バイポーラトランジスタ 定格

バイポーラトランジスタ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 20:57 UTC 版)

定格

電気的特性・条件を示す項目として、次のような項目が主に用いられる。

hFE(直流電流増幅率)
エミッタ接地回路に使用したときのベース電流に対するコレクタ電流の比率。一般にコレクタ電流がある値で最大となり、それ以上のコレクタ電流では低下する。また、周囲温度が上がると上昇する。同じ型番でも個々の製品ごとの差が大きいため、増幅率の値を示すランクが付けられていることが多い。一般的には50 - 200程度。ゲルマニウムトランジスタでは漏れ電流が大きく、直流での正確な増幅率を測定することが困難なため、交流信号に対する増幅率hfeで表記されることがある。増幅回路における電圧増幅度は負荷抵抗によって決まるため、hFEの大きなトランジスタを用いれば増幅度が大きくなるとは限らない。ただし、hFEの大きなトランジスタを小電流で動作させると高い入力インピーダンスが得られ、雑音も少なくなるため、オーディオ用アンプなどではhFEが高く低雑音のトランジスタが多用される。
VBE(ベース-エミッタ間電圧)
冒頭の説明にもあるように、ベース-エミッタ間のダイオード接合に発生する電圧。通常、シリコントランジスタでは0.6V前後である。VBEはコレクタ電流が増加すると少しずつ上昇し、周囲温度が上がると下降する。ただし、コレクタ電流が増加するとトランジスタは発熱するため、結果的にはコレクタ電流が増加するとVBEは下降していく。このことは、回路の設計によっては熱暴走の原因になる。
fT(遮断周波数、トランジション周波数)
増幅率が1になる周波数。使用する周波数に対して十分に余裕を見て選定する。あるコレクタ電流で最高となる。

また、電気的条件の許容値(最大定格)が定められており、これを超える条件で使用してはならない。最大定格として主に次のような項目がある。

VCEO(最大コレクタ電圧)
ベースを開放した場合に、エミッタとコレクタ間に加えられる最大の電圧。これを超えると接合部がなだれ降伏を起こし破壊される。使用できる電源電圧の基準にすることが多い。エミッタを開放した場合にベースに加えられる最大電圧はVCBOと表記され、VCEOより若干大きな値となる。
IC(最大コレクタ電流)
コレクタに連続的に流すことができる電流、もしくは実用に耐えうる増幅率が得られる最大のコレクタ電流。
PC(最大コレクタ損失)
トランジスタ内部で許容される最大の電力損失。周囲温度は25℃を基準としているため、それより高温の場合は値が低下する。中・大型の品種は、規定の放熱器を取り付けた場合の値で示されており、それより小さな放熱器を用いる場合には値が低下する。最大コレクタ電圧と最大コレクタ電流を同時に加えると最大コレクタ損失を大きく超えるので注意を要する。

バイポーラトランジスタは非常に種類が多い(約10,000種類)が、古い製品の多くが生産終了となっており、さらに個人が使う場合は一般に出回っているトランジスタが全体のごく一部の種類だけであることもあって、必要な型番の製品が入手できないことがある。その場合は、定格値が近い製品を代替品として用いれば事が足りることが多い。代替品種を示した専用の規格表[1]もある。


注釈

  1. ^ 「2極の」という意味。
  2. ^ 点接触型のトランジスタは点接触部が機械的な衝撃やパッケージの熱膨張などで簡単に破損してしまうなど信頼性が非常に低かったため、信頼性にまさる接合型が発明され接合型の性能(周波数特性など)が向上すると、姿を消した。
  3. ^ 第2トランジスタのコレクタ-エミッタ間飽和電圧第1トランジスタのコレクタ-エミッタ間飽和電圧第2トランジスタのベース-エミッタ間電圧 のとき。

出典

  1. ^ トランジスタ技術編集部 『最新トランジスタ規格表&互換表〈2008/2009〉』CQ出版、2008年。ISBN 978-4789844628 






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