科学的アプローチ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/08 10:18 UTC 版)
1970年代から現在にかけては、臨死体験や「生まれ変わり」といった、「死後の生」を示唆し得る事例の収集と研究が進んだ。これらは、主にメディアを通して、現代人の死生観を変化させている。 1975年以降、レイモンド・ムーディが臨死体験を調査報告したことをきっかけに、光の存在との遭遇や、亡くなった親類との再開、体外離脱など、危篤状態における同様の神秘体験の報告が、急速に増加してゆく。これは、第二次世界大戦後の救急医学の進歩により、危篤患者の蘇生する確率が上がったためである。 その中でも、ソビエト連邦の崩壊やチェルノブイリ原発事故、湾岸戦争など、将来の重大事件を体験中に見せられたダニオン・ブリンクリーや、脳機能の完全に停止した状態で体外離脱を経験し、自らの手術の様子を正確に描写したパム・レイノルズなどは、現在のところ脳内現象説では十分に説明できない特異な事例である。 1987年、イアン・スティーヴンソンは、信憑性が高いと見なした多数の「生まれ変わり」事例を発表する。また、「過去生」への退行催眠も、アレクサンダー・キャノン(1950)を始まりとして、ジョエル・ホイットンやヘレン・ウォムバックらにより、1970年代以降、盛んに研究される。こうして、それまではタブーであった「輪廻」事例の研究が、正規の大学に所属する研究者によっても本格化してゆく。ただし、本人が「前世の記憶」と認識する記憶が前世の存在証明になるかについては、多くの意見がある。アメリカでは、ブライアン・ワイス(英語版)などの精神科医によって、催眠によって出生以前まで記憶を退行させ、前世(だとされる)イメージを見る事で、ストレスの緩和、心的外傷、その他多くの症状を治療するという「前世療法」が行われた。1970〜80年代にかけてのアメリカでは、催眠治療によって幼い頃の親による虐待やレイプの記憶を「思い出す」子供が多くあらわれ、裁判が行われたが、催眠によって「作られた」虚偽記憶が多く含まれており、多数の冤罪が生み出され大きな社会問題となった。作られた記憶(エピソード記憶、過誤記憶)は、過去における事実ではなくても、主観においては真実の過去となる。前世療法および退行催眠は、患者に偽物記憶を植え付けてしまう危険性がある。施術者が意図的に誘導する事も可能であり、意図せずとも「作られた過去」、「作られた前世」といった虚偽記憶を植え付けてしまう可能性は否定できない。
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