クトゥルーの子供たち
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/29 10:11 UTC 版)
5:ウィンフィールドの遺産
『ウィンフィールドの遺産』(ウィンフィールドのいさん、原題:英: The Winfield Heritance)。1981年にゼブラブックス版『ウィアード・テイルズ』3号に掲載された。
シリーズ最終作。オーガスト・ダーレスが創造して『暗黒の儀式』で語り手を務めたウィンフィールド・フィリップスが、主人公兼語り手となっており、堕ちてバッドエンドを迎える。
カーターの設定好き固有名詞好きは健在で、本作独自の特徴としては、魔道書に限らない、作中作小説をコレクションとして登場させているという点がある[7]。ロバート・M・プライスは、書物を遺産として継承するという本作におけるテーマを、カーターがクトゥルフ神話の体系化において自ら果たしている役割と重ね合わせて魅力的に思っていたようだと解説している[8]
5あらすじ・物語以前
- 昔:ハイラムが、ニューイングランドのウィンフィールド家を放逐され、カリフォルニアに移住する
- 1920年代:カリフォルニアのハッブルズ・フィールドの地下から、大量の人骨が発見される
- 1924年:『暗黒の儀式』
- 1927年:フィリップスとブライアンが親交を深める
- 1929年:『陳列室の恐怖』
ハイラム・ウィンフィールドは、生家に忌まれた黒魔術を用いて、大地の妖蛆ユッグと契約することで財を得る。また甥のウィンフィールド・フィリップスは、ボストンを訪れたおりに、同名のブライアン・ウィンフィールドと出会う。従兄弟と判明した2人は意気投合する。だがブライアンはトラブルに巻き込まれ、カリフォルニアに引っ越す。
5あらすじ・1936年
1936年6月、老ハイラムが死去する。フィリップスは、従弟のブライアンから、ハイラム叔父の死を伝えられ、葬儀に出るためにカリフォルニアに向かう。その際にラファム博士は、7年前の事件の当事者であるホジキンスの消息を調べてくるよう頼む。出迎えたブライアンは、自分とフィリップスの2人が遺産相続人に指名されているという遺言を伝える。
ハイラムの屋敷で、フィリップスとブライアンは、ホラー小説の貴重なコレクションを見つける。さらに隠し部屋からは禁断の文献が出てきたことで、フィリップスは叔父が一族を放逐された理由を理解し、かつて見つかった大量の白骨死体と叔父の資金源のうす暗い関連性を察する。さらに、地下への通路も見つけ、そこに転がる大量の貴金属を見て、疑惑は確信に変わる。そこに突然何かが現れ、ブライアンは絶叫を発して黒い水たまりの中に消える。
フィリップスは警察に通報するも、支離滅裂な狂人の証言とみなされるのみであった。主を失ったブライアンのアパートに身を寄せたフィリップスは、悪夢にうなされる。夢に現れるそいつは、<赤の供物>(生贄=ブライアン)を捧げたのだから報酬を受け取れと囁き、フィリップスは自分は従弟を突き落としてなどいないと必死で抗弁する。ついに屈して堕ちたフィリップスは、もうミスカトニック大学に戻ることはないと述べて陳述書を記し、これを見た人物にラファム博士に郵送してほしいと付け加える。
5登場人物
- ハイラム・ストークリイ(ウィンフィールド)
- 叔父。ニューイングランドのウィンフィールド家を放逐され、カリフォルニアで財を成した。屋敷の相続人に甥2人を指名する。
- ウィンフィールド・フィリップス
- 主人公。母方がウィンフィールド家、父方がフィリップス家。1936年に29歳。
- アーカムミスカトニック大学のラファム博士の助手。ハイラム叔父とは面識がなかったが、相続人に指名されていた。
- ブライアン・ウィンフィールド
- リチャード叔父の息子。フィリップスの従弟で、5歳年少。
- サンティアゴの獣医。ハーバードの医学生時代にフィリップスと親しくなった。
- ウォード・フィリップス師
- 『暗黒の儀式』の過去パートの人物。ウィンフィールド・フィリップスの父方の先祖。アーカムの牧師。
- ハロルド・ハドリー・コープランド教授
- 過去作の人物。ハイラムから禁断の文献を購入しており、それらを含む研究資料がサンボーン研究所へと遺贈されている。
- セネカ・ラファム博士
- ミスカトニック大学の職員。フィリップスの上司であり、『暗黒の儀式』『陳列室の恐怖』を経験している。
5用語
- 「ハッブルズ・フィールド」
- かつては活気ある町であったが、十数年前に大量の人骨が発見されたことで悪評が高まり、失業者が増えて廃れた。
- インディアンのヒパウェイ族は、エ=チョク=タ(妖蛆の地)という名で呼ぶ。
- ヒパウェイ族
- 架空のインディアン部族。ヨーロッパ人たちが来る前にカリフォルニアを治めていた。20世紀時点では山中に居住地がある。ハッブルズ・フィールドの地域を嫌い、近寄らない。
- 森瀬繚は、モチーフをオジブワ族と推定している[9]。実在のオジブワ族は、ウェンディゴの悪霊伝説を伝えることで知られており、クトゥルフ神話においてはイタカと結び付けられる。
- ユッグ
- <大地の妖蛆>の異名をもつ、白蛆の種族。イソグサとゾス=オムモグに仕える。長はウブ。『ユッギャ賛歌』という文献がある。封印されている邪神を解放するために、人間を買収して手先につけようとする。
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