サバの女王 (オペラ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/17 14:33 UTC 版)
登場人物
人物名 | 声域 | 原語 | 役 | 初演時のキャスト 1862年 2月28日 指揮:ピエール=ルイ・ディーチュ (フランス語版) |
---|---|---|---|---|
バルキス | ソプラノ | Balkis | サバの女王 | ポリーヌ=ゲマール・ロテール (英語版) |
ソリマン | バス | Soliman | イスラエルの王 ソロモン |
ジュール=ベルナール・ベルヴァル (Jules-Bernard Belval) |
アドニラン | テノール | Adoniram | 建築家・彫刻家 職人気質 |
ルイ・ゲイマール |
ベノーニ | ソプラノ | Benoni | アドニランの弟子 | ベルネディーヌ・アマケール |
サライール | メゾソプラノ | Sarahil | サバの女王の侍女 | タルビ |
アムルー | テノール | Amorou | 職人 | ラファエル=オーギュスト・グリジ |
ファノール | バリトン | Phanor | 職人 | メセーヌ・マリー・ドゥ・リール |
メトゥザエル | バリトン | Méthousaël | 職人 | テオドール=ジャン=ジョセフ・クロン |
サドック | バス | Sadoc | サバの女王の侍者 | フレーレ |
合唱:宮廷の家臣たち、侍女たち、職人たち、民衆
バレエ団
関連作品
シバの女王に因む音楽作品 も参照。
演奏時間
約2時間 (第1幕26分、第2幕20分、第3幕25分、第4幕51分)
あらすじ
時と場所:旧約聖書時代のエルサレム
*第4幕第2場を第5幕として独立させる場合もある。
第1幕
第1場
舞台は彫刻家アドニランの仕事部屋
彫刻家であると共に建築家であるアドニランは建築が進められているソリマン王の神殿に安置するため像の製作の命を受けてからの数年はほとんど寝食を忘れるほどこれに没頭してきたのだった。すると、そこへ弟子のベノーニがやって来て、今日はサバの国の女王バルキスがこの国に訪れるため、王は本日を祝日とするので、国民は働いてはならないとの命令が下ったと告げる。そして、アドニランがサバの女王とはどんな人かと問うと、ベノーニはアリエット「夜明けの太陽がまだ青白いように」(Comme la naissante aurore se leve)の中で美しく素晴らしい人と讃える。アドニランは美しいと評判のバルキスの話を聞き関心を抱くが再び制作に取りかかる。そこに、3人の職人アムルー、ファノール、メトゥザエルが現れ、身分を親方に格上げして待遇を改善して欲しいと要求する。しかし、アドニランはお前たちの現状の仕事のレベルはそれに値しないと却下する。この拒絶に承服しかねる3人はアドニランへの復讐を誓う。
第2場
舞台はエルサレム。街を睥睨できる高台、近くに建設中の神殿
勇壮なファンファーレと共に宮殿に到着したサバの女王バルキスを民衆が迎え「聖なる女王に栄光あれ」(Gloire à toi, divine princesse)と合唱する。バルキスは、この街の素晴らしさを称賛し、建設中の神殿の設計者はだれなのかと問う。ソリマン王はアドニランのことを陰気で風変わりな夢想家だが才能のある男であると紹介し、見解を述べる。そこに当のアドニランが挨拶に参上するとバルキスは彼女の首飾りを彼に与え、皆はこの栄誉を讃える。
第2幕
シオンの平原に造られた鋳造所、大炉が設けられている
製作していた像も鋳型に青銅を流し込む最後の段階を迎えており〈アリア〉「聖なる部族よ、霊感を与え賜え」(Inspirez moi, race divine)を堂々と歌い、成功を神に祈る。職人たちも神の加護を祈りながら炉の温度を上げてゆく。この様子を見るためにソリマン王はサバの女王と廷臣たちを引き連れて現れ、設えられた見物台に腰をおろす。アドニランはバルキスの前に跪き、拝顔の栄に浴することを感謝し、ソリマン王もバルキスもアドニランを奮い立たせる。そして、アドニランは炉を開けに入ってゆく。そこにベノーニが駆けつけ、3人の職人はアドニランの指示に従わず、サボタージュをしているので、炉の安全が保たれていないのでアドニランを助けて欲しい旨を伝える。しかし、時はすでに遅く、炉は開かれるとすぐに爆発を起し、真っ赤な青銅が飛び散って流れ出す。人々はパニック状態となり逃げ惑う。
第3幕
第1場
