マイクロフォン 用途による分類

マイクロフォン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/06 07:58 UTC 版)

用途による分類

ボーカルマイク

ヴォーカルマイク(vocal microphone)[3]とは、人の音(つまり歌声や話し声)を拾う目的で使われるマイクロフォンのこと。人間の音声の帯域幅の音をよく拾うマイクロフォンが選ばれる。ステージボーカルには、耐久性があり、吹かれに強く、低域をロールアウトした特性を持つ単一指向性マイクが適する。

インストゥルメント・マイク

インストゥルメント・マイク(instrument microphone)[3]とは、楽器の音響を拾う目的で使うマイクロフォンのこと。人の音声よりも広い帯域の音を拾うことができるもの[3]、より高音域や、より低音域の音を拾えるものでなければならない[3]

コンタクトマイク

音源に直接取り付けて使用するマイク。主に管楽器のホーン部、弦楽器の音孔の縁に取り付けて使われる。演奏を阻害しないよう小型にする必要があるためエレクトレットコンデンサー型が多い。 また、これとは別にコンタクトピックアップと呼ばれるものもあるが、これは空気振動ではなく音源の振動を直接電気信号に変換するもので、マイクロフォンとは区別される。

接話型マイク

口元に極近いところで利用することを前提に指向特性、周波数特性、感度を調整し、目的の声以外の音を拾いにくくしたマイク。接音マイクとも言う。

小型マイクユニットを2個内蔵し逆相接続されているものがある。口元からの距離に対する2個のマイクユニット間距離により個々のマイクユニット出力に無視できない位相差が出やすく、逆相接続でも位相差分が出力として得られる。これに対し周囲雑音は発生源位置が2個のマイクユニット間の距離に比して遠く、同相で個々のマイクユニットに届くため逆相接続によって相殺されやすい。

ラベリアマイク

俗に「タイピンマイク」と呼ばれる、クリップで衣服に取り付けて声を拾う小型マイク。話者が小型の無線送受信機を携え、音響機器に音声を飛ばすワイヤレスタイプが増えている。「コンタクトマイク」もラベリアマイクの一種である。この節全般に言えるが、分類はメーカー、販売業者、利用者によってまちまちであることに注意したい。

バウンダリマイク

バウンダリマイク(Boundary Microphone )、PZM(Pressure Zone Microphone )は、壁、床面等に貼るマイク。反射音の干渉が減り感度が高くなる。小型にする必要があるためエレクトレットコンデンサー型が多い。バウンダリマイクは正方形や三角形の板の中央に全指向性のマイクが埋め込まれている構造である。対してPZMは板に少し隙間を設けてマイクを取り付けて一度板に反射した音声を突起部内下向きに設置したマイクが集音する仕組であり、狭い空間の奧にマイクユニットを置いて反射音の影響をなくそうという構造をしている。指向性は半球型となっている。 背丈が低いので、目立たないという利点もある。 壁面に埋め込むタイプもある。

防水マイク(防雨マイク)

野外や湿気の多い場所で使用することを前提に開発されたマイク。一部の製品は浅い深度での水中で使用可能な物もある。野外(特に荒天下)、プールサイド等での利用を前提にしている。

水中マイク

水中に投入して使用することを前提に開発されたマイク。海中生物の生態調査等に利用される。

コンクリートマイク

分厚い壁の表面に取り付けることで、壁越しに音を聞くことのできるマイク。警察や探偵等が情報収集や犯罪調査で利用する。

ワンポイントステレオマイク

本来、ステレオ録音するためには、個別のマイク2本を2本のスタンドに取り付けたり、ステレオバーに取り付けて1本のスタンドに組み込むことで行ってきたが、一本の主軸に2つのマイクエレメントを組み込むことで、1本のマイクと同様の扱いやすさを可能にしたマイク。マイクエレメントの中心位置を同一軸に組み合わせるXYステレオ方式やMSステレオ方式のものがほとんどである。前者はエレメントを回転させてダイヤフラムの角度を調節できたり、ハンディレコーダー用には外側に傾けてABステレオ方式に切り替えられるものもある。MSステレオ方式は各マイクの信号レベルを簡易的に調節できるものもある。ノイマンのSM69、サンケンのCMS-2など有名機種が多い。さらに発展させた形式として、サラウンド収音用[注 10]や、VR動画の流行を追うようにして登場したVR音響のマイク[注 11]も存在する。そのほか、マイク間に20cm以内の距離を持たせたラジオ・フランス(ORTF)方式は同じマイク2本とスタンドへの取り付けで対応されることが多い中、SCHOEPSのMSTC64Uがあり、Superlux S502というほぼ同じ外見を持つ製品も生産されている。ヘッドフォン聴取を前提としたバイノーラル収音用途に人間の頭部、あるいは胸部から上を模したバッフルの耳部分にマイクエレメントを埋め込んだ「ダミーヘッド・マイクロフォン」も一種のステレオマイクである。直径20cmの球体の両端にマイクエレメントを配したKFM6(SCHOEPS)、BS-3D(T.H.E.Audio)はダミーヘッド方式から派生したバウンダリーマイクと言えるだろう。

