呼ぶ暗号機が完成。海軍は九一式印字機、外務省は暗号機A型と命名。
  • 1934年 - 英国がレッド解読に成功。
  • 1935年 - 米陸軍がレッド暗号の解読に着手。
    英国は"J machine"と呼ばれる模造機を作成する。
  • 1936年 - 米陸軍がレッド暗号の模造機を完成。
  • 1937年 - 独外務省の解読機関であるPers Zはレッド暗号文を集めて解読に着手する。
  • 1938年
    • Pers Zはレッドがクリハ式と似ている事に気付く。模造機は8月に完成し9月には開始位置符号も解明。
    • 12月、日本はレッド暗号を改良(キーボードとプラグボードの間に手動式ローターを挿入)。
  • 1941年
    • 1月、米国はレッドとパープルの模造機を英国に供与。
    • 8月、在外公館でのレッド暗号の運用が終了。

暗号機の構成

手動式のレッド模造機。内側(6字)と外側(20字)の2重式になったスライド式である事がわかる

米陸軍が製作したレッド模造機は以下の部品から構成される。なお手動式の模造機も製作された。

電動タイプライター

入出力用に英文用が2台。

プラグボード (Plugboard)

プラグボードは、入力直後と出力直前の2箇所にあって、アルファベットA - Zを単文字換字する。プラグボードの配線には法則があった。プラグボードを通過しても6つの母音 (A,E,I,O,U,Y) は必ず母音に変換され、母音用ハーフローターに送られた。つまり原文で母音だった箇所は必ず暗号文でも母音になっていた。同様に子音も子音だけに換字される。

1938年12月1日には、入力タイプライターとプラグボードの間に、アルファベット26文字を9文字、9文字、8文字に分割して変換する3組のローターが組み込まれ、機密性の高い電文の暗号化に用いられていた。暗号文のページごとに手動で規則的に回しており、エニグマのUhrローターと同じ設計と推定される。とはいえ、その頃にはアメリカ側も復号に習熟していたため、暗号強度の向上には寄与しなかったものとみられる。

外務省も運用後期の1936年頃には、母音 - 母音にこだわらないランダムな換字を採用したが、理論解読がなされ模造機が完成した後では手遅れだった。

ハーフローター (Half rotor)

エニグマのローター(鼓胴)と同様、スライド式の多表を生み出す。ハーフローターの配線には母音用 (AEIOUY) と子音用の2系統があり、それぞれの周期は6文字と20文字であるから、多表全体の周期は60文字となる。配線自体はレッドの運用期間を通して不変であり、文字の対応関係はプラグボードにより変更されていた。

ピンホイール (Pinwheel)

ハーフローターの移動量、すなわち多表スライド量を制御するホイールである。ピンホイールには47の歯 (pin) があり、その内5・6・11・12・17・20・30・31・34・39・40番目の11個だけがホイールから着脱可能。通常1文字を換字するたびにホイールはその歯1個分だけ回転し、2つのハーフローターも連動して1段階進む(次の多表にシフトする)が、もし歯が1本抜き去られていたら2段階、隣り合う2本の歯がなければ3段階進む。

外務省は抜き去る歯の本数を4・5・6の3通りと決めていたので、実際に使用される歯は41、42または43本。また取り外し可能な歯の配列からスライド量は1・2・3の3通りしかあり得ず、しかもスライド量が3となるのは4, (5), (6), 7と10, (11), (12), 13と29, (30), (31), 32と38, (39), (40), 41番目の4か所しか作り出せない。

鍵規約

暗号鍵の規約は以下の通り。

プラグボード

日本側の安易な鍵規約を米、独の解読機関がそれぞれ発見していた。

  • 1935 - 36年:1か月を3つに区切り(1 - 10日、11 - 20日、21日 - 月末)約10日毎に変更した。
  • 1937年以降:1、11、21日の鍵をスライドして残り9日分の鍵として毎日変更した。なおビルマ大使館員が1通5,000字以上の暗号文をしばしば送信したため、米陸軍はプラグボード変更への追随が容易だった。

開始位置符号 (indicator)

各暗号文の前には5桁の数字が付けられた。240通りある符号が指定されるとハーフローターとピンホイールの各スタート位置、そしてピンホイールから取り去るピンの位置が決まった。符号は運用期間中に変更されることがなかったので、米陸軍は鍵パターンを全て回収した。




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