バーチャル・リアリティ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/07 03:26 UTC 版)
バーチャル・リアリティという言葉について
バーチャル・リアリティ
バーチャル・リアリティ/virtual realityは、もともとシュルレアリスムの詩人アントナン・アルトーが造語[45]した芸術用語であった。現在のような意味では「バーチャル・リアリティの父」[46][47]と呼ばれるジャロン・ラニアーらが普及させた。
「バーチャル・リアリティ」は、たとえば、人間が行けない場所でのロボット操作などの応用や、コンピュータ上の作り出す仮想の空間を現実であるかのように知覚させることなどに使用される。現実の光景にさまざまなデジタル情報を重ね合わせて表示する技術の拡張現実 (Augmented Reality) とは異なる。
1990年代はじめまで「人工現実感/artificial reality」という言葉があったが、「仮想現実/virtual reality」に押されて衰退した[48]。
仮想現実
英語の "virtual" は本来「厳密には異なるがほとんど同様の」という意味であり、「バーチャル・リアリティ」はその一例である。一方自然科学分野の文脈においては「物理的には存在しないもののそのようにみえる」という意味で用いられ、電子工学用語の仮想接地という用語の英文は「Virtual ground」と呼ばれている。実際に接地されているわけではないが、理屈上接地しているという概念である)。
「仮想」という言葉は、本来は「仮に想定すること」を意味するが(仮想敵/imaginary enemyなど)、コンピュータ関連の文脈においては、上記のような意味における "virtual" の訳語として用いられている(仮想ドライブ/virtual drive など)。よって"virtual reality" は「仮想現実」と訳される。
明治時代の日本では「強キ」「能アル」「ハタラキアル」などと訳されたが、物理学の学術用語として「虚」「假(仮の旧字体)」があてられ、虚像/virtual imageなどの言葉も生まれている。少なくとも1928年には『物理学用語新辞典』において「假想」の訳後が存在しており、その後定着したものとみられ、1972年に日本IBMがvirtual storageを「仮想記憶装置」と訳した際には、特に異論は出なかった[48]。
しかし現在使われている「仮想」は原義よりも虚な感じがあり、誤解を与えかねない訳語であるとして別の訳語をあてるべきとの意見が1990年代半ば頃からある[48]。東京大学大学院教授(当時)の舘暲は、2005年の日本バーチャル・リアリティ学会第10回大会において、バーチャル・リアリティの訳語として、「現実」という語を提案した。はこのために提案された国字で、立心偏に實(実の旧字体)と書き、「ジツ」または「ばーちゃる」と読む[49][50][51]。
その他の言語では、virtual realityに対し、簡体字では虚拟现实(虚擬現実)、繁体字では虛擬實境(虚擬実境)をあてている。
注釈
出典
- ^ NTT docomo, ITトレンド用語、バーチャル・リアリティ
- ^ [https://www.merriam-webster.com/dictionary/virtual%20reality Merriam-Webster, virtual reality.
- ^ “米家電見本市「近未来」の仮想現実や自動運転が続々”. 産経ニュース (2022年1月5日). 2022年1月5日閲覧。
- ^ “VRとは - IT用語辞典”. 2016年5月11日閲覧。
- ^ “「VR=仮想現実」ではない? VRの“第2次ブーム”で世界はどう変わる (1/3)”. 2016年5月11日閲覧。
- ^ “Pygmalion's Spectacles”. Project Gutenberg. 2014年9月21日閲覧。
- ^ Sutherland, I.E.. “The Ultimate Display”. Proc. IFIP 65 (2): 506-508, 582-583.
- ^ “知覚的リアリティの科学 (2)バーチャルリアリティ――リアリティをつくり,変える技術”. 2016年5月11日閲覧。
- ^ Cruz-Neira, C.; Sandin, D.J.; DeFanti, T.A. (1993). "Surround-Screen Projection-Based Virtual Reality: The Design and Implementation of the CAVE". Proceedings of SIGGRAPH '93 Computer Graphics Conference. SIGGRAPH '93 Computer Graphics Conference. ACM SIGGRAPH. pp. 135–142.
