HTLV-1の概要
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 09:31 UTC 版)
「成人T細胞白血病」の記事における「HTLV-1の概要」の解説
詳細は「ヒトTリンパ好性ウイルス」を参照 HTLV-1はhuman T-cell leukemia virus type 1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)の略称である。かつてはヒトTリンパ球向性ウイルス1型human T-lymphotropic virus type 1と呼ばれていた。1980年にはじめてヒトのレトロウイルスとして報告され、ATL(成人T細胞白血病・リンパ腫、adult T-cell leukemia-lymohoma)の原因ウイルスであることが明らかになった。HTLVにはtype1からtype4まで報告されているがtype1以外の病原性はあきらかではない。type1のgenotypeはsubtype AからGの7つに大きく分かれ地域性を反映する。日本のHTLV-1はsubtype Aに含まれる。 HTLV-1は主にHTLV-1感染者のCD4陽性Tリンパ球より検出される。HTLV-1が感染するとプロウイルスとして持続感染する。すなわち細胞のゲノムにウイルス遺伝子が取り込まれ、細胞中に長期にわたり存在・維持される。HTLV-1感染者の末梢血液中にはHTLV-1感染リンパ球が存在するがB型肝炎ウイルスなどと異なり、血漿中にはほとんどウイルスを検出できない。このためHTLV-1感染者の診断はウイルスそのものの検出ではなく、HTLV-1に対する抗体の検出によって行われる。すなわち、抗HTLV-1抗体陽性であればHTLV-1に感染していることを意味する。一度HTLV-1に感染すると自然にウイルスが消失することはないと考えられており、終生感染が持続する。また、HTLV-1感染者の末梢血リンパ球からは遺伝子増幅法(PCR法)によりHTLV-1の遺伝子を検出することができる。この方法により、HTLV-1のプロウイルス量を測定することが可能である。HTLV-1は多くの場合は1個のT細胞に1コピー組み込まれるためプロウイルス量はHTLV-1感染細胞数を意味する。 HTLV-1の遺伝子は約9kbの2本のプラス鎖RNAである。ウイルスゲノムはコアタンパク質、エンベロープタンパク質、逆転写酵素などのほかの種々の機能性タンパク質をコードする。
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