ブナ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/29 01:26 UTC 版)
生態
ブナは保水力が大きく湿り気がある森林を形成する[4]。多雪環境に極めて強く、日本海側の気候に適応した樹木とされている[20][21]。ブナは極めて多雪な地域では樹形を変化させ、地を這うような(匍匐型)ものに変わる。これは多雪環境に適応した樹木によく見られる特徴であり[22][23]、ユキツバキやヒメアオキでも知られている。
日本海側ではしばしばブナが優先し純林を形成するが、太平洋側に降りると純林はあまり見られず、ミズナラなど他樹種との混交林を作る。これは雪が少ないという気候的な面だけではなく、古くから人が入り山火事の多発などにより遷移が退行した面もあるとされる[24]
ブナの果実は多くの哺乳類の餌として重要であり日本では2003年はニホンツキノワグマが多数里に出てきたことで知られるが、この年はブナの不作の年でもあった。しかしブナは基本的に毎年不作であり、5-10年に一度豊作になるだけである。さらに、ブナがより不作だった2004年には出没例は2003年より少なく、全国的に過去に例がないほどのブナの豊作となった2005年にはクマの出没が増加した地域と減少した地域があった。以上から、ツキノワグマの出没とブナの豊不作は必ずしも相関がないとの説もある。
ブナの葉にはタマバエ科の昆虫による虫こぶがつきやすく、26種の虫こぶが知られている[25]。葉の分解は非常に緩慢であり、その分解が細菌によってなされる環境では土壌は改善されるが、主にキノコによって分解される環境では酸性の粗腐植が作られ、他の土壌生物の土壌を改善する活動を阻害する。そのため、森の養母とも称えられるが、粗腐植の主要因としてネガティブな評価を受けることもある[26]。
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太平洋側、丹沢山地 堂平のブナ林(6月)
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丹沢山地 堂平のブナ林(10月)
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丹沢山地 堂平のブナ林(3月)
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奥志賀(8月)
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八甲田 南股山付近 ブナ林(3月)
- ^ a b c d e f g 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Fagus crenata Blume ブナ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年11月11日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Fagus crenata Blume f. grandifolia (Nakai) Hayashi ブナ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年1月22日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Fagus undulata (Blume) Buerger ex Miq. ブナ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年1月22日閲覧。
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- ^ a b c 辻井達一 1995, p. 100.
- ^ a b 亀田龍吉 2014, p. 114.
- ^ a b c 辻井達一 1995, p. 104.
- ^ しばしば登場する種小名の意味
- ^ 辻井達一 1995, p. 101.
- ^ (企画編集)千葉県農林総合研究センター森林研究所 編『里山活動によるちばの森づくり 広葉樹林の管理』(PDF) 6巻、千葉県農林水産部森林課〈里山公開講座〉、2010年2月 。 - こちらのリンク先より閲覧可能。
- ^ 全国ブナ林フォーラム開催のお知らせと参加者の募集について只見町(2019年3月13日閲覧)。
- ^ a b c d e f 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 149
- ^ 亀田龍吉 2014, p. 115.
- ^ 苅住昇「ブナ(シロブナ)」『最新 樹木根系図説 各論』p296-p297 誠文堂 2010年
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- ^ 四手井綱英 (1956) 裏日本の亞高山地帯の一部に針葉樹林帯の欠除する原因についての一つの考えかた. 日本林学会誌38(9), p.356-358. doi:10.11519/jjfs1953.38.9_356
- ^ 石沢進 (1985) 植物の分布と積雪―新潟県およびその周辺地域について―. 芝草研究14(1), p.10-23. doi:10.11275/turfgrass1972.14.10
- ^ 中静透 (2003) 冷温帯林の背腹性と中間温帯論. 植生史研究11(2), p.39-43. doi:10.34596/hisbot.11.2_39
- ^ 加藤真「虫こぶの話」(『週刊朝日百科植物の世界』62、1995年6月25日、朝日新聞社)、6の63頁。
- ^ a b c ヨアヒム・ラートカウ『木材と文明:ヨーロッパは木材の文明だった。』山縣光晶訳 築地書館 2013 ISBN 9784806714699 pp.42-44.
- ^ 辻井達一 1995, p. 103.
- ^ 「ブナ材が枕木に 防腐剤の注入で十年はもつ」『日本経済新聞』昭和25年12月8日
- ^ 四柳嘉章『漆の文化史』(岩波書店、2009年、ISBN 978-4-00-431223-9)120頁。
- ^ “国指定文化財等データベース”. 文化庁. 2013年11月11日閲覧。
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