百詩篇第6巻70番
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「ミシェル・ノストラダムス師の予言集」の記事における「百詩篇第6巻70番」の解説
Au chef du monde le grand Chyren sera, Plus oultre apres aymé, craint, redoubté : Son bruit & loz les cieulx surpassera, Et du seul titre victeur fort contenté.偉大なシランが世界の首領になるだろう。 より遠くへと愛され、恐れ慄かれた後に。 彼の名声と称賛は天を越え行くだろう。 そして勝利者という唯一の称号に強く満足する。 ここに出てくるシラン(Chyren)は将来現れる世界的な独裁者と解釈されることがままあった。 実証的な立場からはノストラダムスの願望を書いた可能性が指摘されている。Chyrenはプロヴァンス語の人名ヘンリク(Henryc)のアナグラムと見ることが出来、フランス語のアンリに対応している。このことは同時代人のローラン・ヴィデルやジャン=エメ・ド・シャヴィニーによっても指摘されていた。あえてプロヴァンス語を用いた理由については、古い予言にカール大帝(シャルルマーニュ)に並ぶような大君主は、同じようにイニシャルにC (K) を持つとするものがあったからではないかとも推測されている。 2行目の「より遠くへ」(Plus oultre)をシャヴィニーはPLVS OVTREと固有名詞的に書き換えて、カール5世のラテン語の金言(『プルス・ウルトラ』、PLVS VLTRA)をフランス語訳したものとみなしたが、これは現在の実証的な立場からも支持されている。この場合、2行目の訳は「『プルス・ウルトラ』が愛され、恐れ慄かれた後に」となる。 つまりこの詩は、カール5世が雷名を轟かせた後に、勝利を重ねて世界に君臨するのがアンリ(2世)だという内容である。これは実現することはなく、アンリ2世はこの詩が発表されてから2年も経たないうちに世を去った。 シランが出てくる詩以外にも、「三日月」(Selin)が出てくる詩の一部や「エンデュミオン」(後にアルテミスと同一視された月の女神セレネの恋人。この場合、セレネはディアナに対応するものとして捉えられる)が出てくる詩などもアンリ2世の隠喩とされる。アンリ2世は三日月を三つ組み合わせた紋章を使っていた上、愛人ディアーヌを溺愛していたからである。
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