ストリキニーネ 文化

ストリキニーネ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/11 16:30 UTC 版)

文化

ストリキニーネ中毒は、人と動物に対して致命的な影響を与えうる中毒である。任意の既知の毒性反応のなかでも最も劇的な痛みを伴う症状を引き起こすもののひとつで、しばしば文学や映画(おおむね殺人事件)で描かれている。

また、マラリアの特効薬であるキニーネとの混同も見られる。

  • TVアニメ母をたずねて三千里 - 肺炎治療薬として登場するが、翌週放送のラストで、キニーネの誤りである旨がテロップで付加された。再放送でもストリキニーネを治療薬として放送した回の次回のラストでそのテロップが表示される。
  • ジュール・ヴェルヌ作『神秘の島』 - マラリア治療薬
  • マラリア治療薬「キナポン」 - キニーネとストリキニーネの合剤[11]

ドーピング

かつては興奮剤としてドーピングに用いられた。著名な例としては、1904年セントルイスオリンピックマラソンで金メダルを取ったトーマス・ヒックスが挙げられる。

ストリキニーネには運動向上能力はないとされるが、2019年現在も世界アンチ・ドーピング機構により禁止薬物に指定されている[12]

全合成

ストリキニーネの構造決定に貢献したロバート・ロビンソンは、「この分子量としては、知られる限りにおいて最も複雑な有機化合物(for its molecular size it is the most complex organic substance known)[13]と評した。

少ない分子量でありながら複雑な構造を持つことから、ストリキニーネの全合成は現在に至るまで化学者たちの関心を集めており、1954年のウッドワード以降様々な方法による合成法が報告されている⇒ストリキニーネ全合成英語版

ウッドワードの合成法は28段階で収率はわずか0.00006%[14]だったが、Rawal(1994年)らの収率10%、Vanderwalの6段階(2011年)[15]まで改良されている。

脚注


  1. ^ Woodward, R. B.; Brehm, W. J. (1948). "The structure of strychnine. Formulation of the neo bases." J. Am. Chem. Soc. 70: 2107–2115. doi:10.1021/ja01186a034.
  2. ^ Woodward, R. B.; Cava, M. P.; Ollis, W. D.; Hunger, A.; Daeniker, H. U.; Schenker, K. (1954). "The total synthesis of strychnine." J. Am. Chem. Soc. 76: 4749–4751. doi:10.1021/ja01647a088.
  3. ^ Peerdeman, A. F. (1956). “The absolute configuration of natural strychnine”. Acta Cryst. 9: 824. doi:10.1107/S0365110X56002266. 
  4. ^ 局方ホミカエキス散
  5. ^ 一般用医薬品 : ハンビロン KEGG MEDICUS
  6. ^ 「ストリキニーネ硝酸塩」富士フィルム和光純薬
  7. ^ 毒物及び劇物指定令 昭和四十年一月四日 政令第二号 第一条 十七の二
  8. ^ Purves, Dale, George J. Augustine, David Fitzpatrick, William C. Hall, Anthony-Samuel LaMantia, James O. McNamara, and Leonard E. White (2008). Neuroscience. 4th ed.. Sinauer Associates. pp. 137–8. ISBN 978-0-87893-697-7 
  9. ^ 劇薬指定成分について スイッチ直後品目等の検討・検証に関する専門家会合 厚生労働省
  10. ^ INCHEM: Chemical Safety Information from Intergovernmental Organizations:Strychnine. https://inchem.org/documents/pims/chemical/pim507.htm
  11. ^ 精神神経学雑誌(1943)に掲載の広告「キナポン」 http://psychodoc.eek.jp/abare/gallery/gallery1.html
  12. ^ 禁止表国際基準(The Prohibited List)日本アンチ・ドーピング機構
  13. ^ Robinson, Robert (1952). “Molecular structure of Strychnine, Brucine and Vomicine”. Progress in Organic Chemistry 1: 2. 
  14. ^ 『ボルハルト・ショアー現代有機化学(第8版)』化学同人、2019年、393頁。 
  15. ^ わずか6工程でストリキニーネを全合成!!”. Chem-Station. 2021年11月28日閲覧。


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