スペースシャトル固体燃料補助ロケット SRBの将来および提案されている使用法

スペースシャトル固体燃料補助ロケット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/10 00:46 UTC 版)

SRBの将来および提案されている使用法

サターンV、スペースシャトル、アレスI、アレスV、アレスIV、SLSブロックI、SLSブロックIIの比較

NASAはSRBの設計や基本構造を、アレス・ロケットに応用する計画であった。2005年には、オリオン宇宙船を地球周回低軌道に乗せ、さらには月に向かわせるためのシャトル派生型運搬ロケットを発表した。アレスIと呼ばれるSRB派生型の有人ロケットは、第一段にはシャトルと同じ4セグメント型のSRBを使用し、第二段にはシャトルのメイン・エンジンを改良したものを一機搭載して、オリオン宇宙船を軌道に乗せる予定であった。

2006年の修正案では第一段に5セグメント型のSRBを導入することは却下されたものの、第二段にはアポロ計画サターン5型ロケットサターンIB 型ロケットで使用されたJ-2ロケットエンジンを改良した J-2Xが搭載されることになった。また先端部分はSRBのような円錐形のキャップではなく第二段ロケットとの接続リングになり、そこに レギュラス・ミサイルのものを改良した高度計や、機体を大西洋上で回収するためのより大きくて重いパラシュートが収納されることになっていた。

また2005年に発表された案の中には、アレスVと呼ばれる重量級の運搬ロケットも含まれていた。初期のデザインでは、アレスVは第一段にシャトルで使用されていたSSMEと同じものを5機と、5セグメントに増強したSRBを2機搭載することになっていたが、その後の変更でメイン・エンジンにはデルタIVで使用されていたRS-68ロケットを流用することになった。NASAとしては、最初は5セグメントSRBと5機のRS-68を使用するが(これにより、アレスVの直径は若干大きくなった)、将来的には6機のRS-68B(性能は現行のSSMEと変わらないが、コストは半分になる)と、推力をさらに増強した5.5セグメントSRBを使用する予定であった。

改良案によれば、アレスVはサターン5型ロケットやロシアN-1、あるいはエネルギアなど、これまでに作られたいかなる巨大ロケットよりも大型で強力なものになり、アルタイル宇宙船や地球軌道離脱ロケットを低軌道に乗せることができるはずであった。アレスI の5セグメントSRBと違い、アレスVの5.5セグメントSRBは追加された0.5セグメント以外は設計や構造など現行のSRBと同じものである。回収や再使用の方法については最終的な判断はなされていなかったが、シャトルで用いられているのと同様のものが使用され、発射から着水までの軌道は現在と変わらないものになるであろうと予想された。

シャトル技術を応用した最新の「DIRECT案」では、上記のアレスI やアレスVとは違い、現行のシャトルに使用されているものと同じSSMEと4セグメントSRBを使用することになっていたが、これらはすべてオバマ大統領がコンステレーション計画を中止したことにともない、白紙状態となった。

2011年に発表された新たなシャトル後継ロケットのスペース・ローンチ・システム (SLS) では、初期バージョンであるブロックIにおいて5セグメントSRBが使用されることが計画されている。


注釈

  1. ^ 「固体燃料推進器 (solid rocket booster, SRB)」と「固体燃料ロケット (solid rocket motor)」はしばしば混同されるが、技術的にはそれぞれ独自の意味を持つ。「推進器」とは、回収用パラシュート・電子機器・分離用ロケット・安全用自爆装置・推力偏向装置などを含むロケット全体の装置を指すのに対し、「固体燃料ロケット」は燃料・外殻・点火装置・ノズルによって構成されるロケットそれ自体を表す。
  2. ^ 一例を挙げれば、シャトル初飛行のSTS-1で使用された本体下方部分は、その後30年間に6度飛行し、一回の燃焼試験を受け、2009年にはアレスI ロケットの試験飛行でも使用された。アレスI 自体も、シャトルの48回の飛行と5回の地上試験で使用された別々のSRBの部品を寄せ集めて作られたものであった。NASA Ares I First Stage Motor to be Tested August 27”. NASA (2009年8月17日). 2010年3月29日閲覧。

出典

  1. ^ Shuttle Solid Rocket Booster Facts”. NASA. 2010年4月2日閲覧。
  2. ^ A Horse’s Behind, and Railroad Tracks, オリジナルの2014年8月27日時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20140827145838/http://nonsensefactory.com/a-horses-behind-and-railroad-tracks/ 
  3. ^ a b Solid Rocket Booster (SRB) - Evolution and Lessons Learned During the Shuttle Program”. NASA. 2022年2月17日閲覧。
  4. ^ Salt Water Activated Release for the SRB Main Parachutes (SWAR)”. NASA (2002年4月7日). 2010年4月2日閲覧。
  5. ^ Report of the Presidential Commission on the Space Shuttle Challenger Accident, Chapter IV: The Cause of the Accident”. NASA. 2010年4月2日閲覧。
  6. ^ Space Shuttle Challenger Case”. 2010年4月2日閲覧。
  7. ^ Orbiter Manufacturing and Assembly”. NASA. 2010年4月2日閲覧。
  8. ^ "Jerry L. Ross" NASA Johnson Space Center Oral History Project, 26 January 2004.
  9. ^ Jenkins, Dennis R. "Space Shuttle: History of the National Space Transportation System – The First 100 Flights"
  10. ^ NASA and ATK Successfully Test Ares First Stage Motor”. NASA. 2010年3月29日閲覧。





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