タットヴァ (ジャイナ教)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/07/22 22:36 UTC 版)
ジーヴァ
ジャイナ教では霊魂つまりジーヴァ(jīva)が実在の一つとして存在し、肉体とは区別される存在であって肉体の中に住まっていると信じられている。ジーヴァは「チェータナー」(cetanā、意識)や「ウパヨーガ」(upayoga、知識や認識といった精神作用)などの特徴を持つ[2]。霊魂は生と死を経験するが、生や死によって霊魂が本当に破壊されたり新たに作られたりするわけではない。死と生はそれぞれ、霊魂の一つの状態が消えることと霊魂の別の状態が現れることを指しており、破壊されたり作られたりするのは魂自体ではなく魂の様態にすぎない[3]。
アジーヴァ
アジーヴァ(Ajīva)は五つの生きていない実体であり、ジーヴァとともに宇宙を構成している。その内訳は以下:
- プドガラ(Pudgala、物質) –プドガラは固体、液体、気体、エネルギー、微細なカルマの元素、そして極端に微細な物体つまり素粒子に分類される[4]。パラマーヌ(Paramānu)つまり素粒子は全ての物質の構成要素とされる。パラマーヌおよびプドガラは不生不滅で破壊できないという特徴を持つ。これらは結合したりその様態が変化したりするがその基本的な性質は変わらない。ジャイナ教によればこれらは新たに生まれることも破壊されることもない。
- ダルマタットヴァ(Dharma-tattva、運動の媒体)とアダルマタットヴァ(Adharma-tattva、静止の媒体) – これらはダルマースティカーヤ(Dharmāstikāya)とアダルマースティカーヤ(Adharmāstikāya)とも呼ばれる。これらはジャイナ思想に特有のもので、運動と静止の原理を表す。これらは宇宙全体に充満しているとされる。ダルマタットヴァとアダルマタットヴァはそれ自体が運動や静止であるというわけではないが他の物体の運動や静止を媒介する。宇宙にダルマースティカーヤがなければ運動することができないしアダルマースティカーヤがなければ静止することができない。
- アーカーシャ(Ākāśa、虚空) – 虚空はその中に霊魂、物質、運動の原理、静止の原理、時間が収まっている実体である。虚空は全てを覆い尽くしていて、無限であり、無数の空間単位から成る。
- カーラ (Kāla、時間) – ジャイナ教において時間は実在する存在であり、あらゆる活動、変化、修正は時間を通じてのみ達成される。ジャイナ教では時間は十二の輻を持つ車輪に例えられる。その車輪は上昇する側半分と下降する側半分に分けられ、それぞれがさらに六つの段階を持ち、各段階は「サガロパマ」つまり大洋年と呼ばれる非常に大きな時間の単位で計られる[5]。ジャイナ教徒によれば、下降する側半分では徐々に悲痛が増大し、上昇する側半分では徐々に幸福が増大するという。
アースラヴァ
アースラヴァ(āsrava)とはカルマの流入を指す。アースラヴァが起こるのは、心、言葉、体の活動によって作り出される振動のためにカルマの微粒子が霊魂に誘引されるときである[6]。 『タットヴァールタスートラ』(6:1–2)ではこう述べられている:[7] 「身体・言葉・心の活動はヨーガと呼ばれる。この三種類の活動によって「アースラヴァ」つまりカルマの流入が起こる[8]。」
|
- ^ *Soni, Jayandra; E. Craig (Ed.) (1998). “Jain Philosophy”. Routledge Encyclopedia of Philosophy (London: Routledge) 2008年3月5日閲覧。.
- ^ Nayanar, Prof. A. Chakravarti (2005). Pañcāstikāyasāra of Ācārya Kundakunda. New Delhi: Today & Tomorrows Printer and Publisher. ISBN 81-7019-436-9. , Gāthā 16
- ^ Nayanar, Prof. A. Chakravarti (2005). Pañcāstikāyasāra of Ācārya Kundakunda. New Delhi: Today & Tomorrows Printer and Publisher. ISBN 81-7019-436-9. , Gāthā 18
- ^ Shah, Natubhai (1998). Jainism: The World of Conquerors. Volume I and II. Sussex: Sussex Academy Press. ISBN 1-898723-30-3.
- ^ James, Edwin Oliver (1969). Creation and Cosmology: A Historical and Comparative Inquiry. Netherland: BRILL. ISBN 90-04-01617-1. p. 45
- ^ a b Jaini, Padmanabh (1998). The Jaina Path of Purification. New Delhi: Motilal Banarsidass. ISBN 81-208-1578-5. p. 112
- ^ Kuhn, Hermann (2001). Karma, The Mechanism : Create Your Own Fate. Wunstorf, Germany: Crosswind Publishing. ISBN 3-9806211-4-6. p. 26
- ^ Tatia, Nathmal (tr.) (1994) (Sanskrit - English). Tattvārtha Sūtra: That which Is of Vācaka Umāsvāti. Lanham, MD: Rowman Altamira. ISBN 0-7619-8993-5. p. 151
- ^ Sanghvi, Sukhlal (1974) (trans. K. K. Dixit). Tattvārthasūtra of Vācaka Umāsvāti. Ahmedabad: L. D. Institute of Indology.
- ^ a b T. G. Kalghatgi, Philosophy East and West, Vol. 15, No. 3/4, (Jul. - Oct., 1965), pp. 229-242 University of Hawai Press
- タットヴァ (ジャイナ教)のページへのリンク