クトゥルーの子供たち
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/29 10:11 UTC 版)
4:陳列室の恐怖
『陳列室の恐怖』(ちんれつしつのきょうふ、原題:英: The Horror in the Gallery、旧題・「ゾス=オムモグ」)。1976年のアンソロジー『The Disciples of Cthulhu』に収録された。
本作は、題名が二転三転しており、執筆当初は仮題『陳列室の恐怖』、改題されて『超時間の恐怖』The Terror Out of Timeとされ、1976年の発表時には『ゾス=オムモグ』Zoth-Ommogになった後、最初のタイトルに戻った。中途タイトルの方は、最終的にシリーズのタイトルになった。
アメリカ大陸の西海岸のサンボーン研究所と東海岸のミスカトニック大学を往来する。未解決殺人事件の捜査ファイルという体裁をとっており、容疑者=主人公ホジキンスの証言文書である。真実を知った主人公が、社会では信頼できない語り手とみなされる。
特に、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの『永劫より』と、オーガスト・ダーレスの『暗黒の儀式』の2作に大きく関連する。1929年を舞台としており、先行作家達の作品の後日談という設定で、作中では『ダニッチの怪』のアーミティッジ博士をはじめとする先行作家たちのキャラクターが多数登場する[注 8]。
4あらすじ
1928-29年、カリフォルニア州サンボーン太平洋古代遺物研究所の職員ホジキンスは、ブレイン博士の休職に伴い、故コープランド教授の遺贈物整理の仕事を引き継ぐ。ホジキンスは悪夢にうなされるようになり、遺贈物の一つである「ポナペの小像」の危険性を察する。コープランド教授とブレイン博士の資料には、ネクロノミコンの指定箇所を参照するよう書付があった。
研究所の理事達は小像を一般公開しようと言い出す。ホジキンスは非公開にすべきと提言するが、理由がほぼ迷信なので根拠とならない。ホジキンスは東海岸のアーカムにあるミスカトニック大学に赴き、ネクロノミコンを閲覧する。ネクロノミコンには「旧支配者は偶像を仲介して影響力を及ぼす」「偶像は人間には壊せない」「旧神の印を使えば壊せるが、一つ間違えれば身を滅ぼす」と書かれていた。アーミティッジ博士は、ホジキンスに<旧き印>=旧神の護り石を授ける。ホジキンスは新聞記事を通じてサンボーンで邪神像が一般公開されることを知り、急遽アーカムを発つ。
帰還したホジキンスは、早朝の研究所の陳列室で警備員の遺体を見つける。陳列室では邪神像が邪悪な波動を発しており、人外種族が一人、邪神像を崇めている。彼はホジキンスに気づくと拳銃を取り出し、ホジキンスはとっさに星石を投げつける。邪神像と星石がぶつかると、相殺し合うことで激しく消滅を起こし、さらにエネルギーの余波で稲妻が走り、人外種族を焼き尽くす。ホジキンスも気を失う。
ホジキンスは、警備員殺害・小像盗難・放火の容疑で逮捕され、精神病棟送りとなる。警察は小像の場所や放火の動機などを尋問するが、ホジキンスは人外種族の遺体について主張するばかりで、話がかみ合わない。結局、サンボーン陳列室で発生した殺人事件は未解決事件となり、ゴシップ新聞は「邪神像の呪い」として取り上げる。
4主な登場人物
- ハロルド・ハドリー・コープランド教授
- 過去作の人物。考古学の権威であり、1926年に死去。コレクションと記述資料が、サンボーン研究所に遺贈される。遺贈物は「ポナペの小像」や無名祭祀書を含む。
- ヘンリー・スティーヴンスン・ブレイン博士
- サンボーン研究所の職員。前作の出来事で消耗して療養生活の身となる。ホジキンスに小像を一般公開しないように頼む。
- 『クトゥルフの呼び声』のエインジェル教授(1926年死去)の弟子にあたる。
- アーサー・ウィルコックス・ホジキンス
- 主人公。29歳。サンボーン研究所の職員。悪夢にうなされ、邪神像の危険性を知る。最終的に邪神像破壊に成功するも、誰にも信じてもらえずバッドエンドを迎える。
- ヘンリー・アーミティッジ博士
- ミスカトニック大学の大博士。70歳以上。『ダニッチの怪』(1928年の事件)を経験している。ホジキンスにネクロノミコンの閲覧を許可し、さらに旧神の護り石を授ける。
- セネカ・ラファム博士
- ミスカトニック大学の人類学者。『暗黒の儀式』(1924年)を経験している。
- ウィンフィールド・フィリップス
- ラファム博士の助手の青年で、共に『暗黒の儀式』(1924年)を経験している。本作では脇役だが、次作では主人公となる。
- エミリアーノ・ゴンザレス
- サンボーン研究所の夜間警備員。60歳ほど。陳列室で撲殺される。
- 人外の崇拝者
- 陳列室で邪神像を崇めていた。夜警のゴンザレスを殺し、ホジキンスも殺そうとするが、邪神像消滅のエネルギーに巻き込まれて絶命する。死体は液状化し、火災の熱で完全に蒸発して消える。
- ポナペの小像
- 高さ19インチ(48センチ)の翡翠像。旧支配者ゾス=オムモグの偶像。海底のルルイエに眠るゾス=オムモグが、夢思念を送るための中継器である。
- 無名祭祀書
- 初版本をコープランド教授が所有していた。ラヴクラフト&ヘイゼル・ヒールド『[[[永劫より]]』でも重要アイテムとされている。
4関連項目
- クトゥルーの子供たちのページへのリンク