- ^ 「流行語VRをテーマに TVゲーム開発を探る NHK衛星が4夜にわたって特集番組」『ゲームマシン』(PDF)、第435号(アミューズメント通信社)、1992年10月1日、9面。2021年3月12日閲覧。
- ^ “PSVRを機に振り返るVR・立体視ゲームの歴史(その2)”. 2017年1月13日閲覧。
- ^ さよならCABINシンポジウム(2012年12月18日火)
- ^ 株式会社VRテクノセンター
- ^ COSMOS
- ^ HMDがダメだといわれた時代 - CABIN誕生
- ^ “西田宗千佳のRandomTracking 特別編:「バーチャルリアリティー」の歴史を俯瞰する 全ては1960年代から。「Oculus」の衝撃とその未来”. 2016年5月11日閲覧。
- ^ “石井英男の「週刊Gear VR」(第1回): 据え置き機と遜色なし! 「GALAXY×Gear VR」で気軽に楽しめる“VR”の世界 (1/3)”. 2016年5月11日閲覧。
- ^ “西田宗千佳のRandomTracking PC一体型HMDも登場。“VRに本気”のAMDが示す「スマホの次は没入感の時代」”. 2016年5月11日閲覧。
- ^ “ニュースでよく見る「バーチャルリアリティ」ってどんなもの?”. 2016年5月11日閲覧。
- ^ “Access Accepted第496回: VRゲーム市場は立ち上がるか?”. 2016年5月11日閲覧。
- ^ プロダクション・アイジーが手がけたVR作品がベネチア国際映画祭VR部門から正式招待
- ^ REALIVE360公式サイト
- ^ “VR 酔い対策の事例”. 2016年5月11日閲覧。
- ^ “VRヘッドセットOculus Riftがまた大幅値下げ。Touchセットで5万円、半年前の半額以下”. 2020年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年7月12日閲覧。
- ^ “11 new PS VR2 games announced: The Dark Pictures: Switchback VR, Cities VR – Enhanced Edition, Crossfire: Sierra Squad and more” (英語). PlayStation.Blog (2022年11月2日). 2022年12月10日閲覧。
- ^ “VR eスポーツまとめ!VRのeスポーツ競技は何がある? | VR Inside”. vrinside.jp (2020年1月4日). 2022年6月26日閲覧。
- ^ “日本初!eスポーツ観戦ができるバーチャル空間「V-RAGE」アジア最高峰のeスポーツ国際大会「RAGE ASIA 2020」開催に合わせて正式ローンチ。外観や演出がアップデート!”. プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES. 2022年6月26日閲覧。
- ^ “日本IBMと順天堂大学、医療メタバースで共同研究”. 日経速報ニュースアーカイブ. (2022年4月13日)
- ^ “「メタバースで病院運営」 東南アジア、遠隔医療の未来”. 日経速報ニュースアーカイブ. (2022年2月22日)
- ^ “心の不調、ゲーム・VRで治療”. 日本経済新聞. (2020年8月27日)
- ^ 不二門尚 (2012). “小児の両眼視と3D”. 日本視能訓練士協会誌 41: 19-25.
- ^ VRによる斜視リスクに“企業はどう対策しているのか”を聞いた
- ^ 健康のためのご注意
- ^ VR酔いを防ぐにはどうしたらいいのか?
- ^ サイゲームス社長・渡邊耕一氏が『M∀RS』を語る! 「いまのサイゲームスがあるのは『ANUBIS』を遊んだおかげ」 - [ファミ通]
- ^ 高価格帯VRヘッドセット、普及が足踏み
- ^ 大越章司「2022年はついにVR/AR普及の年となるのか:Mostly Harmless:オルタナティブ・ブログ」
- ^ WallS treet Journal, MIRIAM GOTTFRIED(2017年5月22日) 「VRヘッドセット、なぜ売れないのか[2] 」
- ^ 米国の大手VRメディアがVRへの3つに懸念に反論。「失敗した3Dテレビ、バーチャルボーイとは違う」 - Mogura VR News
- ^ 中国VRスタートアップの9割が倒産 中国のVR産業は崩壊するのか?
- ^ さよなら、Google――彼らは本当にVRから撤退するのか? - Mogura VR News
- ^ スマホでVRは終焉へ、グーグルはなぜ失敗したのか(2ページ目) | 日経クロステック(xTECH)
- ^ アップルの“新しいVRデバイス”は、新たなテクノロジーの波の到来を占う試金石になる
- ^ “【VRヒストリー】The Eyephonesの続き。超人気劇団の戯曲が描いた「VR」とは何か - VRonWEBMEDIA(ヴイアール・オン)”. 2021年4月3日閲覧。
- '^ Antonin Artaud, "The Alchemical Theater", in The Theater and its Double, trans. Mary Caroline Richards, New York: Grove Press, 1958, p. 49, emphasis in original. See also Samuel Weber, "'The Virtual Reality of Theater': Antonin Artaud", in Theatricality as Medium, New York: Fordham University Press, 2004, pp. 277-94.
- ^ Savage, Emily (2010-10-20). "Renaissance man: Berkeley resident is a musician, a Web guru and the father of virtual reality". j. the Jewish news weekly of Northern California. Archived from the original on 2011-03-06.
- ^ Appleyard, Bryan (2010-01-17). "Jaron Lanier: The father of virtual reality". The Sunday Times. Archived from the original on 2011-03-06.
- ^ a b c d 谷 卓生「VR=バーチャルリアリティーは,“仮想”現実か~“virtual”の訳語からVR の本質を考える~」
- ^ 舘 暲 (12 2005). “第10回を記念する新字(ばーちゃる)の提案”. 日本バーチャルリアリティ学会誌 10 (4): 18-19 .
- ^ “日本バーチャルリアリティ学会第11回大会 大会長挨拶”. 2007年11月24日閲覧。
- ^ バーチャルリアリティ学. 日本バーチャルリアリティ学会. (2011)
- ^ “高橋幸治のデジタルカルチャー斜め読み ― 第22回 VRが盛り上がり始めると現実に疑問を抱かざるをえない”. 2016年5月11日閲覧。
- 1 バーチャル・リアリティとは
- 2 バーチャル・リアリティの概要
- 3 基礎となる技術と応用
- 4 VRの医療面における活用
- 5 バーチャル・リアリティという言葉について
- 6 他
- バーチャル・リアリティのページへのリンク