繰り返される粉飾、産業再生機構傘下へ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 07:26 UTC 版)
「カネボウ (1887-2008)」の記事における「繰り返される粉飾、産業再生機構傘下へ」の解説
売上目標必達を厳命したものの、繊維をはじめとする他の事業の赤字を化粧品事業の黒字が補完する収益構造が続き、過酷なノルマ達成ももはや不可能となっていた。帆足は「モーニングコーヒーから夜の盛り場まで一緒だった」と評される宮原卓副社長と話し合い、2001年度の債務超過を隠すため、粉飾決算を繰り返すことになる。 バブル崩壊以降、粉飾決算が繰り返されたのは、それを黙認する企業風土に加え、2000年3月期から導入された連結決算を重視する、新会計基準(実質支配力基準)も大きく影響していた。連結決算により、最終利益が赤字で債務超過に陥っていることが判明すると銀行融資が不可能になり、また上場廃止も確実だったためである。 平成14年3月期決算 セグメント営業利益 (百万円)化粧品 25,646 ホームプロダクツ 6,995 繊維 △8,620 食品 2,272 薬品 △1,106 その他 △995 連結 23,816 2002年度決算では、業績不振の子会社15社を含めた連結決算書作成を義務づけられ、約260億円の赤字を7000万円の黒字に、約1900億円の債務超過を9億2600万円の資産超過に粉飾した有価証券報告書を提出し、翌年度も同様の手口で粉飾を繰り返した。しかし、こうした架空売り上げはいたずらに損失を累積させ、抜本的な改革は先送りされた。結局、2003年度決算で3553億円にも及ぶ債務超過につながることになる。 2004年、最後の自主再建策として化粧品部門の花王への売却が発表されるが、労働組合の反対で頓挫した。以後、経営は迷走を続け、同年、産業再生機構の支援を受けることになった。産業再生機構は、当初カネボウおよびカネボウ化粧品の一体再生を目的として減資を強行するが、後に一体再生を撤回し、分離再生の方針に変更する。 2005年5月、東京証券取引所および大阪証券取引所がカネボウ株の上場廃止を決定。上場最終日は6月10日、廃止日は6月13日となった。また7月29日には、帆足元社長、宮原元副社長ら旧経営陣が証券取引法違反で逮捕されている。同年9月13日には同社の会計監査にあたっていながら、粉飾決算を指南していた中央青山監査法人の公認会計士4名も証券取引法違反で逮捕された(これにより中央青山監査法人は2006年に金融庁から業務停止命令を受け、後に解散に追い込まれた)。 2006年2月、カネボウ化粧品の花王への売却に伴い「カネボウ」の商標権がカネボウ化粧品に譲渡された。これにより、残ったカネボウ本体を買収した投資ファンド傘下での事業は、新たなブランド名(クラシエ)に切り替えられた。 2006年5月1日には、カネボウは営業権をカネボウ・トリニティ・ホールディングスに譲渡し、同社を統括会社とする、新カネボウグループ(現クラシエグループ)として再スタートを切った。なお、旧カネボウとカネボウ・トリニティ・ホールディングスには資本関係はなく、完全に独立した別会社である。 カネボウからの営業譲渡に関する争いについては、下記の再生ファンドと少数株主の対立を参照
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