百詩篇第1巻35番
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「ミシェル・ノストラダムス師の予言集」の記事における「百詩篇第1巻35番」の解説
Le lion jeune le vieux surmontera, En champ bellique par sigulier duelle: Dans cage d'or les yeux lui crèvera: Deux classes une, puis mourir, mort cruelle.若きライオンは老いたるに打ち勝つだろう、 一騎討ちによる戦いの野で。 黄金のカゴの中の両目を、「彼」は引き裂くであろう。 二艦隊の一方、そして死す、酷き死。 信奉者の著書では必ずといってよいほどに紹介されている有名な詩篇である。彼らは、フランス王アンリ2世の横死と解釈している。1559年6月30日に、アンリ2世は妹マルグリットと娘エリザベートがそれぞれ結婚することを祝う宴の一環として開催された馬上槍試合に出場した。そこで彼は、対戦相手のモンゴムリ伯爵の槍で片目を貫かれるというハプニングに見舞われ、その傷が原因で7月10日に絶命した。この詩はその様子を描いたものだという(「カゴ」は兜の比喩だと解釈される)。 この詩については、1863年に書誌学者フランソワ・ビュジェが一語ずつ史実と文脈との整合性を丁寧に検証した上で反論している。 ビュジェはまず、国王も伯爵も公式の銘句等で「ライオン」と呼ばれたことがなく、年齢差は「若い」「老いた」と対比できるほどではないと指摘している(アンリ2世は当時40歳で年齢差は7歳もしくは11歳)。また、勝敗がつかなかった事故に「打ち勝つ」を使っていることや「戦場」の比喩も文脈上不適切であるとする。さらに、アンリ2世の兜は金でなかったことや貫かれたのは右目だけだったこと、艦隊は「(陸の)軍隊」とも訳せるがどちらも無関係だったことなどを挙げ、詩の情景が史実にほとんど適合していないことを示した。 現代の実証的な研究では、この詩で描かれているのは空中に浮かんだ幻像なのではないかと指摘されている(当時は空中を行進する軍隊を見たとか、何もいないのに空から合戦の音が聞こえた等の「驚異」が多く噂に上っていた)。実際、リュコステネスは、1547年のスイスで空中での軍隊の合戦の幻が目撃された際に、その幻の下には二頭のライオンが争う幻も目撃されたことを記録している。また、実在の人物になぞらえているのならば、むしろ若い方はアンリ2世、老いた方はカール5世を想定していたのではないか、とも指摘されている。
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