適応度の高いミーム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 06:19 UTC 版)
遺伝子の複製されやすさを適応度という。例えば、ある遺伝子が次世代にたくさん複製されているほど、その遺伝子は適応度が高いということである。同様に、あるミームの適応度が高いほど、そのミームは多く複製される。 私達の脳の持つ本能的な傾向とは別に、性質上、適応度の高いミームがある。以下のミームは「このミームを広めよ」という考えが変化したものであるために適応度が高い。 伝統 過去に行われたこと、信じられていたことを、継続させるミーム。伝統のよし悪しや重要性とは関係なく、自動的に長く生き延びる。 伝道 あるミームを他の人々に広めることが重要だというミーム。例えば、宗教の布教活動や、企業の宣伝などがある。伝えられる内容が正しいか間違っているか、良いことか悪いことかとはほとんど関係なしに、広まることができる。 さらに、人々の心から追い出しづらいミームも適応度が高い。次の二つである。 信念 それ自身を盲目的に信じることを要求するようなミーム。どんな議論に突き当たっても心から追い出されない。伝道と結びつくと、どんな内容でも拡散できるマインド・ウイルスとなる。 懐疑 心に侵入しようとするミームを疑うミーム。懐疑は信念の裏返しであり、あるミームが心へ入り込まないようにする。 伝言ゲームのように、ミームが人から人へ伝わる時には、変形が起きてしまうことがある。このため、ミームによっては複製されるのが困難となる。一方性質上、変形されにくいミームがあり、適応度が高い。この点において、以下の二つは適応度が高い。 知っていることかどうか 人々がよく知っていることほど速く広まる。例えば、有名な映画の続編情報は、あまり知られていない映画の場合より広まりやすい。また変わった言葉は、よく知られている言葉に言い直されることによって、適応度が高くなる。その言い直しによって内容がもともとの意味と変わることもありうる。 意味が通じるかどうか 意味の通じるミームは、意味が通じないミームよりも速く広まる。そのために、正しいが難しい説明よりも、意味の通じる分かりやすい説明の方が広まりやすい。しかし、意味が通じる話が正しい話だという訳ではない。「正しいが難しい説明」から「意味の通じやすい間違った説明」に進化することも考えられる。 あるミームが適応度が高く「広まりやすい」ことと、それが良いことか悪いことか、真実か間違っているかということは関係ない。したがって、ミームの進化は私たち人類にとって良い方向へ進化していくとはかぎらない。
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