用途としては、小柄で軽量であることが売りとなるペンシルタイプやテーブルスタンド用もさることながら、さらに小ささが求められるラベリアマイク(タイピンマイク)、1本の位相管にまとめられるステレオショットガンマイク、機動性が重要なハンディレコーダやビデオカメラスマートフォンデジタル一眼レフカメラ用など、非常に多彩である。

ヘッドセット

ヘッドセット (音響機器)は、スピーカーとマイクが一体型になっており、通信に用いられるものである。(なお、これに対して「ハンドセット」のほうは、いわゆる“電話機の受話器”である。)

骨伝導マイク

人体の頭部または頚部に直接接触させ、音声を拾う装置。空気中の音波を拾うわけではないため、むしろコンタクトピックアップの一種だが、便宜上マイクと呼ばれる。携帯電話、無線通信、ライダーやドライバーの交信など、騒音下でも小さな声を確実に捕らえる必要がある場合に用いる。

スタンドマイク

[誰?][要検証]スタンドマイクの定義は、固定型(据置型)の無線機に用いるマイクだ[要出典]」。机の上に置いて使う。後述のPTTスイッチが付いている。無線通信に適した音質になるように、コンプレッサフィルタ回路等が付いていることがある。なお、「スタンドマイク」という呼称はしばしば、床置型マイクスタンドに設置されたマイクに対する俗称としても用いられる(卓上に置かれるのは「デスクマイク」とも呼ばれる)。


注釈

  1. ^ 「マイクロフォン」の方が英語に近いが、『学術用語集 電気工学編』では「マイクロホン」が正式表記になっている。
  2. ^ 概して口径が小さくなるほど高域の周波数特性が伸び、等価雑音レベルは増加する。コンデンサーマイクでは成極電圧を高くする事で感度を上げ相対的にノイズを低減させる事が可能で、ファントム電源48Vを昇圧する機能を持つCO-100KやC617(Josephson Engineering)といった小口径ダイヤフラムマイクも存在する。
  3. ^ 2008年にSHUREが買収したCROWLEY AND TRIPP社が実用化。KSM313、353として販売継続されている。
  4. ^ 特殊な例として、非対称・非円形ダイヤフラムを用い共振を抑制したFlamingo Magic Ear(Violet Design)、非平面ダイヤフラムにより20~50kHzの超音波域に共振周波数を設け、100kHzまでの収音を可能にしたCO-100K(NHK技研サンケンの共同開発)といった製品がある
  5. ^ SENNHEISERのMKHシリーズが著名だが商品化は1950年(昭和25年)STAXが既に行っている。同社製品にはやはり「高周波バイアス方式」を応用したレコード針も存在した。参照ページ[1]
  6. ^ Micro Electronics Mechanical Systemsの略、デジタル出力を持つ製品もある。
  7. ^ ポータブルレコーダーではファンタム電源に充分な電流を供給出来ないものがあり、消費電流の大きいマイクロフォンを使用した場合瞬間的な大音量が再現出来ない、歪みが増加するなど影響がある。
  8. ^ 数Hzの超低音も一緒に減衰されるが、ローカットのフィルターが常用される人声収録用途では影響は殆ど無い。ただしダイナミックマイクやリボンマイクでは数Hzのローカットさえ不利とする見方もあり、GRACE DESIGN製プリアンプでは通常のトランス非搭載回路に加えコンデンサーを使わないシグナルパスも設けている。
  9. ^ DPA4041T2およびS。専用パワーサプライ/プリアンプのHMA5000仕様書(ただし原語版)による。2013年現在製造終了。
  10. ^ サンケンのWMS-5
  11. ^ SENNHEISERのAMBEO VR Mic
  12. ^ コンデンサータイプのマイクと3ピンXLRケーブル1本で通信し、サンプリング周波数384kHzまでのデジタル信号に加えクロック、10Vのファントム電源にコントロール信号まで供給するAES42規格が策定されており、専用デジタルインターフェースと組み合わせる方法でSCHOEPS、NEUMANN、SENNHEISERが製品化。直接入力に96kHzサンプリングまで対応したポータブルレコーダーがAETA、SoundDevicesから発表されており、複数の出力を束ねてマルチチャンネルのデジタル音声を送出するインターフェース単体もNEUMANN、RME製品がある。以上のΔΣ変調に対応しないマイクとは別に、携帯電話や小型ビデオカメラ用の電子部品として小型マイクユニットをシリコンチップに埋め込みアンプとΔΣコンバーターを組み合わせた「デジタルシリコンマイク(3.25MHzPDM)」も流通している。
  13. ^ 1 Pa=94 dBSPL.

出典

  1. ^ mouser社カタログ特性例 (PDF)
  2. ^ https://www.audio-technica.co.jp/microphone/navi/ionic/index.htmlおよび http://tokkyoj.com/data/tk2009-218860.shtml
  3. ^ a b c d [2]
  4. ^ Q&A 01:ワイヤレスマイクとラジオマイクの違いは?(特定ラジオマイク運用調整機構






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