舞台はヤシの茂るシロエの湖畔。夜明け
宮殿の一室で若い侍女たちに取り囲まれているバルキスは、娘たちにしばらく独りで休みたいと伝え、侍女たちを去らせる。アドニランにすっかり魅了されてしまったバルキスは女王であると同時に自分は一人の女だと〈アリア〉「平民であってもより偉大なのだ」(Plus grand dans son obscurité)を歌って心情を吐露する。そこにアドニランが悲嘆にくれてやって来る。バルキスはアドニランを慰めようとするが、アドニランは貴女は王の花嫁となられる方、私は平民の職人、身分が違うと言って彼女の説得を受け付けない。しかし、バルキスは女としての自分は王を愛しておらず、まだ自由の身であると言い、彼に愛を告白してしまう。そこにベノーニが現われ、精霊の力で炉は元どおりになり、像はアドニランの設計通り出来上がったと伝える。2人は喜び「ホザンナ」と叫び幕となる。
第4幕
第1場
舞台はメロ、ソリマンの夏の宮殿の一室
ソリマンの夏の宮殿のでは大勢の人で溢れ、王の出席のもとに華麗なバレエがくり広げられる。しかし、いくら待ってもサバの女王バルキスは現れない。ソリマンはすべての用意を整えて待っているのに現れないサバの女王に恨み言を言いながらも、やはり彼女を諦めきれない思いを〈カヴァティーナ〉「一人の女の足元では」(Sous les pieds d' une femme)で切々と歌う。そこに3人の職人が「アドニランがサバの女王のテントに出入りしており、王を裏切っている」と奏上する。王はそれを信じようとしないが、3人は絶対に偽りではないと誓う。そこにサドックが現われ、当のアドニランの来訪を告げる。王は彼を丁重に迎え、彼の偉大な業績を讃え、王に次ぐ地位を与えようと言うが、アドニランはあくまでも芸術家として自由でありたいと王の申し出を辞退する。
第2場
舞台はセドロン河の湖畔
セドロン河の河畔では空がひどく荒れており、時おり稲妻が落ちている。ここでアドニランはバルキスを待っている。アドニランとサバの女王バルキスはこの国を離れていくつもりだった。そこに例の3人の職人が現われ、執拗にも親方にせよと迫るが、アドニランは毅然としてこれを拒絶する。すると、3人は怒り狂って凶器でアドニランを刺してしまい、嵐に紛れて逃げ去る。そこに現われたバルキスは傷ついた瀕死のアドニランを見つける。 最後の別れの言葉を告げるアドニランに「そなたは死しても我が夫でいて欲しい」(Sois mon époux dans la mort même)と語る。それから、〈アリア〉「夜を通して別の岸に運びましょう」(Emportons dans la nuit vers un autre rivage)を歌う。ラストは教会音楽を得意とする荘厳な展開となり、その時、嵐は去り、旧約聖書に登場する鍛冶の始祖とされる人物トバルカインが手を差し伸べ、アドニランは彼に導かれて昇天し、人々は跪き「ホザンナ」と合唱するのだった。
主な録音
年 | 配役 バルキス アドニラン ソリマン ベノーニ |
指揮者 管弦楽団および合唱団 |
レーベル |
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1970 | シュザンヌ・サロッカ ジルベール・ピィ ジェラルド・セルコヤン イボンヌ・ダルー |
ミシェル・プラッソン トゥールーズ・カピトール国立管弦楽団 トゥールーズ・カピトール劇場合唱団 |
CD: GALA ASIN: B0000C848I |
2001 | フランチェスカ・スカイーニ ジェオン=ウォン・リー ルカ・グラッシ アンナ・ルチア・アレッシオ |
マンリオ・ベンツィ イタリア国際管弦楽団 ブラチスラヴァ室内合唱団 |
CD: Dynamic ASIN: B00005YW0L |
- ^ a b c 『オックスフォードオペラ大事典』P 289
- ^ a b c ベンツィ指揮のCDの解説書P13
- ^ 『オペラ名曲百科 上 増補版』P430
- ^ ベンツィ指揮のCDの解説書P14
- ^ a b 『オックスフォードオペラ大事典』P289
- ^ 昭和音楽大学オペラ研究所オペラ情報センター
- ^ マルティーナ・フランカ音楽祭上演記録
- ^ サンテティエンヌ歌劇場上演記録
- ^ マルセイユ市立歌劇場上演記録
- ^ s:列王紀上(口語訳)#第10章
- ^ s:歴代志下(口語訳)#第9章
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