選挙無効請求事件訴訟
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/14 08:33 UTC 版)
「第23回参議院議員通常選挙」の記事における「選挙無効請求事件訴訟」の解説
一票の格差が最大4.77倍で執行された第23回参議院議員通常選挙直後、投票価値が極めて低かった岡山県選挙区の選挙人らが、「公職選挙法14条別表第3の参議院選挙区選出議員の議員定数配分規定は憲法に違反し無効であるからこれに基づき施行された本件選挙の上記選挙区における選挙も無効である」と主張し選挙無効訴訟を提起した。 2014年11月26日、最高裁判所大法廷多数意見は「公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の下で,選挙区間における投票価値の不均衡は平成24年法律第94号による改正後も違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった」と判断したものの「国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず,上記規定が憲法に違反するに至っていたということはできない」と判断した。 しかし、同最高裁判所判決の反対意見の中で、山本庸幸判事は「国民主権と代表民主制の本来の姿からすれば,投票価値の平等は,他に優先する唯一かつ絶対的な基準として,あらゆる国政選挙において真っ先に守られなければならない」と述べ、国会の裁量を広く認めた従来の最高裁判決を明確に否定した上で、「2倍程度の一票の価値の較差でも許容され,これをもって法の下の平等が保たれていると解する考え方があるが,私は賛成しかねる」と述べ、最高裁判決などの多数意見が論じていた一票の格差二倍許容論を明確に否定した。さらに同判事は「人口の急激な移動や技術的理由などの区割りの都合によっては1〜2割程度の一票の価値の較差が生ずるのはやむを得ないと考えるが,それでもその場合に許容されるのは,せいぜい2割程度の較差にとどまるべきであり,これ以上の一票の価値の較差が生ずるような選挙制度は法の下の平等の規定に反し,違憲かつ無効である」「一票の価値が0.8を下回る選挙区から選出された議員は,全てその身分を失うものと解すべきである。なぜなら,一票の価値が許容限度の0.8より低い選挙区から選出された議員がその身分を維持しつつ他の選挙区の議員と同様に国会の本会議や委員会において議事に加わることは,そもそも許されないと解されるからである」と延べ、投票価値0.8を下回る議員(50人余)は当選無効とする新たな数値基準を示し、当該議員の立法権能不存在を憲法解釈として明言した。この山本判事は2014年最高裁判所裁判官国民審査において審査対象判事の中で最も高い信任率を得た。 また反対意見を述べた大橋正春、鬼丸かおる、木内道祥の三判事は、選挙制度が見直されなかったのは国会の裁量権の限界を超えるとし、大橋、木内両判事は違憲だとした。また大橋、鬼丸判事は是正される可能性があり無効とはいえないとした。木内判事は、一部の選挙区のみを無効とはせず、全選挙区の違法を宣言するのにとどめるのが相当と述べた。
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